第39話 変態◯面!?


 被害にあったお姉さんに、魔法幼女が呪文をかける。


「ふにゃふにゃぽーぽ!」


 やっぱり魔法幼女は唱える呪文も魔法少女のものと同じだ。

 本当にこの小さい魔法幼女は何者なのだろうか……


「まったく、勝手に魔法少女のバッジを持っていくなんて……危ないでしょう?」

「だって……ママがせっかくパパとおデートしてるのに、邪魔しちゃいけないと思って」

「だからって……危ないじゃない」


 あーそうか、魔法少女の子供か。

 なーんだ……————って、え?


 ママ???

 パパ???

 おデート???


「そうだぜぃ! いくらお前が未来から来た魔法幼女だとしても、勝手に魔法少女のバッチを使っちゃいけないんだぜぃ!!」


 いつ現れたのかブルータスもいて、守夜美月と一緒に魔法幼女を叱っている。


 いやいや、いろいろツッコミどころがあるんだけど……!?


「ところで、ファン様は来ていないのかしら? 狐さん、ファン様を見ませんでしたか? 仮面舞踏会マスカレードの仮面とマントをつけた、とっても素敵な方なんですけど……」

「えっ!? いや……」


 守夜美月は普通に何者かわからない俺に近づきながら、そう聞いてきた。

 狐のお面と祭りの法被のおかげで、俺がファン様だということはやっぱり気づかれていないようだ。



「ダメよママ!! そんな変態に近づいちゃ!! あのお姉さんのお胸も、私のお尻にも触ったのよ!?」

「な……なんですって!?」


 いや、それはどっちも助けるためだろうが!!


 そうツッコミたかったが、声を出したら俺だってバレそうだった。


「変態なんだぜぃ!! 変態お面なんだぜぃ!!」

「私の娘になんてことを!!」

「こんな変態が、パパの居場所なんて知っているはずないわ!!」


 待って!

 それ話からして、ファン様がパパだよね!?

 ってことは、俺がパパだよね!?

 パパが変態お面って事になっちゃってるけど!?


「ママ、電話してみたら? スマホとかなんとかっていうのがあるんでしょ? この時代には」

「そうね……」


 守夜美月はバッグからスマホを取りだした。


 やばいやばいやばい!!

 よくわからないけど、未来の自分の娘に父親が変態お面だなんて思われたくない!!!


「あ、ちょっと、変態お面!! どこにいくのよ!! まだあなたに顔を忘れる呪文かけてないのに!!」


 変態お面って呼ばないで!!!


 俺はダッシュでその場から逃げた。

 できるだけ遠くへ。


 案の定、守夜美月からの電話が来た。


 息を切らしながら、なんとか神社の裏に隠れて電話に出る。


「もしもし……」

『あ、メースケくん? 今どこにいますか?』

「えーと……その、さっきのパニックで押し流されちゃって……」

『あぁ、そうですよね。たくさん人がいましたし……怪人のせいで————あ……』



 その時、ドンと大きな音が鳴って、すっかり暗くなった夜空に花火が開いた。

 何発も、何発も、綺麗な円を描く花火が夜空を彩る。

 打ち上げの時間になったようだ。


 あぁ……二人で見るはずだった花火が……

 守夜美月と一緒に見るはずだった花火が……

 花火が上がったら、いいところで手を繋いでもう一度————


「キスしたかったのに……」

『え……?』


 はっ!

 しまった!!

 つい口に出してしまった!!


「あ、いや……! その……!!」

『……私もです』


 ななななななななんんなあああああ!!!!

 くそおおおおおおおおおgれほあえじftjfぎjkgrこhjgざrあ



「ねぇ、何あの人……」

「変な動き……変質者かな?」

「キッモっ……!!」


 たまたま近くに居合わせたらしい中学生の集団が、身悶えている俺を見て、そう言った。


 この後、数日の間神社の裏に変態の狐のお面男が現れると噂になったのは、また別の話だ。

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