1-16. 金髪のドラゴン

 すると、シアンが前に出て、

「やぁ、レヴィア、久しぶり。元気そうだね」

 と、ニコニコしながらドラゴンに声をかけた。

「ぬっ!」

 レヴィアと呼ばれたドラゴンは、シアンを見つめる。

「僕だよ」

 シアンはにこやかに言う。

 

 するとレヴィアは急に恐縮した声で、

「こ、これはシアン様! お呼びになられたのはシアン様でしたか! これは大変に失礼をいたしました……」

 そう言って目をつぶり、急いで頭を下げた。

「うんうん、ゴメンね、急に呼んじゃってね」

「いえいえ、いつでもどこでも呼んでくださって構いません! 光栄です!」

 レヴィアは必死に答える。

「ここの王様がね、レヴィアに会いたいんだって」

 そう言ってシアンは王様を紹介した。

 王様は恐る恐る前に出て、

「ここ、ニーザリの王をやっている者です。ドラゴン様にお会いできて光栄です」

 そう言ってうやうやしく頭を下げた。

「あ、ああ……。そう、王様……」

 レヴィアはちょっと事情がのみ込めない様子だった。

「実は王家の守り神としてドラゴン様に後ろ盾になって欲しくてですね……」

 王様は必死に営業する。

「あー、悪いが、我はどこかの国に肩入れする事はできんのじゃよ」

 レヴィアはそう言って首を振る。

「そ、そうですか……」

 残念がる王様。

 すると、オディーヌが駆け寄って言う。

「初めまして、私はこの国の王女です。私とお友達になって下さらないかしら?」

「と、友達?」

 レヴィアは困惑する。

 するとシアンはニコニコしながら言った。

「あ、それいいね! そうしよう! レヴィアとオディーヌは友達! 王様、いいでしょ?」

「わ、私はそれは喜ばしいことだと……思います」

 意図をつかみかねる王様は首を傾げつつ言った。

「で、お友達の所に研修に行くっていうのもいいよね?」

 シアンは畳みかける。

「け、研修!?」「へっ!?」

 王様とレヴィアは同時に驚く。

「そう、私、ニーザリ王国を代表してレヴィア様の所で研修したいんです! いいでしょ、お父様!」

 オディーヌはここぞとばかりに王様にプッシュした。

「え? お前、行きたいのか?」

 驚く王様。

「ぜひ、お許しください!」

 オディーヌは王様の手を取ってせがんだ。

「お、お前が行きたいなら……、いいが……」

「ありがとう! お父様!」

 そう言ってオディーヌは王様の頬にキスをした。


 レヴィアはシアンに小声で聞く。

「研修って、何をすればよろしいのでしょうか?」

「大丈夫、大丈夫。僕も付いて行くからね」

「えっ!? シアン様も!?」

 レヴィアの厳ついウロコの額に冷や汗が見えるようだった。

「ちょっと作戦練るからさ、君も人型になってよ」

 シアンがそう言うと、

「わかりました……」

 そう言って、ボン! という破裂音と共に女子中学生のような金髪おかっぱの女の子が現れた。サリーのようなアイボリーの布を身にまとった彼女は、

「よ、よろしくなのじゃ」

 と、可愛い声で照れながら言った。

 みんなそのあまりの容姿の変わりように絶句する。

「ね、可愛いでしょ?」

 シアンはそう言ってレオにウインクをした。

「なんだかギャップがすごいね……」

 レオは困惑しながらそう言った。


「じゃあ、レヴィア! 作戦会議やるから酒でも飲めるところ行こうよ!」

 シアンはニコニコしながらレヴィアに言う。

「え? どこ行くんですか?」

 金髪おかっぱの女の子はビビりながら聞く。

「僕この星知らないからさ、レヴィアの行きつけの店行こうよ!」

「えっ? 行きつけ……ですか……?」

「何? 何か困るの?」

 シアンが顔はにこやかなまま鋭い視線でにらむ。

「あ、いやいや、行きましょう! 王都にいい店があるんです!」

「じゃ、ヨロシク!」

 シアンはそう言ってレヴィアの背中をバンバンと叩いた。

 レヴィアは苦笑いを浮かべながら、指先を空中でシュッと一直線に動かす。すると、空間の裂け目ができ、レヴィアはそれを両手で広げた。そこには別の街の風景が展開している……。

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