第2話、おっさんは罠にはまった

「もしかして、あんた迷い人かい?」


「迷い人?」


「違う国から迷い込んだ人のことだよ。

えっと……、これだ。

生まれた国の名前は?」


「日本だけど」


「その国の首都は?」


「東京だよ」


「そこを囲む関東地方の県は?」


「えっと、神奈川・千葉・茨城・埼玉と、群馬と栃木も入るのかな」


「受け取った本のタイトルは?」


「えっと、『閉ざされたダンジョン』……

じゃない、『開かずのダンジョン』だ」


「いいでしょう。

先代の迷い人さんから引継ぎがありますので、受け取ってください」


「先代?」


「何年かおきに迷い人は現れます。

詳しくは手紙を読んでくれ、だそうです。

じゃ、お渡ししましたんで」


「えっと、明日の朝までここにいてもいいのかな」


「ギルドは、何かあった時のために常時開いてます。

ご自由にどうぞ」


おれは、カウンターのお嬢さんから大きな袋を受け取った。


それをもってフロアの脇にあるベンチに座る。

袋の中には冒険者風の衣装や革の胸当て、短剣やバンダナなどと一緒に手紙と銀色の貨幣が数枚入っていた。


手紙は確かに先代とよべる人からのものだった。


**********************


同郷の迷い人へ


騙されてこんな世界に迷い込んだこと、お悔み申し上げる。

俺も、居酒屋で知り合った男に騙されてここに来た。

最初は知り合いだったように思えたんだが、よくよく考えてみたら初対面だった。

男から受け取った本を読んでみれば、納得できると思う。

誰かに押し付けないと、何年か先にこの世界に引き戻されるからだ。

だから、悪く思わないでほしい。

ともかく、魔王を倒せば一旦帰ることができる。

それは確かだ、俺は2回目だから……


ともかく、魔王を倒して東京に帰り、誰かに本を押し付けろ。

そうすれば元の生活に戻れる……はずだ。

金貨は換金して次の生活の元手にするので、銀貨を何枚か入れておく。

これで、宿屋に泊まれるはずだ。


さしあたって、冒険者登録して仲間を探し、魔王討伐に迎え。


もう一つ、誰も信用するな。

裏切られるだけだ。


以上


P.S本当にすまなかった


************************


なんだこれ……

この手紙の主は、友人Bってことだよな。


俺はカバンの中をまさぐって本を取り出した。


『閉ざされたダンジョン』いや、”開かずの”だ……


燃やしてやろうかと思ったがやめて、煙草に火をつける。


「臭いので外へ行ってください」


「……」

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