転生遺族の循環論法
はたたがみ
第1章 民間伝承研究部編
虚愛の自殺
私は今から自殺します。私の名前は
いじめの始まりは中学1年です。私はちっちゃな頃から運動音痴で、体育の時間はよくみんなに笑われていました。そんな自分を変えるべく、私はバドミントン部に入部しました。個人競技なら弱くてもみんなの足を引っ張らずに済みますし(団体戦なんて言葉はその後知りました)。
そのバドミントン部には同じ1年で、天才ともいえる人物がいました。彼女は幼い頃からバドミントンに打ち込んできたらしく、不幸にも彼女と対戦した時は1点も取れずに負けました(21点3セットです)。
さて、そんな彼女にも欠点がありました。単刀直入に言うと、性格がクズそのものだったのです。
私が走り込みで1人置いていかれたときには
「遅っ!え、人間ってあんなに遅く走れるの?」
私が腕立て伏せをしていると
「ちょっとー、ちゃんとできてないじゃん。まじウケる!」
私が彼女に負けたときには
「うぇーい!豚が勝てると思うなよ!」
まあこんな感じで暴言を吐かれていたのです。それだけに留まらず、私の教科書やノートを盗む、休み時間に自主的に勉強していただけでからかってくるなど、徐々にいじめはエスカレートしていきました。
え?案外大したことないじゃないかですって?
いるんですよ、そういう連中。いいですか、こういうのは他所と比べて云々ではなく、
まあ兎に角そういったいじめを毎日受けていました。するといつの間にか、同じクラスの半分以上がいじめに加わるようになりました。
友達ももちろんいましたが、彼女とていじめに自分から巻き込まれにいくほど馬鹿ではありません。
「ごめんね、愛。助けてあげられなくて……」
ある日の帰り道、涙を流しながら私に謝って来た彼女の顔は今でも覚えています。私も彼女の判断を肯定しています。
とはいえいじめは無くなりません。先生に頼ることも考えましたが、それはそれで嫌です。実は私、小学生の時に宿題の出来が悪くて当時の担任に叱られて以来、教師というものにそれなりの嫌悪感があるのです。いじめを告発して面談になったり、担任が家に様子を見に来るようなことになれば、今より酷い状況といえます。
まあそういう訳で、私は自殺するのです。そして現在、横断歩道の手前にいます。目の前には赤々と光る信号、そして向こうからはトラック。もう覚悟はできています。さあ、いきましょう!
私は一歩ふみだしました。トラックのクラクションが聞こえます。
そしてその直後、私の体に激痛が走ります。
良かった、最近は自動ブレーキなるものが開発されているらしいですからもしかしたらと心配していたんです。意識が遠くなり、周りの人たちの叫び声がずっと遠くに聞こえます。
もう大丈夫。やっとあの辛い日々から解放されます。走馬灯が駆け巡ります。思い出したのは家族、特に弟の姿でした。年の離れた弟でしたが、私にとても懐いてくれ、
「大きくなったらお姉ちゃんと結婚する!」
なんて言ってくれた事もありました。
ごめんね、
私の意識は暗闇に沈み、そして、再び浮かび上がったのでした。
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