第25話 二人だけの夜①
「さっきね、綾羽に呼ばれて外へ出たときに見たんだけど、星がたくさん見えた」
「へえ、私も見たいな」
窓のそばへ行ってみるが、あまりよく見えない。
「ねえ、二人だけで外へ行ってみよう!」
「えっ、今から? お酒も飲んじゃってふらふらするのに……」
「見たいよ! 暗いところで」
「いってみようか。懐中電灯があったはずだ」
部屋に備え付けてある懐中電灯を持ち部屋を出た。廊下は静かだ。そっとロビーへ出ると、夜遅い時刻にもかかわらずフロントに明かりがついていた。
「すみません、ちょっと外へ出たいのですが……」
「ああ、少しだったらいいですよ。もうすぐここもいなくなってしまいますから」
「はい、すぐに戻ります。十分ぐらいで」
玄関を開けてもらい外へ出た。ホテルから離れ、明かりのない場所へ移動し上を見上げる。
「うわああ~~~、綺麗! こんなに星があったなんて、知らなかった」
「何時もあるけど、光がたくさんある都会では気が付かない」
「神秘的でいいなあ。星って」
「地球からの距離が違う星が一斉に瞬いて見える。ここへ光が届くのに係る時間はみんな違うんだもんね」
「そう、もう消えてなってしまって光だけがここへ届いている星もある」
嬉しくもあり悲しくもある。一緒に見られてよかった。
「二人で外へ行って楽しそうだったから、見られてよかったよ」
「来てよかった……」
「あっちは?」
「森だね」
「ねえ、ちょっとだけのぞいてみたい」
「ほんの少しだけだよ。入っていったら迷子になる」
森の入り口からなかをのぞく。すると、ガサゴソと音がしたり野生動物の遠吠えが聞こえたりする。気には名も知らぬ鳥たちが止まっている。
「いろんな生き物がいて、夜でも動き回っている」
「わっ、怖い。暗がりで目だけ光ってる」
「フクロウかな」
「そうみたい」
「森は昼間と全然違う顔をしている」
「もう戻ろう」
奥へ入っていったら、戻ることもできなくなりそうだ。
「ふう、もう寝る支度をしよう」
「明日二人に話して聞かせようかな」
「星を見たこと?」
「いいえ、夜の森の事」
おお怖がるだろうな。
「さあ、御風呂へ入る。体が冷え切ってしまった」
「先に入って」
「じゃ、俺からね」
海へ行った時のことを思い出すな。あの時は隣同士でシャワーを浴びた。湯船に入ると、疲れが取れた。
「どうぞ、次は鈴奈の番」
「は~い」
お風呂に入っていった。明かりがついて水の音や、シャワーの音が聞こえる。気にしないようにしよう、とテレビを見たり持ってきたものを並べて眺めたりする。落ち着かないので部屋を綺麗にしておこう。
「出たよ。あら、綺麗に片付いてる」
「まあ、暇だったから」
冷えた体が温まった。
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