転生少女のステータス
異世界転生から3年、私はこの世界に冒険者がいることを知りました。
「ぼ、冒険者⁉︎母さん、冒険者って何?」
「まあ随分興味津々ね。いいわ、教えてあげる。こっちにいらっしゃい」
リビングに移動すると母さんが話を始めます。
「うーん、どこから話そうかしら。そうね、冒険者っていうのはね、魔物をやっつけるお仕事なのよ」
「魔物⁉︎」
思わず私は目を輝かします。
「そうよ。この世界にはね、魔物っていう化け物がいっぱいいるの。冒険者はね、そんな魔物をやっつけてみんなを守るお仕事なの。こう見えて母さんも昔は冒険者だったのよ」
うおおーーー!魔法、冒険者、魔物、異世界キターーーーーー!(弾幕)
しかもまさか母さんも冒険者だったとは。そういえば魔法も使えますし、きっと母さんは魔法使いだったのでしょう。『昔は』と言っていたのはもしかすると私を産むために引退したのかもしれません。
「ねえねえ、母さんって魔法を使って魔物をやっつけてたの?」
「そうよ。母さんみたいに魔法を使う人は魔術師って言ってね、母さんはこれでも結構有名な魔術師だったのよ。父さんはとっても強い剣士なのよ」
父さんは剣士でしたか。まさか両親が揃って冒険者だったとは驚きです。そしてとてもかっこいいです!
「決めた!私、冒険者になる!」
異世界ならではのお仕事!ワクワクが止まりません!これは私の夢決定です!
「まあ本当?それじゃ母さんも応援するわ」
「わーい!母さん大好き!」
その夜、帰ってきた父さんに、冒険者になりたいことを話しました。
「本当か⁉︎よっしゃ、そういうことなら父さんも全力で応援するぞ!教えられることなら何だって教えてやる!」
「わーい!父さんありがとう!」
「ゴードン、リリィはまだ3歳なのよ」
「ううん、それもそうだな。よし、それじゃあ5歳から特訓を始めよう」
「そうね、5歳からならいいかもね」
おや?5歳だと何がいいのでしょうか?
「母さん、父さん、5歳になったら何かあるの?」
「ふふ、5歳になったらね、教会に行って神父様に〈鑑定〉してもらうのよ」
鑑定?まさか、あの異世界ではおなじみのスキルのことですか?
「母さん、神父様に〈鑑定〉してもらったら何が分かるの?」
「何でも分かるわよ。どんな魔法が使えるのかも、どんなスキルが使えるのかも」
「スキル⁉︎スキルって?」
「スキルっていうのはね、魔法とは違う不思議な力のことよ。人によって使えるスキルは違って、どんなスキルが使えるかは〈鑑定〉をしてもらわないと分からないの」
「へえ。あ、そうか!5歳になったらどんなスキルや魔法が使えるか分かるから特訓も5歳からなんだね」
「おおリリィは賢いな。その通りだ。〈鑑定〉してもらったら色んなことが分かるから、どうやって魔物と戦うか考えやすくなるんだ」
「だったら私、5歳になるの楽しみ!」
「ええそうね、母さんも楽しみだわ」
「父さんもだぞ」
それから月日は流れ、私はついに5歳の誕生日を迎えました。今日は母さんと父さんと一緒に教会へ行きます。楽しみです。
「リリィ、準備はいい?」
「うん、ばっちりだよ!」
「よし、じゃあ行くか!」
母さんと父さんに手を繋がれ、私は教会へと向かいます。それにしても、街の光景を見ているとやっぱり異世界だなあと思います。
まず街並みがどうみてもノットイコール現代です。時代的には中世ヨーロッパでしょうか。次に人々の見た目です。髪の色がとてもカラフルなのです。ちなみに私の髪の色は明るい水色です。どうやら髪の色は両親のそれとは無関係みたいです。
しばらく歩くと、大きな教会の前に着きました。
中から神父様と思わしき男性が出てきます。
「これはこれはゴードン殿にセシリア殿。本日はどうなさいましたかな?」
どうやら両親とは知り合いのようです。
「実は娘が5歳になったんです。それで神父様に〈鑑定〉をしていただきたいのです」
「それはそれはおめでとうございます。どうぞ中へ、すぐに準備をしましょう」
教会に入り、椅子に座って待つこと少し。神父様が水晶玉をもってやってきました。
「それでは始めます。ゴードンとセシリアの娘よ、汝の名を」
「は、はい!リリィです」
「うむ、神よ、その万物を見通す
その瞬間、水晶玉が光り輝き、私の脳内に私の情報が流れ込んできます。
リリィ(人間)
状態:健康
スキル:
自分以外の生物または道具にスキルを授けることができる。授けることのできるスキルの数と性能は対象の魔力量に
身体能力:A
魔力量:S
魔法:未習得
「……おお、これは。魔力量Sとは驚きましたぞ。斯様な逸材は滅多におりませぬ」
どうやら私以外にも鑑定結果は分かるようです。それにしても神父様の言う通り魔力量Sはなんだか凄そうです。
「すごいわよリリィ。魔力量っていうのはね、その人がどれだけの魔力を宿せるか、っていう量なのよ。リリィはそれがとってもいっぱいなの。それでね、魔力っていうのは魔法を使うために必要な力なの。つまりリリィはすっごい魔術師になれるのよ」
「おいおいセシリア、身体能力だってAじゃないか。きっとリリィは剣とか弓とかの才能もあるに違いないぞ!」
どうやら私のステータスはとんでもない代物のようです。にしても気になるのは
「スキル〈
「んんん、聞いたことがないわね。ゴードンは?」
「いや、俺も初めて聞いたぞ」
「私も初めてです。きっと余程珍しいスキルなのでしょう。リリィよ」
「はい」
「スキルの名前は私たちにも分かっています。けどどんなスキルかはあなたしか知りません。スキルというのはとっても大事な物ですから、その内容は本当に必要なときにだけ話すんですよ」
「はい、分かりました」
なるほど、魔物との戦いに身を投じる冒険者にとってスキルは大事な情報。手の内をみすみす明かすようなまねはするなということでしょう。
家に帰った私は、目の前にいくつかの物を並べていました。
コップ、りんご、ヒノキの棒、靴、父さんの鎧
「リリィ、どうしたんだ?こんな物並べて」
「あのね、私のスキルを試してみたいの」
「おお、そうか」
まずは父さんの鎧から試すとしましょう。なんでも昔奮発して買った一級品だそうです。魔力量は多そうですね。
「えっと、こうかな?スキル〈
すると、私の脳内にどんなスキルを与えられるかの情報が浮かびます。
〈発光〉
淡く光る。
〈靄〉
体内の水分を消費して靄をだす。発生する靄は消費した水分の100分の1相当。
〈融解〉
溶ける。
しょぼい、しょぼすぎます!〈発光〉は目眩しにもならないし、〈靄〉は燃費悪いし、〈融解〉に至ってはただの自滅スキルじゃないですか!
ううむ……やはり魔力が多いと碌なスキルは使えないということでしょう。では、ヒノキの棒はどうでしょう?これは父さんが子供の頃に練習用に使っていた物で、魔力はほとんどありません。
〈炎熱〉、〈氷結〉、〈強酸〉、〈無限格納〉、〈身体強化〉、〈隠密〉、〈鑑定〉、〈衝撃波〉、〈石化〉、〈超音速〉、……
わわわわわ、な、何じゃこりゃあ(某刑事風)!圧倒的なレパートリー。それに1つ1つが強そうです!どうやら本当に与えるスキルの数と性能は魔力量に反比例するみたいです。
ふふふ、これは面白くなってきました。
この日から私はスキルを存分に使い、母さんと父さんにみっちり鍛えられる毎日を過ごしました。
そして、6歳を迎えました。
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