第11話



 「よし、これで八属性の魔法修得は完了したな、ちょっと見てみるか……【ステータス】」



 あれから、創造魔法を駆使して炎魔法を修得した要領で残りの七つの属性全ての魔法を修得した秋雨。

 最後の光属性を修得するために、指先に出現させたビー玉ほどの大きさの光の玉を指を振って消すと、今まで修得した魔法を確認すべくステータスを開いた。



 別にステータスの確認をするための【ステータス】という言葉は口に出す必要は無かったのだが、何となく流れで秋雨は呟いてしまった。

 それに気づいた秋雨は苦笑いを浮かべると、今度からは口に出さないように注意しようと決めてステータスを確認する。




 名前:日比野秋雨


 年齢:15


 職業:なし


 ステータス:



 レベル1



 体力 100000


 魔力 100000 


 筋力 1000


 持久力 1000


 素早さ 1000


 賢さ 1000


 精神力 1000


 運 1000



 スキル:創造魔法Lv2、料理Lv1、錬金術Lv1、鑑定Lv2、


炎魔法Lv1、氷魔法Lv1、水魔法Lv1、雷魔法Lv1、風魔法Lv1、土魔法Lv1、闇魔法Lv1、光魔法Lv1




「おっ、創造魔法と鑑定先生のレベルが上がってるな、魔法に関しても無事に修得できたようだ……ってか年齢が15になってるってことは、ホントに若返ったんだな俺」



 ステータスを見た秋雨は、八つの属性が修得できた事を確認すると創造魔法と鑑定のレベルが上がっていることに気付いた。

 流石にこれだけの魔法を一度に創造したことと、今まで鑑定を使いまくっていることに思い至った秋雨は、そういうものかということで納得する。



 だが、さすがに自分が15歳に若返っていることにはまだ半信半疑な部分があるため、それに慣れていくにはもうしばらく時間が必要だろう。



 ここまでの秋雨の行動で分かったと思うが、今秋雨はとんでもない事を仕出かしてしまっていた。

 鑑定先生の結果でも説明した通り、属性ごとに修得できる難易度が異なるため、基本的には火・氷・雷の属性の魔法を修得している魔法使いが多い。



 この世界での一般的な魔法使いと呼ばれる人間は、大抵の場合修得できる属性の数は普通であれば一つ、多くて二つ、秀才と呼ばれる人間であれば三つの属性を所持しているというのが一般的だ。

 にもかかわらず、秋雨はさも当たり前のように八つの属性を全て修得してしまったのだ。



 しかも修得に掛かった時間は、1時間という短さでこの世界の魔法使いが聞けば、卒倒してもおかしくないほどに脅威的な早さだった。

 この世界のみならず、魔法を行使するうえで重要となってくるのは“イメージ力”すなわち頭の中で魔法の現象を想像する力だ。



 元々この世界にいる住人は、想像力に富んだ人材は一定数いるが、それでも魔法の才能が壁となり一定の水準を超える力ある魔法使いは少数だ。

 ところが、秋雨のいた世界はこの世界よりも沢山の物で溢れ、文明自体もかなり先を行っている。



 テレビや漫画、アニメやゲームなどと言った魔法という存在も空想のものとして描かれているものも数多く存在する。

 かく言う秋雨も小説という物を好み、特に異世界転生物が好きで今の自分の境遇と同じ背景で描かれた物語を頻繁に愛読していた。



 そんな彼が頭の中で魔法という物のイメージを膨らませるのに苦労するわけもなく、それ故に秋雨が全ての属性をこの短時間で習得できた事はこの世界の価値観で言えばあり得ないが、彼のいた環境を鑑みれば必然と言えた。



 そこにこの異世界に来るきっかけとなった女神であるサファロデが与えた加護により、魔法の才能も申し分なく、益々以って秋雨がすべての属性を修得する可能性に拍車を掛けたのだった。



「でも待てよ、鑑定先生の結果では優秀な人間でも三つの属性しか覚えられないという事だったが、すべての属性を覚えられた俺は、やはり化け物と言って差支えないんだろうな」



 だがしかし、並みの異世界転生物の主人公であれば自分の能力の異常性に気が付かず、他の人間に指摘されて初めてその異常さに気付くところだが、秋雨と彼らの違いは異世界転生の予備知識があるかないかの違いだけだ。



 たったそれだけの事ではあるものの、そのアドバンテージが今後の異世界生活で大きく左右するのは想像に難くない。

 自身の異常性を理解したうえで行動するのと、理解しないままで他人にイレギュラーな存在として周知されるリスクを回避できるのとではその差に大きな違いが生じるだろう。



 それにより秋雨本人が警戒している“面倒事を押し付けられる”という事も無くなるため、彼が自分の異常性に気付くのは必然なことであった。



「とりあえず、冒険者登録するときに使える魔法の数は二つに留めた方がいいかもしれないな。でも鑑定の道具とかで見られたら一発でバレるけどな。鑑定の結果を誤魔化すスキルが欲しいところだ」



 冒険者登録をする際に起こり得る可能性と、それに関する対策を考えていると不意に部屋のドアが三回ノックされる音が聞こえてきた。 

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