鬼人は寄り添うのみ

えちだん

第一章 人、鬼人、妖

第1話 プロローグ

 昔、昔、はるか昔、妖怪、物の怪、魔物が存在していた頃。

人々は、暗闇に潜む彼らを恐れ、畏怖していた。

そんな時代に奇妙な出来事から話は始まる。


 あるところに、名士の一族がいた。

その名士の一族は年々名を上げており、もうすぐその土地の有力者に名を連ねるといったところでした。

そんな名士の一族でしたが、子供に恵まれず一人娘しか授かることができませんでした。

そんな一族に不幸が襲います。


 鬼が近隣に出現し、名士の一族の一人娘が鬼に襲われたのです。

名士の一族はその鬼を命からがら討伐しますが不幸はここでは終わりません。

なんと鬼が娘に襲い掛かり、娘が鬼の子を孕んでしまったのです。

鬼と人間が交わるなど、まして鬼の子を孕むなど聞いたことがありません。


 名士の一族は醜聞を恐れ娘を家にかくまいます。

そうして、月日が過ぎると娘は子を産みました。

その赤子は額に角が生えており、まさしく鬼の子でした。

名士の一族は祟りを恐れ、赤子を森に捨ててしまいました。


 偶然か? はたまた必然か?

世にも珍しい鬼と人の子がここに誕生したのである!

ただの子供では生まれたその日に森に捨てられれば一日たりとも生きてはいけないだろう。

だが、鬼の血が赤子を幸か不幸か生かしてしまいます。

生まれながら生えている歯で地面を歩く虫を、地面に生えている雑草を、時には雨水を食らいました。

赤子は生き延び、二の足で地面を蹴り上げられるほどたくましく成長します。


 さて、今回の物語は赤子が捨てられて200年という月日が経ったところから始まります。

鬼でも人でもないこの男、


 鬼人きじん


 彼の物語の始まり、始まり……。

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