第196話 湖の湖畔で

 スケイルワイバーン討伐後。

 四天王を探しながら珍獣島を進む俺たちの前に、巨大な湖が現れた。


 どこまでも広がる青色が、太陽の日差しを反射してキラキラ輝いている。


「わぁ。きれい……」

『絶景だな』


 思わず見とれてしまう。

 それはルナも同じだったようで、隣を見れば瞳を輝かせていた。


『決めた! ここをキャンプ地とする!』

「ん、賛成!」


 満場一致で決まったので、俺たちは湖畔に腰を下ろした。


『そろそろ昼前か』

「お腹空いてきたね」

『そうだな。いったん飯にするか』


 俺は【次元収納】を発動する。


 この中には街で調達した食材や料理などが入っているが、そればっかり食べるのはアレだからな。

 獲れたて新鮮な食材があるのだから、それを食べるべきだろう。


 というわけで、スケイルワイバーンの死体をドカッと取り出した。


『今日の昼飯はドラゴン肉だ!』

「ドラゴンのお肉! 絶対においしそう!」

『初めてのドラゴン肉、どんな味がするのか気にならないか?』

「ん、すごく気になる!」

『だよな。贅沢に焼肉といこうぜ!』

「おー!」


 まずは二人がかりで鱗を外していく。

 鱗がついてたら解体できたもんじゃねぇからな。


 かと言って、すべての鱗をはがそうとするととんでもない時間がかかる。

 というわけで、今回食べる範囲の部分だけ鱗をはがした。

 それから、魔法で肉を切り取っていく。


「刻命のつるぎ!」


 ルナが新技を発動した。

 手のひらから溢れ出た闇が、一振りの剣を形どる。


「カッコいいでしょ?」

『最高にカッコいいぜ! スゲーな、その魔法!』

「お兄ちゃんを驚かせたくて、こっそり練習してたんだよ」


 ルナが小さくはにかみながら、そう告げてきた。

 可愛すぎたから反射的に頭を撫でたら、気持ちよさそうに目を細めた。


 話を戻して、刻命の剣はルナが編み出したオリジナル闇魔法だ。

 強さは中級魔法相当で、斬った相手の防御力をほんの少しだけ減少させるという効果付き。

 実用化したばかりだからデバフの効果は低いが、そこはこれから強化されていくことだろう。

 今後に期待大だ。


「お兄ちゃん、斬るのお願いしていいかな?」

『任せとけ!』


 ルナは種族的に攻撃力が低いので、俺がやったほうが効率がいい。

 適材適所ってやつだ。


『日々コツコツと練習し続けてきたフレイムアーム(仮)の成果を出す時が来たようだな』


 【操炎術】と【再生ノ蒼キ炎】を組み合わせると、熱を持たず触れたものを燃やさない上に物理干渉できるという特殊な炎を生み出すことができる。

 それを腕の形にして自由自在に操るというのがフレイムアーム(仮)だ。


 人間の腕は非常に便利だから、この能力があればいろいろなところで役に立つ。

 日々の練習の積み重ねによって、俺はこの能力をそれなりに扱えるようになっていた。


「頑張って!」

『おう!』


 炎の腕で刻命の剣を握る。

 ルナの応援を聞きながら集中すること十分ほど。

 スケイルワイバーンの胸肉を取り出すことができた。


 解体を生業にしてる人が見たら卒倒するくらい雑なやり方をしたが、俺にはこれが限界だから文句を言うのはナシな。


『これだけあれば充分だろ』

「余裕で足りるね」


 スケイルワイバーンの可食部位は、胸、腹、もも、しっぽだ。

 胸肉だけでも三食分くらいの量があるので、当面は食料に困ることはないな。


『スケイルワイバーンはいったん仕舞いまして、さっそくBBQするか』

「ん、早く食べたい」


 というわけで、火を起こす。

 それから、カットしたスケイルワイバーンの胸肉と街で調達した野菜を串に刺していく。


 この作業は特にルナが頑張ってくれた。

 もちろん俺もフレイムアーム(仮)で手伝ったが、やはりまだまだ向上の余地があるな。


『最後は出来上がった串を焼いて完成っと』


 香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

 なんとも食欲を掻き立てるいい匂いだ。


『「いただきまーす!」』


 ぱくりと噛めば、熱々の肉汁が流れ込んでくる。

 胸肉だからかちょっと硬めの肉質だが、俺たちは高ランクの魔物だから当然噛む力も強い。

 特に気になることもなく、肉の旨みを堪能することができた。


『この野菜もうめぇな』

「だね。お肉と一緒に食べたらすごくおいしいよ」

『旨みがマッチしてるもんな』


 俺たちはきれいな景色を眺めながら、のんびりと昼飯を楽しむことができた。

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