第20話 青い羽根と俺

「・・・いったい、・・・なんだ、ったんだ・・・」



ヘトヘトの状態で、やっと家に入り


靴を脱いで、そのまま


ベッドにうつ伏せに倒れこんだ。


リュックを背負ったまま、上着を無理やり脱いで


無造作に、そのまま


一緒に床にズリ落とした。



「あ!」



思わず、握った左手を見て、ゆっくりと開いた。



「青い、羽根・・・」



コレがあいつの言っていた(幸運の)青い羽根なんだろうか。



あいつの話と状況は、ほぼ一緒じゃないか。



それまで


ぶわっ


と、


巻き上げるような風が吹いたあと


消えた。



そのあと、そこに


青い羽根が落ちていた・・・



「なんで羽根なんだろう、しかも青って・・・」



『幸せの青い鳥』とでも言うのかな。


いや、青い鳥じゃなくて、人間・・・


いや、消えたんだから、幽霊・・・?


「しかも、会話したよな?俺・・・」



消えた


この



・・・



「あ゛ーーーー!!もぅ、わかんねぇーーーー!!!」



        ☆


朝になっていた。



さんざん、のたうち回っているうちに


いつの間にか、寝落ちしていた。



「あ!!」



思わず、握った左手を見て、恐る恐る開いた。



「・・・あった・・・」



夢じゃなかった。



まるで、逃してなるものか!とでも思っていたのか


青い羽根を、握ったまま寝ていた。



シャワーを浴びて、コーヒーを飲んだ。


「はぁ・・・」


深いため息が出て、やっとキモチが落ち着いた。



テーブルの上には、紛れもなく


青い羽根がある。



で、



「・・・どうするよ、コレ・・・」



本当に願いが叶うのなら


何をお願いするんだよ。



声優としての成功?


(って、何をもってしての成功なの?)


たくさんのお金?


(まぁ、欲しくはある、いや、欲しいけれども)



・・・



ありったけ考えられるコトを、片っ端から並べてみたけれど


(じゃあ、それが叶ったからって、それからどうするんだよ)


いろいろイメージしようとしたけれど、



何も浮かばない・・・



(・・・詰んだ)



今が『絶好のチャンスタイム』かもしれないのに


いざ、目の前に「どうぞ!」と差し出されると



どうしてこうも



「決められないんだ・・・」



ひとつにしぼれない、からなのか?



そもそも



叶えたいコトが、自分でも漠然ぼんやりとし過ぎていて


どうかも



わかっていない



そんな気がする。



「はぁ・・・」



なんだか、情けなくなってきた。



「俺はいったい、どうしたいんだ・・・」



テーブルに突っ伏した目線のその先には


叶える願いもないまま


待ちくたびれて寝ちゃったみたいに


しん、とした


青い羽根があった。



「俺の叶えたいコト叶えたいコト叶えたいコト・・・」





「・・・どこいっちゃったんだよ・・・」



(もう一度、会えるかなぁ・・・)



って、



「あーー!!」



ガバッ!と起き上がって


「い、い、今の無し!無し!違う違う違う!!」


思わず願ってしまったかもしれないって


慌てて青い羽根を握った。


(違う違う違う・・・間違いだから・・・)


祈るように、恐る恐る握った手を開いてみた。



「・・・あ、ったーー・・・」



もう、ほとほと


疲れ果てた・・・

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