異世界転生したけれど直ぐに死にました。けれど魔王に転生したけれど──!?
円城めいろ
プロローグ
真っ白な部屋。ベッドの横にある小さな円卓には色鮮やかな花を生けてある。何て言う名の花であろうか。あまり好きな花ではない。
僕は横になったままで、目だけを動かして窓の外を見た。
青い空。それは絵に描いたような美しさだった。
目蓋は重く、体も重い。怠くて怠くて仕方がない。いつものように、僕は目を閉じる。それからややあって、少しだけ周りが騒がしく感じたけれど目を開けるのも億劫で、そのまま僕は眠った。
◯
──眠りから覚める。
気がつくとそこは戦場であった。闇夜の空はどんよりと雲に覆われていたが、橙色に明るかった。周りにある木々や家々は燃え崩壊し、足の踏み場もないほどに死体と瓦礫が転がり、鼻の奥を劈くような異臭が立ち込めていた。転がる者は軍服を着た者とそうでない者がいる。
「何をぼけっとしてやがる!」
怒号が背中に突き刺さる。振り返れば、そこには一人の女性がいた。軍用コート──黒いトレンチコート──を着た、見れば感じる気高さのある凛とした絶生の美女である。制帽を脱ぎこちらを金色の双眸で見つめる。
「お前一人だけか」
見回してみると、周りに立つものは他にいなかった。
美女は只今ここが戦場であるにもかかわらず、見たことがない顔だなと目の前の男を見つめ思う。しかし、同じ制服を着ているから自分の指揮する隊の一員であることは間違いないだろうと思う。
「こちらばかりを見てどうする。敵は向こうだぞ」
僕は美女の視線を追った。
そこには一人の青年の姿があった。ポーカーフェイスでこちらを見やっているのは、美青年である。頬には血が付着しているが、一体全体どう言うことか。僕は誰を敵にしているのか。その答えは直ぐに分かることだった。
「残るは貴様一人だけだな」
その声は怒りに満ちていたけれど、何処か余裕のあるものだった。
「……………」
美青年はただこちらを依然とポーカーフェイスで見やる。
なるほど、敵はあの美青年であるか。あの美青年がこれだけの大量虐殺を?見たところ武器なる物は持っていないが。美女は腰に携えた異様な形──ファンタジー小説に出て来そうな形──をした剣を引き抜き、剣先を美青年へと向ける。
「来い美青年野郎!」
なるほど、やはり美女からしても美青年と映るか。場違いなことを思った瞬間に美青年は跳躍しこちらに向かってくる。美青年の立っていた地面は砕けひび割れる。
それから一瞬のことだった。眼前に美青年が一杯に映った時、刹那に首元に痛みが走った。けれど直ぐにそれは感じ無くなって──何もなくなった。視界も思考も音も何もかも。
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