第8話、オークが好きなんですね

「すみません、これの受注をお願いします」


「またオークですか、好きですね」


「いえ、遠い場所のオークしか残っていないもので」


「はい。頑張ってください」



臭いを消すには炭だったよな。

俺は銀貨1枚で大量の炭を買い入れ、カバンにしまった。


概ね3日に一度、オーク討伐を2件受注し、肉は宿に卸す。

こうして、毎日金貨1枚の収益をあげる。


たしか、500円硬貨程の金貨で、日本では5万円くらいになるので、結構いい稼ぎだと思う。


こうして俺は、Cクラスの冒険者になっていた。

そして、なんとバッグもクラスアップしたようなのだ。

多分、時間経過が止まったのではないかと思う。

念のため、暖かい串焼きを包んでバッグに入れ、翌日取り出してみた。

間違いない、暖かいままだった。


「おお、マイバッグよ」と頬ずりしたのだが、なんだか嫌がられているような気がした。


何しろ、破壊不能の特別効果があるのだ。

例えばオークの一撃を受けてしまっても、バッグで受けることで相当の衝撃を緩和できる。


「おっさん、景気よさそうじゃんか」


ギルドの2階でエールを飲んでいた俺に、話しかけてきたのは最初のころパーティー勧誘のお誘いをうけた少年たちだ。


「まあな。

そっちはどうなんだ」


「全員Cクラスまで上がったぜ」


「じゃ、同じだな」


「おっさんもCかよ」


「ソロだから、ポイントの貯まるのは早いんだよ」


「パーティーなら、ワンランク上の依頼を受注できるんだぜ。

今、オーガの討伐を狙ってんだけど、おっさんも入らねえか」


「Bクラスの依頼だな。

火力は足りてんのかよ」


「ギリだけどな。

それより問題は、あの巨体をどうやって持って帰るかなんだよ」


「なるほど、それで収納持ちの俺んとこに来たってわけか」


「報酬は人数分で折半だ」


「いつやるんだ?」


「おっさんの都合が良ければ、明日にでも受注するぜ」


「オッケー。明日、下にくればいいんだな」


「ああ、じゃそういうことで」


オーガというのは、3mほどの大きさの鬼である。

凶暴で、廃墟や地下に住んでいるが、知性はあまりないので比較的討伐しやすいという。

明日は休みのつもりでエールを飲んでいたのだが、予定変更だ。

俺はエールを飲み干し、宿に向かった。


翌朝、ギルドへ行くと彼らも集合していた。


「あら、助っ人ってこのお兄さんなの」


「ああ、ポーターの田吾作だ。よろしくな」


「俺はエース、順番に探索者のチビ、盾役のノッポ、回復薬のオネエだ」


「「「よろしく」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る