第23話、おっさんはドラゴンと遭遇した

 屋敷に帰って資料を確認すると、魔道具を作るには魔石というものが必要らしい。

魔石というのは、ドラゴンがため込んだ魔力が体内で結晶化したものだという。


「大変だ、魔導銃を作るには魔石っていうのが必要で、魔石はドラゴンの体内で作られるらしいぞ」


「ドラゴンですか。まあ、あれだけの威力ですからその程度は必要なんでしょうね」


「シルビア、わかってくれたか」


「ええ。今の私たちならドラゴンの3匹程度いけますわよね」


「ええ、大丈夫だと思いますよ」


「おい、オネエは反対だよな」


「行くしかありませんね」


 ダメだ。みんなすっかりその気になっちまってるよ……


「主よ、任せるがよい」


 ゼータ、お前もかい……



 だが、ドラゴンの討伐依頼など、そうそうあるものではない。

しばらくは大丈夫だろう……そう思ってたよ、さっきまでは……

なんだってこんなタイミングで出てくんだよ……


「西のダンジョン近くですね。

距離的にも手頃ですよ」


「はいはい、わかりましたよ」


 こうして、俺たちはドラゴン討伐を受注した。

馬車で揺られること10時間。俺たちは何事もなくドラゴンの目撃地点に到着した。


「さて、目撃地点っていっても、いつまでもいるとは限らないよな」


「おじさん、あそこにデーンと居座ってるのが見えないの?」


「オネエ、目に見えるものだけが真実とは限らないのだよ」


「何で顔をそむけるんですか」


「シルビア……夕べ寝違えたらしくてな……」


『人の子よ、何しに来た』


「えっ?」


「どうしたのおじさん?」


『己に話して居る』


「まさか……」


『我に何の用だ』


「話ができるのか?」


『この通りだ』


「おじさん、どうしたっていうの?」


「ちょっと待ってくれ。今、ドラゴンと話してるんだ」


「「「えっ!」」」


「お前はなぜそこにいるんだ」


『ちょっとしたアクシデントだ。

急に産気づいてしまったのでな』


「産気って卵を抱いてるのか」


『そうだ、あと20日の間は離れられぬ』


「だが、その姿を人に見られてしまったんだぞ。

俺たちが引き上げても、お前を狩りに何人もやってくるだろう」


『平素であれば、人間など相手にならぬものを……』


「卵は動かせないのか」


『岩場にはまってしまってな、動かせる状態ではないのだよ』


「ちょっと見せてみろ」


『おかしな真似をしたらどうなるか分かっておるのだろうな』


「ああ、俺だけで見に行く」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る