箱庭
小川コウ
夏が過ぎる
ドアの隙間から吹き込むぬるい風
それに乗って真っ赤な西日が
ぬるりと
部屋に入り込んだ
薄暗い部屋に一筋の光がのびる
手をかざしてみれば
熱い夏の光だった
掴むことも
振り払うこともできず
そこにいるだけ
縋ることも
突っぱねることもできず
そこにいるだけ
ふと手に絡みついてきた夏は
少しだけ手を温めて
どこか悲しげに消えていった
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