第2話 美音(みおん)、ハッピーのママになるの巻き

あたしは美音でハッピーのママ。

この小説を読んでくれている「あなた」と電話で話しているつもりで書いてます。

「あなた」はどんな人なのかな。

あたしの知っている人、それとも初めましての人かな。

どちらにしても読んでくれてありがとう。

思いつくままにお話するので、読むのに飽きちゃったら少し休んで、お茶を飲んだり、お散歩するなりしてくださいね。なんなら寝ちゃってもかまわない。

そしてまた気が向いたら続きを読んでくれたら嬉しいです。


それではあたしとハッピーの物語、はじめます。

えっまだはじまっていなかったの?

第一話のハッピーのお話は序文のようなものなの。

ここから本番がスタートします。


或る日あたしはハッピーのママになった。青天の霹靂。

だってあたしは犬が苦手。

その頃勤めていたITの会社でペット用の製品を販売することになって、それのPRのためペットについていろいろ調べていたんだけど、それで犬を見たくなり、ペットショップに行ってみたのよ。

そこではじめてトイプードルの赤ちゃんを抱っこしたの。

その時の感覚を今も覚えてる。温かくて、やわらかくて、弱々しくて、はかなげで。

ココロがなんだかポカポカしてきてとてもやさしい気持ちになった。犬ってすごい。そう思った。それ以来、頭の隅っこにはいつも犬のことがあった。


新製品のPRのためペット情報のウエブサイトをつくることになり、あたしが担当になったの。それで月に一回、犬を取り巻く世界のオピニオンリーダー的な方を探して取材し記事を書いていた。その時に出会ったのが警察犬の訓練校の先生だったのね。その方はシェパードの繁殖をしながら、警察犬の訓練士を養成する学校の先生をしていた。たまたまその頃テレビでペットのしつけ教室の番組をやっていて、その先生が出演していたの。それであたしはすぐさまネットで調べて電話して取材を申し込んだ。運よく快諾してくれた。

取材の場所は埼玉の山奥にある警察犬の訓練所。会社のスタッフと一緒に車で出かけた。たくましいシェパード犬がたくさん出迎えてくれた。

その日は警察犬の話じゃなく、ペットのしつけについて取材をしたの。シェパードにも触らせてもらったんだけど、シェパードってとってもカッコいい。THE犬って感じ。犬の中の犬って感じがした。少しこわかったけど、先生に正しい触り方を教えてもらいながら勇気を出して触ってみたら、温かくてやさしい感じがした。ココロが落ち着いて癒されたのを覚えてる。心の底のほうがジーンとなった。

それであたし自然に口が動いちゃって、「こちらでは小型犬の繁殖はやっていますか」なんて聞いてしまったの。

そしたら先生は「シーズーでしたら今ちょうどお腹に赤ちゃんを身ごもっていて、もうすぐ生まれますよ。」と言うじゃない。

それを聞いて、生まれたら見に来ると約束した。生後30日くらいに事務所の方から連絡があり、其処でハッピーと出会ってしまった、というわけ。

その時のハッピーは私の片手の平にのるくらい小さくて、ぴいぴいってずっと鳴いてた。犬というよりはまだねずみみたいな姿かたちをしていた。背中のところが金茶色の毛で覆われていて他の部分は真っ白だった。ハッピーを掌の平に乗せたときの感触忘れない。くすぐったくて、よちよち動きながらぴいぴい鳴いていて。かわいすぎて泣きそうになった。

「この子にします。」とあたしはきっぱり言って、ハッピーの後ろ足の裏にあたしの名前を書いてもらった。

あたしに小説を書かせちゃうほどの「存在の耐えられない重さ」このずしりとした感じ。いったい何なのだろう。

あんなよちよち歩きの小さな小さないきものなのに。

独身で子供のいないあたしへの神様からのプレゼントだったのかも知れない。

今日のあたしのお話はここまで。

聞いてくれてありがとう。

次はハッピーの番だよ。

シクヨロ~。see you.あんにょん。再見!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る