第10話
魔王軍にとって、ザコモンスターと中ボスのモンスターの線引きの仕方とはひどくシンプルなものなのだ。
それはひとえに――。
冒険者に『勝つ』か『負ける』かだ。
ザコモンスターは冒険者に負けてばかりいるからザコモンスターのままのだ。
魔王軍に入るモンスターはキャリアは、一部のエリート連中を覗けば皆ザコモンスターから始まる。
そこで冒険者を倒す勝率が高いものだけが上に見いだされて中ボスやボスなどの役職を与えられる。
オレとて最初はひとりのザコモンスターとして魔王軍にはいったのだ。
最初は苦労したが、長年、努力に努力を重ねることよってなんとか高い勝率で冒険者たちを倒すことができるようになり、ダンジョンの中ボスという役職を得られることができたのだ。
それがザコモンスターの出世コースの定番のケースなのだ。
……まあそのダンジョンの中ボスになったことが今となっては良かったのかどうか分からなくなってきているのだがな。
つまりは勝率の問題なのだ。
…そうなると逆もしかりなのだ。
はれてザコモンスターからダンジョンの中ボスになれたとて、1回の敗北でアウトというわけではないが、中ボスとしてあまりに冒険者に負けているようならば無論、降格。
ダンジョンの中ボスという責務を果たせていないと判断されて中ボスはクビ。
また数多いるザコモンスターの1匹として、1から働くことになる。
ダンジョンの中ボスである今の生活に疑問を感じてはいるが、降格はそれよりもツライ…。
また1から始めることもツライし、魔王軍を続けて高い地位になるのならば、どうせまたダンジョンの中ボスをやらなければならないのだ。
ダンジョンの中ボスはいやだが、できることならば出世してダンジョンの中ボスを卒業したい。
そのためには今日も今日とて目の前に立ちはだかる冒険者たちに負けている場合ではないのである。
勇者がオレに向かって叫ぶ。
「キサマを…倒す!」
勇者の構えるソードの切っ先がオレに向けられる。
「のぞむところだ!!かかってくるがいい!」
オレの声があたりに響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます