第18話 ドラゴンかっけぇ
「まぁいいや、ところでテストどうだった?」
「……急に何さ。テストって、学力テストの事?」
「そう。今日の復讐はこの辺にして、ちょっと話そうぜ」
襲ってくんのを止めろとは言わないけど、別に仲良くしてもいいだろ。
「いいけどさ。どうってことないよ、勉強しなかったし多分80点くらいじゃない?」
「なん……だと?」
衝撃。まるで、かぼちゃの英語がパンプキンじゃねぇって事実を知った時のようなインパクト。こいつが、80点は取れてる?しかも勉強をしてない?そっちの方が嘘だろ。……嘘だろ?
因みに、かぼちゃはスクワッシュだ。ドクターに教えてもらった。
「ちょっと、どこ行くの?小戌ちゃん」
肩を落として寮へ戻る俺の隣に、隈乃見はトテトテと並んで首を傾げた。というか、小戌ちゃんってなんだよ。お前まで名前で呼ぶのか。
「あっれ〜?まさか、小戌ちゃんってば勉強出来ないの〜ん?」
「出来るのん」
「絶対ウソじゃん!そっかぁ、僕が知らないうちにそんなトコで勝ってたんだ〜。うれし〜」
目の前をうろちょろするな。あと、そのムカつく顔を止めろ。
予定では、隈乃見の「あまり出来なかったよ」から7割埋めた自慢を聞いてもらうつもりだったが、完全なるカウンターをくらってしまった。この反応じゃアイツらと同じじゃねえか。チクショウ。
……ま、いっか。
「隈乃見って、かなり勉強出来るんだな。負けたよ、すげぇじゃん」
「まぁね!結構得意だよ!」
そんな調子で話をしながら、俺たちは女子寮の前で別れたのだった。
大人しく負けを認めたことで、隈乃見はすっかり気を良くしたみたいだ。願わくば、このまま復讐心を忘れちまってただの愉快なヤツとして付き合っていきたいな。
× × ×
「シッ」
技能テスト当日。だだっ広い研究施設の中で予定通りに対戦形式で行われる事となった。俺は、俺と似たような成績の3組の男子と組まされているようだ。因みに、俺は1組。
「……えっ?」
ガラス張りの部屋の中、迫る彼の腹をレバーブローで串刺しにして戦闘は終わった。今聞こえたのは、外で計測している2年生がこの部屋に繋がっているスピーカーのマイクに吹き込んだ声だ。
「しょ、勝者。鷽月」
呼びあげられて一抹の喜びを感じて小さくガッツポーズしたが、大した盛り上がりもない。大人しく部屋を出て、チェックシートに『?』マークを入れて貰ってから廊下を歩いた。なんで、ハテナなんだ?
……まぁいいか。確か、雪常が4つ隣の部屋で戦っているハズだ。観戦しに行こう。
「うわぁ」
思わず声に出たのは、人だかりの中心であくびをしながら悶え苦しむ男子を見下ろす雪常の姿を見たからだ。あの二人が同じくらいの強さには、とても見えないな。
「つまんないの」
呟いて、扉へ向かう。そして、自動ドアの前に立った瞬間に相手は顔面から地面に倒れ込んで気を失った。あいつ、やっぱやべぇわ。
しかし、あの男子も自分のクラスでは相当デカい顔をしていただろうに。弱くなったワケじゃないとはいえ、これからの生活は大丈夫なんだろうか。この学校、ホントにやる事がエゲつないと思うぜ。
「あ、小戌君」
言いながら、累木が俺の隣に並んだ。体操着だけど、あの拘束具は着ているんだろうか。ゆったりしてて分から……。
「なに?」
「いや……」
着てたわ。
「オ、オホン。……累木はどうだったんだ?」
「勝ったよ、評価はBだってさ」
「B?」
やっぱり、普通はパラノイア強度と同じくアルファベットで評価されるらしい。
パラノイア強度とは、その名の通り変異人類のパラノイアの強さを図る値だ。SからEの6段階。俺は密かに、AからGでよくね?って思ってる。
「小戌君は?」
「俺はハテナ」
「はてな?」
「うん、よくわかんねぇけど。なんかハテナマークもらった」
「ホントだ。なんだろうね、これ」
そんな話をしていると、まもなく電光掲示板に俺と累木の出席番号と試験を行う部屋のナンバーが映し出された。意外と話し込んでいたみたいだ。
「それじゃ、行ってくるね」
「おう、頑張れ」
「うん。小戌君は、……別に頑張らなくても大丈夫か」
俺も、普通に応援して欲しかったなぁ。
部屋に入って早速バトル。顎にハイキックを当てると、一瞬で終わった。やったぜ。
「またハテナだ」
勝ち抜いた生徒は次の次へ。結局は計5回のテストを行い、その全てをワンパンで突破した俺のチェック欄はハテナマークで埋め尽くされた。これじゃ、どういう評価をされてんのか分かんねぇよ。
意味を考えていると、突然場内のアナウンスが流れた。一人の生徒を呼び出しているようだが、何とその生徒とは俺のことのようだった。だから大人しく従って指示された部屋に向かい動きを待ったが、何故か10分以上経っても誰も訪れない。いや、流石にこんな騙し方はないよなぁ。
そう思った矢先。
「あぁ、ごめんごめん」
キリッとした細い目に細いフレームのメガネをかけた、長身の黒いマッシュヘアの男子生徒が部屋に入ってきた。多分、3年生だろう。雰囲気で分かる。第一印象は、タダモンじゃねぇだろうなってトコロだ。
「すいません、あなたは?」
「
「……ど」
ドラゴンかっけぇ。
「ありゃ、もしかしてスベった?エラい恥ずいなぁ」
「い、いや。ちょっと感動しちゃって」
言うと、守り龍先輩はクスクスと笑った。
「ところで、化猫とは?」
「この学校の生徒会長。
なるほど。とりあえず、この人のセンスが俺のリビドーに直撃するってのはわかった。デビルキャット先輩。思わず口に出したくなるな。
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