#急募 京乃心音を止めてくれぇぇ!
奇瀧 ナシノ
第1話 昨日の出会いは何なんだ?(プロローグって書いた方が正しいかもしれない)
桜舞い散るある春の暖かい日。4月、それは沢山の人々が新たな出会いや環境、生活に胸踊らせる季節だと、少なくとも僕は思っている。朝のまぶしい位の日光に起こされて、タンスの上に乱雑に積まれた服の中から、体操服を引っ張りだし、袖を通す。跳ねている前髪も気にせずに、机の上に置いていた、野口さん一人しか入ってなかった気がする財布だけが入った補助バックを手に取り、スニーカーに適当に足を突っ込み家を出た。このときは思いもしなかった。最高の日になるはずだったこの日が、災厄の日になったのだから。(文字通り)
今日は4月11日。春休みの最終日だ。明日からは高校2年生になるらしい。が、僕には関係のない話だ。毎年この日は、課題に追われるか、溜まったアニメを消化するかのどちらかだったが、今年はこうして外を歩いている。
どうしてか......と、誰に向かって話しているのか分からない解説をしているうちに、目的の場所にたどり着いた。我らが県立西高等学校。通称西コーである。
グラウンドからは運動部の熱っ苦しい叫び声が聞こえてくる。正門をくぐり、真っ直ぐ歩く。とりあえず西コーについて説明しておくと正門をくぐり真っ直ぐ進むと校舎、左側に体育館とプール、右側にグラウンドというなんとも分かりやすい造りになっている。とか言っている間に、校舎の下足室にたどり着いてしまった。
1年2組の靴箱の空いている所に適当に靴を放り込む。が、補助バックのファスナーを開け、中に投げ込む。手に靴を持っては先生に怪しまれていたと思うので、補助バックを持ってきてよかったと初めて思った。
なぜ運動部でもないのに体操服を来てきたかというと理由は2つある。一つ目は、
「あら、晴喜田さん、部活活動か何か?ひさしぶりねぇ」
靴を補助バックに入れ、階段を上っていると、上から降りてきた神なんとか先生......名札に書いているのであっているのだろうが神なんとかもとい神田先生に声をかけられた。
「お久しぶりです、かmi...んだ先生。少し部室の掃除に」
「あらそう、頑張ってね」
そういって神田先生は階段を下りて校長室へと入っていった。これが一つ目の理由、体操服だと先生に遭遇しても、部活動で通すことができる。なぜなら僕は去年の4月から1年間、まともに学校に出てきていないからである。単位稼ぎの補修位でしか、学校に来た覚えはない。
そうこうしている間に、目的の4階へとたどり着いた。この学校は、1階が職員室や図書室、給食運搬室など、2階が一年生、3階が二年生、4階が三年生で、2、3、4階に、それぞれ特別教室を振り分けているらしい。本当は屋上に行きたかったが、アニメのように簡単に入れるわけもなく、仕方なく4階に留まった。そのまま、人が居ないであろう技術室に足を運ぶ。4階には、もう二つ、特別教室として美術室と理科室があるが、万が一部活があれば困るので、工作部などないだろうという考えで技術室を選んだ。
案の定、技術室に人はいなかった。真っ直ぐ奥まで進み、窓の鍵を開け、窓を開け放つ。そのまま頭の方から窓から体を乗り出す。
体操服を来てきた二つ目の理由。それは小さな窓からでも体を乗り出しやすいんじゃないかと思ったからだ。思った通り、小さな窓だったが、体はするりと通った。
ここまでくればさすがに馬鹿でも分かると思うが、今日、僕、
外から見られるかもという心配はあったが、あいにくこちら側はグラウンド側ではないので、下に人はいなかった。
さて、ようやく面倒くさい説明も終わってようやく死ねる...
そう思い、足を床から離そうとした時だった。
「ねぇ、今から一緒に遊園地にでも行かない?」
後ろからそう声をかけられた。驚いて振り替えると、そこには見たこともない(学校に行っていないので当たり前だが)女生徒?がたっていた。なぜ?をつけたかというと、制服でも、体操服でもなく、私服を着ていたからだ。
急いで体を戻し、彼女の方を見た。
「ねぇ、どぉ?はるきたくん......?あれっ、はるきたって今の季節に凄くいい名前だね。春が来たぁーって」
少し口角が緩んでしまった。
「あれ、春来たくん笑ってる?笑ってるのー?高校生たるもの、人生には笑いがなくちゃぁねぇー」
「笑ってない、それに僕の名前はハルキタ......ではなくハルキダだ。ってゆうかどこで僕の名前を知った?」
「だってそこ、胸元に書いてるじゃぁーん。『はるきt...はるきだ』って」
「あっ......」
今になって気づいた。きっと自殺直前に場違いな言葉を投げかけられたことで、頭がパニックを起こしたのだろう。いや、そう思いたい。
「君はどうしてこんなところに?いや、まず僕が何をしているか分かっていて、尚その質問をしたのか?」
「うーんと......角オn...」
「そのワードを女子が口に出すな!まずそれなら窓枠よりもこの教室に沢山ある机の方を使うだろうが!落ちるかどうかの境目でそんなことするかぁー!」
「あぁ、確かにそうだねー」
「え、?」
彼女の言葉で我にかえる。また何か言わなくていいことを大声でいってしまったような気がする。内容は覚えていないが、とても恥ずかしくなり、話題を変えようと思った。
「それで、さっきの発言はどういう意味なんだ?」
「ほへっ?」
「さっきの遊園地に行こうってやつだよ」
「あぁ、それかぁ。そのまんまの意味だよー。暇だしどこか行きたいなぁって思って、頭に浮かんだのが遊園地だったからはいドォーン!みたいな?」
僕はこの女に呆れさえ覚えた。
「お前は本当に何を言って...」
「見つけましたよ
第三者の介入にそちらを見る。
「かmんだ先生!?」
技術室のドアに神田先生が腕を組んで立っていた。
「あれっ、晴喜田さん?どうしてここに?ってそれよりも京乃さん!トイレとか言って、校長室を抜け出してどこにいっているのかと思えば!親御さんも探してるんですから早く戻ってらっしゃい!」
「ちぇっ、じゃあはるきだくんっ。遊園地はまた今度ねっ。ばいばーいっ。それとそんな暗い顔じゃなくて笑うのだっ。笑顔で人を助けられるような人になるんだぞっ。」
「は......?」
そういって彼女...京乃さんは、神田先生の方へと歩いて行った。がこちらを振り向いて、
「それと明日、きちんと学校に来るようにっ、来なかったらさっきの、先生たちに言いふらすからねっ。せっかくの人生なんだから、止まるんじゃねぇぞー。明日までちゃんと生きててよー」
そう言い残し、身を翻して技術室から出ていった。
「......なんのこと?まぁいいわ。またね、晴喜田さん」
神田先生は首をかしげていたが、やがて京乃さんに続いて技術室から出ていった。
しかし僕はしばらくその場から動けずにいた。やっぱり、あのアホ女は分かっていた。そしてそれを先生にばらすとそう言った。今日、死ぬのを邪魔された位で生きようとは思っていないが、少なくとも、明日は学校に来なければいけなくなってしまった。このまま、窓から落ちることもできたが、僕にはそれをすることはできなかった。そうする気力すらも残っていなかった。聞いたことのあるセリフを彼女は口に出したが、これがこの腐った心に響くはずもな く......その前の『せっかくの人生』という言葉に相当腹が立っていた......。
このときの僕は知らない。彼女が、僕の終わらせるはずだった人生の......災厄になるなどとは......
そして次の日、地獄を見る......
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