4-9. 暴走する殺意

 バシュン!


 発射音がして弾頭は目にも止まらない速度でレオに襲いかかった。

 直後、ズズーン! という大爆発が起こり、レオは爆炎の中に消えた……。


「イヤ――――っ!」

 脇の方の空間の裂け目から様子をうかがっていたオディーヌが、泣き叫ぶ。

 モウモウと上がる爆煙……。


「レオ――――っ!」

 静まり返った中門前の広場には、オディーヌの悲痛な叫び声がこだましていた。


 その直後、爆煙の中から何かが飛び出し、ヴィクトーたちを襲った。


 ビッシャァ!

「ぐわぁぁ!」「うひぃぃ!」

 盛大な水しぶきをあげながら兵士とヴィクターが吹き飛んだ。飛んできたのは巨大な水玉だったのだ。

 一体何があったのか分からない兵士たちに、次々と巨大水玉が襲いかかる。


 ビシャッ! ビシャッ! ビシャッ! ビシャッ! 


 高速に連射される水玉は次々と兵士たちを吹き飛ばす。

 ただの水ではあったが、高速な水玉の威力はすさまじく、大崩れとなった歩兵たちは次々と逃げだしていった。


 爆煙が晴れていくと、レオが手のひらを兵士たちに向けたまま立っていた。

 服はズタボロに焼け焦げ、髪の毛もチリチリだったが、身体は無事のようだった。


「ダメ! レオ! 逃げてー!!」

 その時、オディーヌが叫びながら駆けてくる。


「えっ!?」

 レオが振り返ると、背後の弓兵が弓を引き絞り、矢を放った。


「ダメ――――っ!」

 オディーヌが叫びながらレオに抱き着いた時、矢はオディーヌを貫いた……。


 ドスッ! と鈍い音を立てながら矢はオディーヌの背中から心臓を撃ち抜いたのだった。

「うわぁぁ!!」

 倒れる二人。そして、倒れたレオの上にオディーヌは覆いかぶさり、

 ゴフッ!

 と血を吐いた。

「オ、オディーヌ!?」

 叫ぶレオ。

 レオはオディーヌの身体を持ち上げ、オディーヌを貫く血だらけの矢を見つけ、

「いやぁぁ! オディーヌ!!」

 と、絶叫した。

 オディーヌは血だらけの震える手でレオの頬に触れると、涙でいっぱいの瞳で

「あなたと……、もっと……、いた……かった……」

 そう言ってガクッとこと切れた。

「オディーヌ! オディーヌ!」

 錯乱するレオ。

「ぐわぁぁぁ!」

 レオの絶叫が広場に響く。同時にレオの身体からはどす黒いオーラがブワッと湧き出した。オーラは城壁にすごい勢いで城門にぶち当たるとズン! という激しい衝撃音を放ちながら城門を破壊した。上にいた弓兵たちは崩落する城門から転げ落ち、逃げ出していく。

 するといきなり人影がどこからともなく現れて言った。

「我に見せるんじゃ!」

 レヴィアだった。

 レヴィアはオディーヌに手を当て、必死に治癒魔法をかけた。

 レオは涙をポタポタ落としながら、その様子をジッと見つめる。

 しかし、いつまで経ってもオディーヌの目は開かなかった。

「ぐぅ! ダメじゃ! 治癒妨害の毒を使っとる!」

 レヴィアはギュッと目を閉じて無念そうに言った。

 オディーヌは血まみれの服に包まれ、真っ白い顔でピクリとも動かない。

「えっ!? そんなぁ……、やだ……やだよぉ!!」

 レオはレヴィアの腕をつかんでゆらす。

「これ以上は我にも無理じゃ……」

 そう言って、レヴィアは首を振った。

「シアン……シアンならできるの?」

 レオが必死に聞く。

「もちろん、シアン様なら生き返らせられる……が……どうやってお願いするんじゃ?」

「田町へ行けばいいんでしょ? 僕、頼んでくるから転送して!」

「お主……気軽に言うが、奇跡のお願いのために星を渡らせるなんて重罪じゃ。我は捕まって牢屋行きなんじゃぞ……」

 レヴィアは泣きそうな顔で言う。

「大丈夫、シアンが何とかしてくれるよ!」

「無事シアン様に会えて、納得してくれたら……な」

「他に道は無いんでしょ!?」

 レヴィアは目をつぶり、大きく息をついて言った。

「そうじゃ、やるしかない……、やるしかないが……シアン様は根源なる威力オールマイティ、百万もの星の頂点に立つ宇宙最強の軍事力じゃ。もう別れて久しい。我らと一緒にいた時のシアン様……、あれは気まぐれのお姿じゃ。あの姿を期待してたら瞬殺されるかもしれんぞ」

「殺されてもいい、僕はオディーヌを生き返らせるんだ!」

 レオは涙をポロポロとこぼしながら叫んだ。

 レヴィアはゆっくりとうなずくと、

「分かった……。田町まで送ってやろう。お主のその覚悟で道を切り開くんじゃ」

 そう言って、レヴィアはレオの身なりを整えると、

「神殿で待っとるぞ、行ってこい!」

 そう言って両手をレオに向け、東京に転送させた。

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