徘徊

何気ない秋の終わりには

小さいジェットコースターのように

きゅっと心臓を掴む風が吹く

何か羽織った方がよいかなど、迷いもせず夜へ繰り出したが

もうそんな季節だったかと気づかされる


顔だけは知っているおじさんが歩いてくる

特に頭を下げたりはしない

向こうが私を認識しているのかも知らない

知らないおじさんが歩いていく


近所で一番明るい交差点で止まる

みんな意味が無いと思っている長い信号がある

いつでも携帯電話を見ている人がいる

もっと暇なときに私は全部ロボットだったらと心配をする


何か足りていない気がしてコンビニに入る

すごく欲しいものはないところだ

よく考えると私は買い与えられるべき人ではないので

新作のスイーツだけ覚えて店を出る


悔しくてたまらず他の明るいところへ行こうか悩む

けれどこの町は曲がり角が多過ぎて

せめて猫が見たいと園児のような冒険をして

最後はもう自分を許すしかなくなってしまう


優しい人がいたのです

優しいときがあったのです


嗚呼、優しくなりたいと

凍えぬように歌いながら

明かりをつけたままの家へと帰る

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る