74話 バナナとカップラーメン

 


 美味い。流石メイド。俺なんかろくに黒幕RPできてない気がするから羨ましい。


「デザートのバナナです」


「ありが……と?」



 バナナ持ってきてくれたのはいいが、多すぎやしないか? 山盛りだ。



「何でこんな大量に出すの?」


「消費しきれない程余っていまして」


「これどのくらいあるのさ?」


「適当に持ってきたので軽く10房は超えているかと」


「アホなん?」


 アホなん?



「!?」


「あ、ごめん。心の声が漏れた」


「申し訳ありませんでした。お詫びに残りは全て私が食べます」



 それ罰になってなくないか? ……いや、この量を食べ切るのは罰になるな。俺なら途中で吐く。


 にしてもこいつ、もう素でいいかもしれない。アホっぽいし。



「マツはカルマ値どこ帯?」


「おそらく悪寄りの中立です」


「おそらく?」


「ランキング外は載ってないので推測です」



 確かに。でもこんな森でこもってて悪に寄るか?



「何で悪寄りだと?」


「初日、ここに来た時に森を焼いたのと、人を一人殺したからです」


「人を?」


「はい。ここに迷い込んだ旅人を」



 その人にもいきなり仕掛けたのか。



「念の為言っておきますが、その人は女一人だと思ったのか性的に襲ってきたので反撃したまでです」


 そうか、こんなやつでも大変な目にあってるんだな。



「まぁ、少し遅かったら私から戦いを始めようと思っていましたが」



 前言撤回。言い訳の意味が全く無いぞ。こいつは根っからの戦闘狂だ。旅人さんはどっちにしても死んでいたのか。ナムナム。


 とりあえずこいつは悪寄りなのは間違い無いだろうし、【契約】があるから信用できる。言っちゃえ。まずはお面を取って外套も脱ぐ。



「実は俺はクロって名前だ」


「存じ上げております」


「え? 何で?」


「メッセージしているところを覗き見しました」



 誰かー、このメイドにお仕置してー。俺はやりたくない!



「覗き見できるんだ」


「設定で他人からは非表示というのにチェックを入れれば見えなくなりますよ」


「そっか」



 下調べしてないのがこんなところで出てきたか。チェック入れといてっと。


「もう昼過ぎだし、一旦ログアウトして昼食べてくるから」


「私もそうさせて頂きます」






 ログアウト。


 急いで適当に済まそう。タラッタちゃんをネアに任せっきりは心配だ。ネアってかなり口数少ないから、タラッタちゃんがオロオロしてるのが目に浮かぶ。



「ラーメン♪ ラーメン♪ カップラーメン♪」


 3分間だけ待ってやる。



「ただいま〜」


「おかー」


「カップ麺の匂いだ〜。塩味?」


「そうだよ」


 今日は大学があったはず。早いお帰りで。



「おじゃまします」


「沙奈ちゃんで〜す」


「どうも」



 姉さんの大学の友人さんだ。前会ったのは2ヶ月ぐらい前かな。



「姉ちゃん達はもう食べたからごゆっくり〜」


「あいよ」



 それなら遠慮なく食べるとしよう。



「いただきます」


 ズルルルッ



「手に入れた〜?」


「もちろん。明日だからね」



 ズルルルッ



「凛は何してるの?」


「え〜と、最近は魚釣りしたり〜、爆薬を作ったりしてるよ〜」


「何で爆薬を?」


「近くの村の畑を守るために手伝ってるんだ〜」



「ゴホッゴッホゴッホ!」


「こーくん? 大丈夫〜?」


「気にしないで。ごちそうさまでした」



 シンクにカップをぶち込んで部屋に戻る。


「爆薬はやりすぎだろ!」


 ふー、落ち着いた。急にツッコミたくなったけど姉さんの友人もいるから我慢した。我慢できて偉い、ナイス俺。


 …………さっさと戻って森から脱出しよう。



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