第17話 戦意喪失
目を覚ました。
寝巻きから着替え、朝ごはんを摂り、いつも通り対戦表を見に行く。
自分の名前はすぐ見つかった。第一試合だからだ。
正直、少し緊張している。
いや少しではないかもしれない。
自分の合格を願ってくれている女の子がいる。
彼女──カーネル・クリューツは、無事合格を勝ち取った。
自分自身の願いのためにも、期待してくれている彼女に応えるためにも。
落ちるわけにはいかない。
「じゃあ、いくか」
「えぇ」
昨日と同じ円形闘技場に着いた。
自分は第一試合なので、カーネルと別れて待機室へと向かう。
「空を仰いで天となれ」
両親の言葉だ。
上を見上げる。が、当然そこには待機室の屋根しか見えない。
それでも、幾分かは緊張が和らいだ気がする。
「待機室にいる受験生の方々。まもなく第一試合が始まりますので、試合場へと向かってください」
魔術によって審判の声が待機室へと送られた。
それを聞いた受験者たちは、次々と立ち上がる。
ルイスは両頬を叩いて気合いを出すのだった。
試験場にいるのは、剣士が三人、魔術師が四人。それとルイスだ。
今回の試合、剣士にはかなり不利だろう。
ルイスは基本魔術を放つので、実質的に魔術師は五人となる。
遠距離攻撃手段がない彼らは、距離を詰められなければ一方的にやられるだけなのだ。
「それでは、試合開始!」
──すると、
不可解な状況に、審判、観客等は言葉を失う。
場を支配する沈黙は、それを成した張本人と思しき者によって破られた。
「あれ? なんで君無傷なの? おかしいな、ちゃんと当たったと思うんだけど」
木刀を構えた黒髪の少女は、よほど不思議だったのか目をまんまるにさせている。
その視線の先には杖と剣を両方持っている少年、ルイスがいた。
間違いない。彼女は、試合開始から一秒にも満たない間に全員の意識を刈り取らんとする神速の攻撃を披露したのだ。
ルイスが助かったのは、【絶対防御】によって彼女の攻撃を防ぐことが出来たからだろう。
意味がわからない。これを相手に勝てるわけがない。
ルイスは、そう実感させられてしまった。
そして、戦意喪失した時点でもう勝敗はついていて。
続けて繰り出された目にも止まらぬ連続攻撃に、ルイスはなす術なく敗北を喫した。
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