壊獣は世界崩壊の夢を見るか——幼なじみには願いを叶える力があるらしい
Yuki@召喚獣
プロローグ
世界が崩壊する音が聞こえた気がした。
全てが真っ白に塗りつぶされていって、あとは何も残らなかった。
誰かの願いでこうなった。願望だ。誰の願望だろう。
——俺? まさか。
小さい頃、母さんが死んだ。特撮や、ファンタジーやSFなんかが好きだった。
人と話すのが怖かった。バイクに乗って、旅をするのが好きだった。
気づけば、殺風景な教室に立っていた。高校の教室だ。乱雑に掲示物が貼られていて、それとは対照的に整然と机が並んでいる。
一人、少女が座っていた。それ以外誰もいない。
燃えるような赤い髪の少女は、高校の制服に身を包んでいた。
「アンタ、自分で気づいてないのね」
それから「本当にバカね」と呟いた。
場面が切り替わる。
幼い頃遊んだ覚えのある公園だった。
ぐちゃぐちゃに踏み潰されたように荒れ果てていて、酷く寂寥感を感じさせた。
そこにもまた、赤毛の少女がいた。
「夢は所詮夢。いつかは目覚める。目覚めなきゃいけない」
零したのは、俺か少女か。
遠くに、巨大な人影が見えた。
そして、気づけばまた俺は別の場所に立っていた。
見覚えのあるそこは、俺たちが一番よく使っていた場所で--俺は唐突に首を絞められた。
少女の手でグッと絞められる。手の先を辿れば、先程の赤毛の少女がいて。
怒っているような、泣きそうな、寂しそうな、吐きそうな、なんて言うのか、俺の語彙力では正確に言い表すことができないけれど、強いて言うなら、そう--絶望しているような顔をしていて。
少女が首を絞めている手に力を込める。俺は苦しくて声を漏らした。
少女が俺の顔を見る。目と目が合って、少女が口を開いた。
「アンタがあたしのモノにならないなら--」
少女の目の淵から雫が一滴、こぼれ落ちた。
視界が滲んでいくのは苦しさからか、俺の目にも少女と同じものがあるのか。
「あたしはなにもいらない」
俺はそんなこともわからないまま、少女はその言葉を口にした。
赤や、白や、紫の花弁が散っていくのが見えて。
世界が崩壊する音が聞こえた気がした。
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