第48話 見たコトもない風景と俺
「わーーー!すっっ・・・げぇーーー!!」
ありえない高さから見下ろす大都会の風景は
テレビでよく見るヘリやドローンの夜景映像なんかより
数倍・・・
いや
数億倍キレイに見えた。
色んな灯りの一粒一粒が密にたくさん集まって
街や高層ビルを彩っている。
そのたった一粒の中に本当にたくさんのヒトが
"ぎゅっ!”と、詰まってるって思うと
「はは・・・、随分と小さくて窮屈な世界にいるもんだな。」
って
うっすら笑った。
ーーー そらはこんなにひろいけれど ーーー
ーーー このせかいはそんなにひろくないーーー
あらためて上空にいる自分を中心に
ぐるっと360度を見渡した。
「本当に空って、こんなに広いんだなー。」
今日は月明りがとてもキレイで
近くに雲ひとつ見当たらない。
上空にぽつんといる俺は
本当に小さな点でしかない。
いや
点よりもはるかに小さな何か?
いや
きっと何者でもない、か。
その何者でもない俺が
こうしてココにいるコト。
・・・
なんだろう。
「コレが『特別』って、コトなのかな・・・」
まぁ
『特別』
だよな。
誰にでも経験出来るコトじゃない。
現実じゃ絶対にありえない
とびっきりの『特別』だ。
運よく俺があの子に出会えたからこそだ。
でも
俺が今まで『特別』だと思っていたモノ
俺が欲しがっていた『特別』とは
「全然、違ってたんだな・・・」
(まぁ、こんなありえないコトなんて、普通考えないよな)
俺が今まで『特別』だと思っていたモノ
俺が欲しがっていた『特別』は
俺がいつも戦っている現実の中で
常に選ばれるってコトだ。
いつも選ばれて
ずっと選ばれ続けて
まだ何者でもない俺が
きっと『特別』な何者かになる。
『特別』な何者かになって
それから
・・・
「それから・・・」
どうなりたいんだ?
何をしたいんだ?
どう生きていきたいんだ?
・・・
「・・・俺は・・・」
また別の『特別』な何者かになるのか?
『特別』な何者って
いったい何なんだ?
選ばれ続けていれば
何者かになれるのか?
何者かになるって
何者って
・・・
「・・・よくわからない、な。」
結局
俺自身が
どうなりたいのか
何をしたいのか
どう生きていきたいのか
それすらわからないんじゃぁ
『特別』でも
そうでなくても
結局
何者でもない
何者にもなれない
そんな気がする。
じゃあ
『特別』になりたい!
そんな願いなんて
無意味じゃないのか?
何者でもないからこそ
何にでもなれる!って
思えるんじゃないのか?
「・・・なんだよ、その自分勝手な無敵感・・・」
でも
なんだか
・・・
「懐かしいキモチだな」
そう思った。
何者にもなっていないからこそ
がむしゃらに何でもやるんだ!
って
とにかく出来るコトをたくさん増やしていくんだ!
って
そう思って
今までやってきてたんだよな。
「・・・あ、」
そうだ。
「・・・俺は・・・」
見つけたんだ。
本気でやってみたいコト
本当に好きなコトを。
そこからはずっと
ただただ
それをずっと続けて
それに懸ける想いを貫き通して
俺自身のために
俺らしくいられるように
生きていきたい
って、
そう思って
ココまで頑張ってきたんだ。
上手くいかないコトばかりでも
思い通りにならないコトばかりでも
キモチが折れに折れまくっていても
そのために一生懸命
・・・
その一心で
ココまで頑張ってきたんだ。
「でも・・・目の前で選ばれていくヤツを散々見てきて、俺もいつかは・・・見てろよ!なんて、前向きな、強気な姿勢でいようとしていたけれど、実際は・・・俺だって・・・いつも、いつでも・・・選ばれたくて・・・選ばれないコトがいやで・・・選ばれるコトが全てで・・・特別で・・・そうなるコトが成功で・・・ずっと・・・ずっとそう思っていて・・・ずっとそう願っていて・・・そうじゃないとやってきた意味がないって・・・そうなれない俺は全然ダメなんだって・・・そう思うようになって・・・いつの間にか『特別になる』コトが俺の中で全てになっていたのかな・・・」
・・・
「なんで・・・忘れちゃってたんだろうなぁ・・・」
あらためて
この広い世界でいま
このありえない
とびっきりの『特別』を体験してみると
今まで『特別』って感じていたモノに
ひたすらしがみついていただけの俺が
なんだかすごくちっぽけに感じてしまう。
フタを開けてみれば
あれだけ囚われていたモノなのに
それがどういうモノなのかも
全然わかっていなくて。
それが全てじゃないってコトも
本当にそうなりたいのかも
俺自身がどうなりたいのかすらも
全然わかっていなくて。
・・・
「なにやってたんだよ、今まで俺は!」
俺は無駄な考えを吹っ切るくらいに
思いっきり大きな青い翼を羽ばたかせて
いつも下から見上げてるだけの高層ビルやスカイツリーを
遥か下に見下ろしながら
上空へと
スピードを上げて飛んでいった。
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