2話 屋敷の主

 しばらく移動した後、ゆっくりと馬車が停まるどうやら目的地に到着したようだった。

馬車から降りるとそこには白亜の大きな屋敷の前だった。

 庭園や噴水なども豪華でどこかの貴族の家だろう、私の家も富豪というのもあり豪華な家だったがこの屋敷は段違いに大きく立派だった。


「わぁ・・・・・・すごく立派な屋敷ね!」


「そうだろ? まぁ住んでいる主を聞いたらすぐ納得すると思うぜ・・・・・・あーうん・・・・・・入ろうか!」


 アイニの様子がおかしいと感じ何気なく見てみると頭に乗っているカエルがぴょんぴょんと跳ねているではないか、もしかして早く行けと急かしているのだろうか?

 そう思いながら一緒に屋敷の入り口まで向かう、ちょうど前に立った瞬間ドアが開く

屋敷の中から初老の男が出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、アイニ様」


「わっ!? アガレスさん!? うっ・・・・・・ただいま帰りました遅くなりすいません」


 私はてっきり執事の方かと思ったのだがどうやら違うようだ、先程の言動的に目上の方なのだろう、アイニは慌てながら最終的にまたしょんぼりと耳が垂れた。

 それを見たアガレスと呼ばれた男は分かればよろしいと言いながらくすりと笑うと私と目が合う、私も慌ててお辞儀をした。


「初めまして、アリスと申します!」


「はい、初めまして可愛らしいお嬢さん、私はアガレスと申します。 さぁどうぞ主様もお待ちかねですよ」


 アガレスはにっこりと笑いお辞儀をすると私とアイニは屋敷の中に入って行った。

 まず先に、屋敷の主に挨拶をする度に案内されつつ私は周りを見渡す、屋敷の中も大きく私の住んでいた家よりも装飾品や家具も豪勢に感じる。

 何処となく私のいた世界の貴族や王族のような雰囲気がある、違うとしたら灯のランプなどが浮いていたりすれ違う悪魔であろう執事やメイドが魔法を使って掃除をしていたくらいだろう、その不思議な光景を私は目を輝かせながら見ているとそれをみていたアイニがニコニコ笑っている。

 どうやら私が楽しそうにしているのが嬉しいようである、ふと彼の頭を見るとあの黒いカエルがいなかった。


「アイニ、カエルは何処にいったの?」


「ん? あぁちょっと前に住処に飛んでいったよ、まぁそのうち会えるから心配しないで」


 いつの間に飛んでいってしまったのかと不思議に思いながら、また会えるのならいいかと切り替えつつ私達は一つの豪華な扉の前にたどり着いた。


「さぁ着きました、こちらに主様がおられます」


 アガレスがノックをしつつ扉の中にいるであろう主人に声をかける、私は服に乱れはないかと軽くチェックしつつ緊張しながら待った。

 しばらくすると入るがいいと中から男の人の声がする、アガレスが失礼しますと言いつつ扉を開け、私達は部屋に入った。

 中は広くおそらく執務室のような場所だろう目の前にはテーブルとソファ、窓や庭へ続く扉、そしてそれ以外に驚いたのは天井まで届く大きな本棚、私はあまりの大きさに驚いていると左側から声がかかってきた。


「随分と可愛らしいお嬢さんと契約したなアイニ」


「す、すみません! アリスと申します!」


 私はその声でハッとすると声の方を振り向き慌ててお辞儀をした。

 声の主は思ったより若く感じる、顔を恐る恐る見上げると執務机を挟んだ先に黒髪に角の生えた眉目秀麗な男性が目の前に座っていた。

 私が思わず見惚れていると隣からただならぬ気配を感じた、隣を見るとアイニが嫌そうな顔をしているどうしたのだろうかと思っていると男がフッと笑った。


「アイニ、嫉妬はいかんぞ彼女が驚いているだろう? まぁいいか、初めましてアリス私はこの屋敷の主、名前をバエルというよろしく頼む」


「よろしくお願いします」


 私は軽くお辞儀をするとふと先程の言葉で驚いたアイニが嫉妬をしていたと言っていたがそれは本当だろうか?気になりアイニの顔を見るとさらに嫌そうな不機嫌な顔をしている。


「もういいでしょ? バエルの旦那そういうので弄らないでいただけませんかね・・・・・・」


 嫌そうな顔をしながらアイニは答えた、バエルはそれもそうだなというと、私達二人にソファに座るようにと促してくれた。

 ソファに座るとアイニは私にバエルについて教えてくれた。

 彼はここの屋敷の主でアイニが大変お世話になっている方なのだという。


「入門の際は申し訳なかったねアリス、あぁいう奴らはたまに出てくるんだそういう奴らを弾くこともできるのだが、外交関係で色々問題になってしまって警備を厳しくするしか今はまだ出来ないなんだ。 怖い思いをさせて申し訳なかった。」


「いえ! アイニが助けてくれましたし、あの後すぐに兵士さんもきたのでほんと特にひどい目にはあってないので・・・・・・それにこの世界に来たいといったのは私ですし・・・・・・」


「そうか、ふむ、なるほど・・・・・・君はあの時私を見ても驚かなかったし中々肝が据わっているようだ」


「? あの時とは・・・・・・?」


 私は、感心して頷いているバエルに聞いてみるとバエルはきょとんとした顔を見せた。

 そしてあぁそうかと呟くと執務机の書類を少し動かして本を置く、すると机の下あたりからぴょこんと黒いカエルが飛び出したかと思うと本の上にちょこんと座った。

 こちらの方を振り向きケロケロと鳴き声をあげる、どう見ても、あの時あった黒いカエルで間違いない。


「あの黒いカエルは旦那の眷属なんだよアイツの目を通して俺らを見てたんだろうな」


「そうだったの!?」


「そうそう、そもそもこのツァーカブには沢山このカエルがいるんだ旦那の目となって警備や情報収集として利用されてんだよ」


 そんな重要な役割を持ったカエルだなんて思っても見なかったため、私は出会った時あの子に可愛いと癒されながらニコニコしていたのを思い出す。

 あの表情を見られていたかと思うと恥ずかしくなってきた。


「ううっ・・・・・・でもそんなすごい仕事をされてるってことはバエル様は重要な役職の方なんですね・・・・・・!」


 沢山のカエルでそんな仕事をしているんだきっと警備系の重要な役職の方なんだろう、王様がおられるのだからもしかして警備隊長とかそういう仕事をしている方なのだろうか?

 そう思っているとバエルはふと疑問を感じたようにアイニに行った。


「アイニ、私の本当の事を詳しく言っていないのか?」


「詳しく・・・・・・? ん? それってバエルの旦那が王様って言うこと? それとも他に・・・・・・」


「えっ!? 王様・・・・・・剣王様ってことですか!?」


 アイニがどの事だと悩んでいる顔をしていた横で、私は驚きの事実を知ってびっくりしてしまった。

 確かに、貴族のようだとは思ったがまさかの王様だとは、呆気に取られた顔をしている私を見たバエルははぁとため息を漏らすとアイニにを睨みつけた。


「アイニ貴様ちゃんと喋っていたなかったのだな・・・・・・」


 いっていない事に気がついたアイニは冷や汗を書きながら申し訳ないと謝りしょんぼりと耳が垂れる。

 バエルはどうやら説明をされている者だとばかりに思っていたようでこちらの悪魔が申し訳ないと謝ってくれた。


「すまない、改めて挨拶しようツァーカブの主、バエルという」


 大きなため息と共にバエルは私に再び挨拶する、アイニはしょんぼりしそしてドア付近にいたアガレスは笑いを堪えるのに必死な様子となんとも変な光景を私は体験した。












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