転生遺族と生徒会1
縦軸とていりが民間伝承研究部に入部してから数日。
「それでねそれでね、こんなブヨブヨのやつがいてね」
「なるほど、所謂スライムってやつですね。他には?」
「んーと、杖を持った人が、こうやってバーって火を出してた」
「それは魔法に違いありません。杖を持っていた人は魔法使いでしょう」
「おおー!異世界っぽい!」
部室ではていりと微が熱心に話し込んでいた。そしてその内容は全てていりのノートにダウンロードされていく。
縦軸とていりの入部が決まった直後、今後の方針が話し合われた。
まず微はなるべく〈天文台〉のLvを上げること。微曰く、頭や筋肉と同じで何度も使うことで経験値が貯まるらしい。よって微には暇な時間になるべく〈天文台〉を使うようにしてもらっている。
一方ていりだが、異世界のことを早く知りたいということで、微にお願いして今のように〈天文台〉で見た光景を教えてもらっている。ちなみに微によると音や会話も聞こえているが、何と言っているか分からないらしい。
「ふむふむ、なるほど。ありがとうございます。おかげで異世界のことがよく分かります」
「うん、ていりちゃんが喜んでくれて私も嬉しいよ!あ、そうだ。ていりちゃん、それに縦軸君にも訊きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、何ですか?いつも異世界のこと教えてもらってますから割と何でも答えますよ」
「じゃあまずていりちゃん!ていりちゃんは何で異世界のこと知りたいの?」
「え?」
「だって、いつもそんなに異世界のこと知りたがるじゃん?何でかなって」
「うーん……小学生の頃に色々あったから、とでも言っときましょうか」
「え〜、答えになってな〜い。じゃあいいや、次、縦軸君」
「はい、何ですか?」
次の瞬間、微は爆弾発言をした。
「縦軸君のスキルのこと、教えて」
何食わぬ顔で訊く微。一方縦軸とていりはそれぞれ固まっていた。まあその理由は異なるが。
「……いやいやいや、待ってください微先輩。僕のスキルって何のことですか?」
「ふっふっふ、縦軸氏、隠しても無駄無駄無駄ァ、ですよ。君がスキルを持っていることはお見通しです!さあ、そのスキルのことを先輩に教えなさい!すっごく気になります!」
「……何で分かったんです?」
「え、もしかして縦軸君は私と会ったときに感じなかった?ああ、この人スキルあるなあって」
「?」
「魔力だよ魔力!何でピンとこないのさ?」
「ああ、魔力ですか」
「ちょっと待ちなさい、虚君。色々突っ込みどころはあるけど、まず魔力って?だいたい検討はつくけど何でそれでスキル持ちが分かるわけ?」
「えっとね、魔力っていうのはゲームのMPみたいなもんだよ。この世界の人間は持ってないけど、私や縦軸君はスキルを使うための魔力があるの。それでね、虚君を見たときに、魔力あるなあって感じたの」
「だそうよ。どうなの、虚君?」
「え、いや、全然感じなかったけど……」
「それ、きっと虚君の魔力が多すぎるんじゃないかな?」
「「え?」」
「だって虚君の魔力ってすっごく多いんだよ!普段からそんな魔力あったら私の魔力に気づかないかもしれないけどさ。私ちょっと寂しいよ?」
「えっと、その、すいません」
「ねえ、虚君、そろそろいいかしら?」
「うん、何?」
「まあ、色々訊くつもりだけどまず1つ教えて。何でスキルあること隠してたの?」
その質問に対し、縦軸は黙り込む。ていりに悪気は無かったが、この質問は縦軸の心の中の最も深く、今でさえその心を傷つけているものに触れてしまったのだ。
縦軸は悩んでいた。言うかどうかということではない。ていりに質問された時点で言ったほうがいいとは思っていた。しかし、このことを話すということは、あの記憶を思い出すということだ。普段は自分がその存在を意識しないあのときの記憶を。
(言え、話せ。どのみち通る道だろ?何でここに来て躊躇っている?ああもう、非合理的だな!)
「……話したくないけど、話すべきだから話す」
「……分かった」
「縦軸君、大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ。頭の中でまとめてから話したいので、少し整理する時間をくれませんか?」
「うん、いいよ」
「私も構わないわ。ただし、やっぱり話したくないは無しよ」
「分かってるよ」
すこし自嘲気味に笑った縦軸はそのまま俯いて思考の中に潜っていった。
どれぐらいそうしていただろうか、しばらくすると縦軸はゆっくり深呼吸をし、ていりと微を向いてこう言った。
「やっぱり話したくないってのは……」
「だから無しよ。どうしてもって言うのなら、せめてあなたのスキル教えなさい」
「……分かったよ。スキル教えるからそれで勘弁してくれ」
「ええ、それで構わないわ」
「うん、教えて」
「……僕のスキルの名前は、〈
「変な名前だね」
「それで、どんなスキルなの?」
「……えっと、
「「……はああ⁉︎」」
「何ですか2人ともそんなに驚いて」
「いや、何で虚君はそんなに平然としてるの?」
「そーだよ!すっごいスキルじゃん!ねえねえ、それでそれで?もっと縦軸君のスキルのこと教えて!」
「え、あ、うん。ええと……」
その時、部室のドアが勢いよく開く。
「こら!微!いつまでここに
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