第7話 北条さんと読書
「こちらは応接室で、隣の部屋は旦那様の執務室です」
朝食を食べ終わった俺は、梓さんの案内で屋敷の中を見て回っていた。
克人さんと祥子さんは仕事があるとかで朝食が終わったらすぐに家を出て行った。
北条さんはと言うと…昨日の夕飯と同じように食べ終わったや否や、どこかに行ってしまった。
とりあえず今はこの家のことを知ろう。
「一階は右奥から順にお風呂場、食堂そして中央玄関を挟んで左に旦那様の執務室と応接室がございます。それでは二階に行きましょう」
「二階には旦那様、奥様、お嬢様、それぞれの自室と客室がございます」
確か北条さんの部屋は俺の部屋の隣って言ってたっけ。
そして、スタスタと歩く梓さんの後について行くと、梓さんがある扉に前で止まった。
「こちらのお部屋は旦那様がお集めになった本が置かれている図書室です」
そう言って梓さんは扉を開けた。すると、うわぉ、地元の図書館よりも高い棚がずらーりと並んでおり、棚には本がびっしりと置かれていた。さらにここだけ二階と三階が吹き抜けになっており三階にもびっしりと本が置かれていた。
「ここはお嬢様のお気に入りの場所の一つとなっており、よくここの本を持っていかれて、屋敷中で読んでいらっしゃいます」
あ、北条さんがご飯の時に読んでいた本はここからきたのか。にしてもたくさんあるな。北条さんは全部読んだりして。そんなことを考ながら一つ梓さんに質問をした。
「あのぉ、ここにある本って俺も借りて読んでいいですか」
「はい。自由に入って持って行って大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
やった。俺は運動も好きだがそれ以上に本が好きで、中学校の時は週一のペースで地元の図書館に行っていたほどの読書好きで、ここに来ても本が読めてよかった。
北条さんも本が好きらしいから、話が会うといいな。
「それでは屋敷の中は以上になります。何かご不明な点はございますか」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか。それでは、あとはご自由に散策なさってください。庭はお嬢様と奥様のご希望で素晴らしい物となっておりますので、良かったら行って見てください」
「はい、わかりました」
「それでは、私は仕事に戻らせていただきます。何かご用がございましたら、近くにいる使用人に言っていただければ向かいますので」
そう言って梓さんは仕事に戻って行った。
さて、どうしよかな。とりあえず庭に行ってみるか。あ、そこで本を読むか。
そう考えて俺は図書室の中に入り、一通り見て回り、目に留まった本を3冊ほど手に取って図書室を出た。一通り見て回るのに一時間もかかったが。
本を持って裏庭に出た俺の目に入ってきたのは、お花畑だった。洋風のお花畑の中にはガーデンテラスがあり、奥には生け垣でできた壁があった。生け垣は道の上はアーチ状になっていて奥に行けるようになっていて、奥に行くとそこにはとても広い池があった。
家にお花畑と池があるとかどんな家だよ。あ、財閥の家だった。そんな昨日もしたような一人ツッコミをしながら池も周りを歩く。
先ほどのお花畑は洋風に対して、こっちの池は和風の作りになっていて、池の真ん中には御堂が建てられており、岸と橋でつながっている。
いわゆる浮御堂と言うやつか。
そこで風水を感じながら本を読むのもいいなと思い、橋の方に歩くと御堂にすでに人がいるのが見えた。
誰だと思いもう少し近づいてみると、そこに居たのは美しい銀髪をした少女だった。北条さんだ。
北条さんは本を読んでおり、隣には本が高く積まれていた。
うーん。いい機会だな。この機会に北条さんと話してみるか。
そして俺は橋を渡って御堂に入って本を読んでいる北条さんの近くに行った。
「えっと、隣座ってもいいかな」
「…」
はい。無視されました。こんなに可愛い子に無視されるのは少し胸が痛むな。
まぁ、あまり急に近づきすぎて、嫌われても意味ないから退散しますか。
そう考えて御堂を出ようとしたとき、北条さんが本から目を離さずにぼそっと俺に向かって一言言った。
「自由に座れば」と。
その言葉を聞いて少なくとも、まだ嫌われていないことがわかり、嬉しく思った。
そして俺は北条さんの本が置かれていない方の隣に座り、北条さんの反対側に自分で持ってきた本をおき、上から一冊手に取って読むのだった。
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