第31話、俺は帰ってくる
俺の中で、エリスはやっぱり特別な存在だった。
オネエがエリスを連れて行ったとき、あの時から胸の中に燻っていた気持ち。
倍ほども歳が離れているにもかかわらず、抱いてしまった心はもう誤魔化せなかった。
「エリス、ずっとそばにいてほしい」
「いいの?」
「ああ、お前が好きなんだ。
もう、自分の気持に嘘はつけない」
「だったら、あの時そう言ってくれれば……」
「言い出せなかったんだ……ごめん」
「私もおじさんのことが好き。
誰かのソバにいることがこんなに安心できるなんて思わなかった」
俺たちは長いキスをした。
だが、いずれ俺は帰ることになる。
ここに残ることは可能なのだろうか……
そんな不安を誤魔化すように、俺たちは何度も求めあった。
そんな矢先、魔王復活の噂が飛び交うようになった。
俺はゼータに確認してみた。
「ゼータは、俺が自分の世界に帰るって知ってるよな」
「はい。存じ上げております」
「俺の世界に、エリスを連れていくことは可能だろうか」
「正直に申し上げて、それは不可能です」
「俺が帰ると、この家はどうなる」
「私が戻った時点で、機能停止いたします」
「エリスがこの家を使うことはできないのか」
「そうなります」
「何かエリスを保護する方法はないのか」
「私とエリス様が戻らないという選択肢はありますが、私は日中活動ができません」
「そうか……」
俺は悩んだ末に、エリスに打ち明けることにした。
「エリス、俺は魔王を倒さなければならないんだ」
「……この家も、そのためのもの?」
「そうだ。
俺や、この家を作ってきた先人たちは、こことは違う世界の住人なんだ」
「この家の不思議なものは、おじさんの世界から持ってきたものなの」
「そういうことだ」
「魔王を放っておいたらどうなるの?」
「世界に魔物が溢れて、結局対決することになるらしい」
「また、戻ってこられるの?」
「ああ、絶対に戻ってくる。
だが、俺がいなくなると、この家は元の状態に戻ってしまうらしい」
「私は……」
「俺がいない間は、シルビアと一緒にいてくれないか。
別に家を買ってもいいんだが、オネエのこともあるしな」
「わかった……」
もし、子供ができたらどうなるんだろうか。
俺の子供は、この家を使えるんじゃないのか……
だが、それは未だかつて誰も試していない。
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