第19話 祝福パーティー

「──ッ! 待てよッ!」


試験が終わり、待機室から移動しようとしていたルイスの肩を、背の高い男が掴んだ。

ルイスが後ろを振り返る。その正体は──


「──? あぁ、クラウスか。 一体何の用だ?」


体の彼方此方を包帯で巻いたクラウスは、息を切らしている。

おそらく、一通りの治療が済んだ後、急いでルイスを追ってきたのだろう。

彼は顔を下に向け、消え入りそうな声で言葉を紡いだ。


「次は……負けねぇ……」

「ん? 聞こえないぞ?」

「……次は! 次はぜってぇ負けねぇ! 俺はもっともっと強くなって、ボコボコにしてやる!」


顔を上げると、クラウスは正面から息巻いた。



──とても、とても悔しかっただろう。

かつて散々馬鹿にしてきた幼馴染。無能だと罵ってきた男が、突如国随一の学院の入学試験に現れたかと思った矢先、対戦して無様な敗北を喫しだのだから。

本当は顔を合わせるのも苦しいほどだろう。

今すぐルイスの目の前から逃げたくて、逃げたくてしょうがないのだろう。

それでも──彼はそれをしなかった。

彼の宣言には、確固たる意思が孕まれていて。


ルイスは、そんな彼の様子に少々面食らっていた。

やがて、数秒ほど彼にかける言葉を考えてから。


「おう、やれるもんならやってみろ!」


数ヶ月前のルイスからはおよそ想像もできない態度で、不敵にそう返したのだった。




「今でも信じられないわ。お金もないくせにいきなり自分も学院に行くって言い出した人と、まさか一緒に通うことになるなんてね」


カーネルにどこか呆れているかのような態度で言われ、ルイスは苦笑する。


今いるのは、王都の中でもかなり名の知れた高級料理店だ。

前からの目標であった互いの合格を無事達成したので、そのお祝いとして軽くパーティーをしているというわけだ。


「でも、俺は一番下のクラスだからな。あそこは全寮制だし、これから関わる機会はかなり減っちゃうだろうよ」


その言葉を聞き、カーネルは少し寂しそうな面持ちになった。

そんな彼女を安心させようと、ルイスは一つ提案をした。


「じゃあさ、昼ご飯は一緒に摂るってのはどうだ?」

「いいわね、そうしましょう」


カーネルは微笑みながら賛成した。

彼女の笑顔に、思わず胸が熱くなってしまう。


「どうしたの? 顔が赤いわよ?」

「い、いや、なんでもねーよ。ほら、飯が冷めるぞ」


ルイスは慌てて眼前の品々へと手をつける。


「う、うま!」

「ふふふ、あ、おいしい!」


ルイスの幸せそうな顔を見て、カーネルもそれに倣ってご飯を手に取る。


お祝いパーティーを満喫する二人であった。

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