第2話、おっさんは罠にはまった
「もしかして、あんた迷い人かい?」
「迷い人?」
「違う国から迷い込んだ人のことだよ。
えっと……、これだ。
生まれた国の名前は?」
「日本だけど」
「その国の首都は?」
「東京だよ」
「そこを囲む関東地方の県は?」
「えっと、神奈川・千葉・茨城・埼玉と、群馬と栃木も入るのかな」
「受け取った本のタイトルは?」
「えっと、『閉ざされたダンジョン』……
じゃない、『開かずのダンジョン』だ」
「いいでしょう。
先代の迷い人さんから引継ぎがありますので、受け取ってください」
「先代?」
「何年かおきに迷い人は現れます。
詳しくは手紙を読んでくれ、だそうです。
じゃ、お渡ししましたんで」
「えっと、明日の朝までここにいてもいいのかな」
「ギルドは、何かあった時のために常時開いてます。
ご自由にどうぞ」
おれは、カウンターのお嬢さんから大きな袋を受け取った。
それをもってフロアの脇にあるベンチに座る。
袋の中には冒険者風の衣装や革の胸当て、短剣やバンダナなどと一緒に手紙と銀色の貨幣が数枚入っていた。
手紙は確かに先代とよべる人からのものだった。
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同郷の迷い人へ
騙されてこんな世界に迷い込んだこと、お悔み申し上げる。
俺も、居酒屋で知り合った男に騙されてここに来た。
最初は知り合いだったように思えたんだが、よくよく考えてみたら初対面だった。
男から受け取った本を読んでみれば、納得できると思う。
誰かに押し付けないと、何年か先にこの世界に引き戻されるからだ。
だから、悪く思わないでほしい。
ともかく、魔王を倒せば一旦帰ることができる。
それは確かだ、俺は2回目だから……
ともかく、魔王を倒して東京に帰り、誰かに本を押し付けろ。
そうすれば元の生活に戻れる……はずだ。
金貨は換金して次の生活の元手にするので、銀貨を何枚か入れておく。
これで、宿屋に泊まれるはずだ。
さしあたって、冒険者登録して仲間を探し、魔王討伐に迎え。
もう一つ、誰も信用するな。
裏切られるだけだ。
以上
P.S本当にすまなかった
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なんだこれ……
この手紙の主は、友人Bってことだよな。
俺はカバンの中をまさぐって本を取り出した。
『閉ざされたダンジョン』いや、”開かずの”だ……
燃やしてやろうかと思ったがやめて、煙草に火をつける。
「臭いので外へ行ってください」
「……」
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