3−3 彼女のいいがかり

「コーネリア、貴女一体何を言ってるの?何故私が貴女の魔石を持っているっていうの?」


「とぼけないで頂戴。私は昨日魔石を見つけて、袋の中にしまっておいたのよ。そうよね?メグ?」


いつの間にかコーネリアの背後には彼女の仲間となった令嬢が立っていた。そうか、彼女の名前はメグというのか。

メグと呼ばれた令嬢の肩がビクリと跳ね上がった。そして彼女は私の視線から顔をそらすように頷く。


「え、ええ…コーネリア様は昨日魔石を見つけて袋にしまいました」


言い終えたメグの身体は小刻みに震えている。…気の毒に。誰が見ても彼女はコーネリアに脅迫されているのは一目瞭然に見えた。そして令嬢たちは私達の様子を見てざわめきはじめた。


「一体何かしら?」

「さっそく魔石の奪い合いが始まったみたいよ」

「でも奪い合ってもいいとアンリ王子様は言ってらしたのだから別に構わないんじゃないの?」


その言葉がコーネリアの耳に入って来たのか、一瞬顔が悔しげに歪む。そして再び口を開いた。


「昨日はね、夕食を食べるまでは確かに魔石があったのよ。なのに部屋に戻ってみれば魔石が無くなっていたのよ。シルビア、貴女昨夜食事の席に現れなかったでしょう?あの場にいなかったのは貴女だけよ?だとしたらどう考えても盗んだのは貴女しかいないでしょう?!」


「…」


コーネリアはどういうつもりでこんな事を言ってるのだろうか?彼女が魔石を探せるはずはない。何故ならコーネリアには魔力が一切無いのだから。もしここで彼女が嘘をついている事がバレてしまったら一体どうなってしまうのだろう?


「コーネリア…貴女本気でそんな事いってるの?」


「ええ、そうよ」


「私が貴女の魔石を盗んだと言う証拠は?」


「私の魔石が無くなった。それだけで十分よ!」


どう考えてもコーネリアの言い分は理屈が通らない。 


するとそこへユベールが食事のトレーを持って戻ってきた。そして周りに人だかりができ、椅子に座っている私を睨みつけるように見下ろしているコーネリアを見ると言った。


「一体、これは何の騒ぎなんだ?」


ユベールは食事の乗ったトレーをテーブルの上に乗せると私にではなく、コーネリアに尋ねた。


「はい、ユベール様。ここにいるシルビアが昨日私が見つけた魔石を盗んだのです。私は事を大きくするつもりはありません。なので早急に返してもらいたいだけです。そうすれば何て事はありません」


「何?シルビアがお前にお前の魔石を盗んだ?ありえないな、話にならん」


ユベールは言うと私の向かい側の席に座ると言った。


「もうあまり時間がないからな。さっさと食べてしまおう」


まるきりコーネリアの存在を無視するユベール。


するとコーネリアが顔を真っ赤にさせると言った。


「何を言ってるのですか?こんな状態で食事ですって?!信じられないわ!」


すると突然ユベールは立ち上がり、突然腰に差していた剣を抜刀すると、コーネリアに切っ先を向けた。


「ヒッ!!」


コーネリアの目に怯えが走る。


「いい加減にしろ。シルビアは魔石に触れる事が出来ない体質だ。何故それでコーネリアが魔石を盗めると言う?第一、そもそもお前は本当に魔力があるのか?魔石を本当に探し出せたのか…それすら怪しいものだ」


ユベールの声は…ゾッとするほど恐ろしいものだった―。




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