其丿拾參『無題』
あれは巨大な暗黒星
天の底から降り注ぐ
細い細い細い槍
逃げろ逃げろ、みな逃げろ
線になってしまう前に
黒光りする雲は
四方八方にいかづちを撒き散らし
天を砕き地を砕き
人間社会も砕き
すべてを壊してなお
冷めやらぬ神の怒りを打ち鳴らし続ける
波濤は高く跳ね上がり
コンクリートの底の底
心の泉
唸る狼
燃える蝋燭
深海魚
魚たちは何も知らない
彼らには彼らの闇があり
彼らには闇が日常なのだ
だから何も感じず、何にも関せず
ただ静かに遊弋している
人々は必要なかったのだ
はじめからこうなるさだめならば
人類は必要なかったのだ
ただ勝手に生まれ
ただ勝手に殖え
ただ勝手に滅ぶ
自然は干渉しない
ただやるべきことをやるだけ
やるべきことをやっただけ
悲観に暮れる人間は
涙を潮水と混ぜて
ふるさとへ還っていくのか
人よ安らかに
もう二度と孵るな
この惨憺たる文明の洗い流しまでもを
自然は当たり前のように行う
なんという深さ
その深さには
忘れ去られた種のすべてなど遠く及ばない
そして、
これらすべて
一部始終を、
海はただ深く沈黙して眺めるだけに終わる
最初からはじめもなく、
最後までおわりもなく、
ただの些細なひとつの現象として
また海はその肌を眩しく煌めかせながら
いつもと変わらぬ時が流れ過ぎていくのだ
20201213
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