第44話 叶えたいコトと俺

「え・・・?」


は突然


「あなたのかなえたいことはなに?」


って聞いてきた。


叶えたいこと


「俺の・・・」


・・・


そうだった。


青い羽根を拾ってから今日まで


おざなり、ってワケじゃないけれど


一旦考えないようにしていたコトだった。


(要は逃げていたコト、だよな)


俺の願い


俺が叶えたいコト


俺が求めているモノ


俺が一番必要としているコト


「それは・・・その・・・」


・・・


「わからないんだ」


素直に答えてしまった。


は笑うんだろうか・・・)


「叶えたいコトがないワケじゃないんだろうけど、今の俺には、その・・・よくわからないんだ」


カッコ悪くて、思わずうっすら笑ってしまった。


は首を傾げていたけれど


「いましあわせなきもちなの?」


そう言ってまっすぐ見つめてくるから


つい


「お、おう。そう・・・だな。うん、今はそう、だな。」


なんだか照れくさくて、思わず視線を逸らせてしまったけれど


素直に答えてしまった。


「あ、あのさぁ!」


照れ隠しで焦って、思いもよらないコトをつい口走った。


「そ、空を飛べるって、その、どんな感じなの?」


はキョトンとしていた。


「い、いや、その、いいなぁってちょっと思ってみたり、あ、ちょっと聞いてみただけで。ははは・・・」


(なに言ってんだ、俺は)


は首を傾げていたけれど


開いた両手を交互に見て、何度かグーパーして


ちょっと上目づかいで俺をじっと見ると


にこっと笑った。


俺もつられてにこっと笑った。


(え?なに??)


とことこっと俺の後ろに回ってきて


後ろからいきなり羽交い絞めしてきた。


「え!?ちょ!何!?お、おい!」


ふん!


と、がちょっとのけぞる感じで


持ち上げようとしたのか


上へひっぱりあげる感覚を感じて


「お、おい!まさか!?」


!!


「ちょ、ちょっと待って!こ、ココロの準備が!!」


怖くて思わず両手で目を塞いだ。


!!


・・・


・・・


・・・?


「え・・・?」


一瞬、ありえない想像をしてカラダがこわばってしまったけれど


なにも変化のない空気を感じて目を開けてみると


俺より少し背の低いに羽交い絞めされたまま


その場に立っているだけだった。


「・・・なに?これ・・・」


はゆる~い呪縛を解いて


とことこっと俺の前に回ってきて


「おとしそうでむり」


って、真顔で言った。


・・・


ぷっ。


なんだよ、それ。


もう腹がはち切れるかと思うくらい声を上げて大笑いした。


「普通さぁ、そ、そこは・・・不思議なチカラかなんかで・・・手ぇつないだ・・・だけで・・・大空に舞い・・・上がってる・・・もんじゃないの?・・・お、おとしそうで・・・むりって・・・なんだよ、それ・・・!」


しゃべればしゃべるほど、涙が出るくらい笑いが止まらなかった。


俺があまりに笑い転げるもんだから、はじめキョトンとしていた


なんだかつられて?一緒に笑っていた。


やっぱりの笑い声は耳では聞こえないけれど


一緒に笑っているとなんとなく


(なんだよ、楽しそうに笑ってんなよ!)


なんとなく声が聞こえている気がした。


散々笑って、キモチが少し落ち着いてきた。


「よし!決めた!」


俺はに正面から向き合って


「一緒に飛ぶ!!」


いつものをして見せた。


はやっぱりキョトンとしていたけれど


嬉しそうに優しく微笑んでくれた。


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