仲間と書いてた小説の世界に入ってしまった。しかも全員まとめて…。

落葉

第1話 その出会いは突然に

「よっ、久しぶり」

「あっ!やっと浮上した!何かあったのか心配だったんですよ!?」

「悪い悪い。いやぁ、テストでヤバめの点取っちゃって…」

「あぁ、お前の親厳しいもんな」

「ふあぁ…ねむ」

今日もけたたましい通話の情報量にやられてしまう。まあ学生なんてそんなもんだけどさ。

「はい、皆揃った所で。今回はどんな感じでいく?」

「学パロとかいいんじゃねーの?」

「あー、異世界ものばっか書いてたから新鮮だなぁ…」

「いや、あれで学パロできるのか?」

「幼児化とかどーよ。面白いと思うが」

「それはちょっと…どっかの人が歓喜して1人で書き上げそうですし」

「うん…とても子供に見せられる内容じゃなくなっちゃうかもだし」

「なんで僕を見るような…いや、僕を想起させる感じの言い回しするんだよ!」

「ん、でリーダーよ。結局どうする?」

僕はこのメンバーの中では「リーダー」と呼ばれている。この団体を作ったのも僕だし、呼ばれるだけの事はやってきたつもりだ。

ネットで知り合った、所謂「ネ友」だから、お互いの名前も知らない。そして、僕が某匿名掲示板で募集して集めたメンバーなので、お互いのハンドルネームすら知らない。だから、小説の中の役職や種族等でお互いを呼びあっている。例えば、「シスター」とか「情報屋」とか。

「うん、今回は普通に書いてみようか」

今日は頭が回らないので、下手に発言する事は控え、いつも通りでいようと思ったその矢先、

「普通って何だよ!」

「価値観は人それぞれだろ!」

「私とリーダーの【普通】はかなり違うと思うんですけど!」

「ちゃんと考えろ!」

この大バッシングだ。ちょっと凹む。

「はい提案。異世界なのに魔王居ないっておかしくね?」

辺りからおおっと歓声が上がる。

「じゃあ、今回は吸血鬼さんの意見を採用という事で。ではまた明日」

「…非常に言いにくいですが…今日になるかもしれませんね」

そう言われ、時計を見る。日付が変わっていた。成程確かに。

「深夜ってさ、今日なのか昨日なのか曖昧だよな。俺は寝る時間が1日の終わりだと思ってるけど、中には日付が変わったらそれまでは【昨日】で、今を生きている時間が【今日】って考えの人もここには少なからずいるだろうし。…まあんなもんどうでもいいですけどね」

その日のノルマが終わると、大体の日は雑談が始まる。何気にこれが楽しみで頑張っているみたいなとこもある。

たまに人生相談とかが起きたりするが、かなり前に付喪神幼女(中身は男)が言った「人生なんて所詮クソゲーなんですし、どんだけそのクソゲーを楽しむかが重要なんすよ」という言葉が未だに頭から離れておらず、結局それで解決する事もある。まあ、ここには割と現実で苦労している人が多かったりするし、気軽に相談とか悩み、愚痴とか言えるここは居心地がいいんだろうなって。

「…じゃ、僕は落ちるね」

「リーダー落ちるん?なら俺も」

「ぐー」

「おーい吸血鬼ぃ寝落ちするなー」

「いつも通りですね…」

「笑笑」

「徹夜したろ」

なんでここまで自由なのか…。それが良さなんだけどさ。

「じゃあね。また」

通話から抜ける。真っ暗な部屋に静寂が訪れた。

「寝よーっと」

パソコンの電源を切って布団に潜る。

「…あ、推しのグッズ出るじゃん。発売日に買おっと」

大規模ソーシャルアプリ「蒼鳥」のタイムラインを見てから眠りにつく。

(明日も、全員揃うといいな)

そんな事を考えながら、意識を深層に潜らせてゆく。

だが僕は…いや、「僕ら」は、この時知る由もなかった。目が覚めたら、あんな光景が広がっていただなんて。

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