クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件【WEB版】

双葉鳴

一章あらすじ【WEB版】

①落ちこぼれ4人組

 俺、阿久津雄介とそのクラスメイトは高校入学から一週間もしないまだ顔と名前がようやく一致するかしないかの時期にグルストン王国へ勇者として召喚された。


 責任感の強いクラスメイトは元の世界への帰還を交渉し、一方でオタクのクラスメイトは「オレの時代キタ!」と喜び勇む。


 俺は一人元の世界へ残した母親の心配が優ったが、同時にこの世界に対する興味が優っていた。

 だって勇者様だぜ? それなりにアニメを履修していた俺にとってそこには輝ける未来が待っているはずだった。


 が、王様からの提案はどうにも様子がおかしい。

 本来勇者ならば他国を気にするより先にモンスターの脅威に震えるものだ。

 しかし王様は他国に召喚された勇者に勝って欲しい。

 その為に俺達を呼んだと言い出した。


 勇者大戦ていうの? に勝って欲しいんだとか。

 うちの王様、というかこの国がその勝負に負け続けていることから他国がどんな手段で来るのか気が気じゃないんだと。


 そんな訳で代表勇者の価値基準は高いステータスとそれを活かせるスキルを持つ『天性』を持つ者達だった。


 俺? 当然のように選抜されなかったよ。

 なんせこの国の子供の平均ステータスを下回る上に天性がよりによって『ガチャ』だもん。

 代価が何かも分かってねーし、押しても引いても何も出来ねぇ。こりゃ未来は真っ暗ですよと言わんばかりだ。


 そんな訳で俺たちのクラスは勇者大戦の選抜メンバーとそのサポートメンバー、補欠に分かれた。


 戦える選抜メンバーは10名。

 サポートメンバーは6名。

 補欠は4名。


 俺はもちろん補欠。

 他のメンバーは揃いも揃ってこの国から見ても微妙と呼ばれる『天性』だった。



「全く酷い話だよね、僕の天性が不遇だなんて」

「そう言うなよ薫。【商人】なんてすごいじゃんか。俺なんて【ガチャ】だぜ?」


 中学からの友人、冴島薫。

 見た目や背格好、声は女のようでありながらしっかり男。アレも大きい。

 そんなちぐはぐだからこそ、俺と同様に非モテ同盟に与している。

 俺としては高校デビューでその同盟から一抜けするつもりでいたのだが、見た目を垢抜けさせたって中身が伴わないんじゃ意味がないと知ったのは、出来る同級生三上泰明を知ってから。

 以来、非モテを継続中。

 良くも悪くもこいつが補欠に来てくれて不安の半分は拭えたと言っても良い。



「あなた達は能天気そうで何よりね。私は最悪の気分よ」


 そしてもう一人は生真面目さが具現化した三つ編み、おさげの文学少女。錦由乃さん。学級委員長に選ばれた事から一部から委員長のあだ名で呼ばれている、本の虫だ。



「まぁまぁ錦さん、そんなに落ち込まなくても良いじゃないですか。リラックス、リラックスですよ?」


 最後の一人はまるで天界から舞い降りた天女ような美貌と慈愛を併せ持つ我がクラス一の美少女杜若みゆり。

 ニコニコとした笑顔に見合わぬ凶悪な胸部に男子の視線は釘付けだ!

 が、別にエッチな雰囲気にならないのは彼女が清楚だから。

 何を間違って一般高校に入学してきたのか、彼女の出生はとても高貴で纏う雰囲気も委員長とはあまりにも違う。

 ただお金持ちってだけではない高貴オーラが彼女の最大の特徴だ。リラックスと言われたらリラックスせざるを得ない。彼女の笑顔にはそんな効果があった。


 そんな俺たちが、自発的に城の外に出ようとしたのはひとえに今の自分達の置かれた立場に居た堪れなくなったから。


 補欠、とはレギュラーに選ばれず、サポーターとして国の役に立たない落ちこぼれ。やれることと言ったらクラスメイトのご機嫌取りくらい。

 そんな自分に嫌気がさした。


 せっかくのファンタジー、なのに頼りにならない己。

 気がつけば俺たちは示し合わせたように集まって、城下町へと繰り出した。


 せめて土産話の一つでもと、軽い気持ちでいた。

 雑踏に紛れて子供の鳴き声が響いた時、俺の体は動かなかった。


 迷子だ。

 その子との出会いが、ないない尽くしの俺たちの救いの一手となった。

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