第24話 あの子を探す俺

「はい、今週分のファンレター」


仕事前に事務所に寄って、手渡された何通かの封筒。


もうからの手紙は来ない。


(まぁ、そんなもんだよ、な)


        ☆


結局あれから


何もしていない。



俺自身、何も決められないまま


青い羽根を(ただ)持っている。



時折、


もう消えちゃってるんじゃないかと


ビクビクしながら確かめていたりして・・・



(いつまでこんなコトやってるんだよ、俺は)



仕事以外の時は、いつにも増して


ココロもとないカンジでいる。



(疲れる、ホント・・・)



まぁ、全部なんだけど・・・


        ☆


青い翼を持ったのハナシは


怪しげな動画が少し出回ったくらいで


特にバズるコトもなく終わった。


俺も動画をいくつか観たけれど


顔が全くわからない、全身が白い発光体のモノや


特撮ヒーローに出てきそうな屈強なキメラっぽいのとか


黄色いパーカーのとは


全然、ほど遠いモノばかりだった。



(まぁ、俺もあいつも、飛んでるトコロを見たワケでもないしな)



が青い翼を持っていたかどうかもわからないし


との関係も、全然わかっていないんだから



はたして結びつけてもいいものかどうか・・・


難しいトコロだ。



(もう1度、会って確かめたい・・・)



確かめたからといって


俺がワケでもないけれど・・・


何も進めないまま、


これ以上落ち着かない毎日を過ごすくらいなら


1番のナゾをまず解決したい!


何なのかを知りたい!


と思った。



(勝手に自分で自分を追い詰めてただけだけど、な・・・)



リュックのポケットから


薄いプラスチックのマルチケースを出して


中に納めていたを手に取った。



「・・・」



何かを決心する時って


息をのむっていうか・・・


本当にノドをゴクリと鳴らすんだな。



(よ、よし!い、いくぞ・・・!)



「・・・え、えっと・・・」



(もう腹をくくったんだろ!?しっかりしろよ、俺!)



「・・・あ、あの子、もう1度、あの、黄色いあの子・・」



最後に、俺の家の前で会った時のコトを思い出しながら


お願いをしようとしていたら・・・



(あ!!)



唐突に思い出した。



ーーー ここのおくじょう ーーー


ーーー そこにいるから ーーー



        ☆


仕事を終えて、全力で家に向かった。



ーーー ここのおくじょう ーーー


ーーー そこにいるから ーーー



あの時は、あまりにもワケがわからなさ過ぎて


(というより、完全に俺のキャパオーバーで)


まったくハナシが入ってこなかった。



今にして思えば



(すっごい、メッセージだよな・・・)



「・・・」



ちょっと身震いした。



家に着いてから


イッキに階段を駆け上がっていった。



「で、でも・・・お、屋上って・・・そんな・・・


 カンタン、に・・・入れる・・・の、かよ・・・キツイ・・・!」



ヘロヘロになりながらも、なんとか最上階に辿たどり着いた。



この建物の屋上に、一般の居住者は、上がるコトはない。


なにかしらのアンテナとか


貯水タンクのメンテナンスをする業者が


年に1,2回上がるくらいなんじゃないのかな。



屋上に続く階段の先にドアがあるけれど



いて・・・ないよな、きっと)



ドアノブを握って、ドキドキしながら回してみた。



「・・・やっぱり・・・」



鍵がかかっていた。



「・・・はぁ、なんだよ、もうーー!俺の全力を返してくれよーーー!!」



腰から崩れ落ちるように、その場に座りこんだ。



(・・・なにやってんだよ、俺は・・・)



あんな言葉を真に受けて



(こんなトコロに・・・いるワケないじゃないか・・・)




ガチャッ。




「・・・えっ・・・!?」




なんか




(・・・鍵が開いたっぽい?・・・音、だけど・・・)




恐る恐る、ドアノブに手をかけて


ゆっくりと、回してみた。



カチャッ。



「あ・・・開いてる・・・」



ギ、ギギーーィ・・・ッ



・・・



コレって



よくあるホラー映画の


いざなわれる」・・・



そういう場面みたいじゃないか。



(なんか、立ってない?・・・大丈夫?コレって・・・)



にビクビクしながらも



恐る恐る、ドアを開けて


屋上に入った。



「誰も・・・いない・・・か、なー・・・」



・・・



誰もいない



そんな感じがした。



少しホッとして


屋上の真ん中まで歩いていった。



「・・・いやいや!誰もいない、じゃねぇよ!ダメだよ!何だよ!!」



あらためてチカラが抜けて、その場に寝転んだ。



「もうーー、どうすりゃいいんだよ・・・」



背中のリュックが潰れているのも気にせず


髪の毛をにしながら


寝転んだまま、ひとりで暴れていた。



もう投げやりになってしまっていた。




「・・・xxたの」




「・・・え?・・・」



(なに?な、なんか、聞こえた・・・!?)



ガバっ!と起き上がって、辺りを見回した。



「ど、どこ!?だ、誰!?」




「・・・どうしたの」



ああ





「・・・いた・・・」

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