いきなり子沢山?!

「バカ精霊なら会ってないぞ。女性型世界樹製躯体壱号機アフロダイがそこにあるから、精霊体でどっかにいってるんじゃないか」


ペッターが顎で指すところに、文字通り糸の切れた人形のようにマリオネットが置かれていた。

 アディとオレは同じ精霊体でバディだから繋がっている。

 探ってみたら、切り倒された切り株の根のところにいた。


「なんだ自分の部屋にいるのか。ちょっと行ってくる」


「ああ」


素っ気ない態度なのは、もうテレビに興味が移っているからだろう。

 モニターから姿を消して、精霊界に戻る。

 精霊体はイメージの世界だから──ああだから時差ができたのか。


 オレとしては十日くらいチュートリアルをしていたつもりだが、現実世界では一日くらいだった。

 精神と時の部屋みたいだが、そうじゃない。肉体の無い精霊体だからイメージトレーニングみたいな感じなんだ。だから早かったのか。


 アディの部屋の前に着く。

 ふわふわとした霧状の空間に、勉強部屋の扉に[あでぃのおへや]と丸文字で書かれたプレートがぶら下がっている。

 これを見るたびに少々落ち込む。


 樹木精霊ドライアドは巨大な精霊体で、世界中の樹木に繋がっている。

 それぞれの樹木には担当ドライアドが憑いている、まあ巨大なサーバーが管理しているAIみたいなもんだ。


 今のところ下級ドライアド、上級ドライアド、高位ドライアドと段階があることを知っている。アディは高位樹木精霊ハイドライアドだ。


 次期世界樹候補のオレのバディとして下級の頃からのつき合いで、上級のなった時、視認できるイメージになったのだが、まるでメー○ルのような容姿だった。

 とくに気にしてなかったのだが、高位にレベルアップしたとき、なぜその容姿になったのかを知った。


「クッキーって、異世界から転生したわけでしょ。だからミスマの世界とのギャップがあるわけじゃない、その為に説明するとなると、あたしが異世界のことを知らないと例えとかできないわけ」


「そう──だな。ということは」


「下級から上級にクラスアップするときに、クッキーの個性キャラクターを元にして知識と性格と容姿を作り上げたの」


ここまで説明されたとき嫌な予感がしたが、続いて説明されるとそれが的中してしまう。


「つまりクッキーの女性的要素アニマをベースに、信用信頼できるイメージの外見、それと長くつき合いやすい性格を付加されて出来上がったのがあたしってわけ」


つまりアディはオレの女性に対する理想像そのものということか。オレってこういう女性が好みなんだな。


 理性を抜きにして自分の断りもなく欲望を具現化された存在と知ってから、アディのやることなすことが、照れくさくて恥ずかしくなった。


 とはいえ、つき合いやすい存在であることは間違いない。

 ひとりっ子だから分からないけど、姉とか妹がいたらこんな感じなのかな。


「アディ、入っていいかい」


「クッキーなの? どうぞー」


いや、この精霊界はオレとお前しか居ないんだが。


 部屋だって本来は必要無いんだが、ユーリに部屋を用意したら、自分も欲しいと言って勝手に創られたやつだ。


 やれやれと思いながら扉を開けると仰天した。


「おわぁ!!、な、なんだなんだこれは?!」


 扉の中には体育館のような空間が広がっていて、そこには大勢の女性が並んでいた。しかもジャージ姿で。


「アディ、誰なんだこの人達は」


「あたし達の子よ」


「はいぃぃぃ?!」


あたし達の──子供ぉぉ?!


「そんなに驚かないでよ、ハイドライアドになったから面倒を見るドライアドが増えたのよ。クッキーも知ってるでしょ」


「ああ。……あの子達か。こんなにいたんだ」


「ほら、カーキ=ツバタで急に支配地が増えたでしょ、これからも増えると上層部に申請したら、これだけまわされたの」


「何人いるんだ」


「えっと、上級が八人にそれぞれ担当の下級が二十四人」


ということは、二十四かける八プラス八で、ちょうど二百人か。


「それで担当する樹木をなんにするか決める前に基礎訓練をしてるの」


ああだから体育館のイメージで、みんなジャージ姿なのか。下級は茶色で上級はエンジ色、アディは緑色ていちおう色分けしてあるのね。


「で、クッキーは何の用なの」


ご挨拶だな。


「チュートリアルが終わったんで同期シンクロしに来たんだよ。ほら、おでこだせ」


二百人の前でおでこをくっつけ合うが、下級は無反応、上級はきゃいきゃいとはしゃいでいる。そういう差があるんだな。


 オレがバージョンアップした以上、アディもしてもらわないと困る。

 互いに知識や経験を得ると、こうして同期してマイナーチェンジしているのだ。


 ──しばらくして同期を終了すると、理解インストールするため停止状態となり、再起動した。


「へえ、ずいぶんレベルアップしたのね。やれることが増えたわね」


「ああ。今までは精霊力をたれ流しみたいに使ってたけど、工夫とか変換ができるようになった。世界樹庭園どころかウキクサごと改良できるぞ」


「ふーん。じゃあそっちはそっちでやっててね。あたしはこの子達の訓練のあと、支配地への配置をやってるから」


「わかった」


 そっちはアディに任せて、オレはユーリのところに向かった。

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