第148話 邂逅

『単刀直入に言うが、俺とお前の二人でその魔獣に勝つことはできるのか?』

『前に戦ったときにノアは炎と雷の魔法を使っていたが、進化したことで新たな魔法が使えるようになったりはしたか?』

『変わった魔法や攻撃手段は持っていない。新しく使えるようになった魔法は、どれもこれまで使っていた魔法の威力をあげただけって感じだ』

『ならば厳しいだろうな。私の攻撃でも大したダメージにはなっていなかったようだから、炎や雷が弱点でもない限り倒すのは無理だろう』

『詰んでね?』

『まだ希望はあるぞ』

『どんな?』

『ここから南に行った山岳地帯の中腹より手前あたりに、私やノアより強い気配を感じる。その気配の主に力を貸してもらうように頼む』

『なるほど。戦力の確保に動くわけか』

『もし戦いになっても、私とノアが組めば負けることはないだろう。まあこちらは争うつもりはないがな』


 やるべきことは決まったな。

 ……と、その前にもし協力が得られなかった時のことも聞いておくか。


『協力してもらえなかったらどうする?』

『その時は、私を追いかけてきている魔物から逃げる。幸いにもあの魔物は移動速度が遅い。それに私であればかなり離れていても気配で居場所がわかる。だから逃げながら今より強くなって、勝てそうだと思ったときにもう一度ノアのもとに来る』

『了解。じゃあ、そのデフォルトで放ってるプレッシャー消しとけよ。そんなん振りまいてたら戦いに来たとしか思われんからな、絶対に』

『私ってそこまでプレッシャー放っているか?』


 あ、この人無自覚系の人だ。

 「また俺何かやっちゃいました?」って言う系の人だ。


『王の風格みたいなのがいつも出てるぞ。そのせいで実際の強さ以上に強く感じてしまうんだからな。威圧感やプレッシャーがすごいのなんの……』

『なんとかして消してみるか……』


 三十分ほどの時間を経て、狼王から王者の風格は消え去った。


『こうして見ると、ちょっと顔が怖いだけのただの狼だな。うん。これなら大丈夫そうだ』

『噛んでいいか?』

『よし。じゃあ行くか』


 狼王の言う気配の主のもとに向かって出発。

 その途中でマツタケを採取していく。


 俺たちは頼みに行く立場だから粗品を持っていったほうがいいなと思って、秋の味覚の王様を献上することにした。

 味は一品級だからな

 前回マツタケ狩りをしたスポットで採取したので、採取自体には時間はかかっていない。


『どうやら気配の主は、子供と一緒に過ごしているようだ』

『お前子供を泣かすなよ。見た目怖いんだから気をつけろよ』

『見た目はノアも同じようなものだろ』

『ハヤブサの顔って狼よりも凛々しいから。進化前に培った愛くるしさを押し出すから大丈夫だから』

『本当に大丈夫なのだろうか……』


 山の斜面を登りながら進むこと一時間ほど。

 木々が完全に開けて草原になっているエリアに出た。

 百メートルほども平らな地面が広がっているが、冬ということもあって草は枯れていた。


『ここから少し先に進んだところに気配の主がいる』

『初対面での第一印象で八割くらい決まるからな。気をつけろよ』

『わかっている。大丈夫だ』


 そのまま進むこと五分ほど。

 急に険しくなった山の斜面に洞窟があった。


 そして、その洞窟の前には気配の主だと思われる魔獣が一匹。

 狼王と同じくらいのサイズの、真っ白い毛をした美しいキツネだった。


『ここになんの用?』


 キツネが問いかけてきた。

 声を聞く限り、性別は雌みたいだ。


 ……【念話】持ちか。

 となると、俺や狼王と同じように人間並みの知能があるということ。

 話を一切聞いてもらえないということはなさそうだ。


『俺たちは敵ではない。頼みがあって来ただけだ』

『絶対に攻撃はしない。それは保証する』


 当然、これだけで警戒を解いてもらえるはずがない。

 当たり前だ。


『俺は炎と雷の魔法を、こっちの狼は風魔法を使える』


 こちらの手札を明かすことで、少しでも信用してもらえればいいが……。


『言っていることは本当のようね……。だけど、まだ完全に信用することはできないわ』


 少しは信用してもらえたみたいだな。

 ここらへんで手土産を渡すか。

 というわけで差し出したら、


『これは?』

『採れたての新鮮なマツタケだ。味は保証する』

『私も食べたが、味はすごくよかった』


 バスケットに入ったマツタケを差し出す。

 彼女が匂いを嗅いだりして確認している間に、【鑑定】をさせてもらうか。


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種族:ホワイトエレメンタルテイル Lv88

名前:なし

状態異常:なし


体力 :1502/1502

魔力 :1498/1498

攻撃力:643

防御力:681

魔法力:1245

素早さ:966

ランク:B+


固有スキル

【念話】【方向把握】【危険予知Lv9】【人化の術Lv8】


スキル

【体力自動回復Lv4】【魔力自動回復Lv3】【爪撃Lv7】【噛みつきLv7】【テイルアタックLv4】【風属性魔法LvMax】【水属性魔法LvMax】【土属性魔法Lv8】【ハイヒールLv7】【ヒールLvMax】【ホーリーLv5】【ピュアLvMax】【気配察知Lv8】【敵意察知Lv8】【魔力制御Lv7】


耐性スキル

【風属性耐性LvMax】【水属性耐性Lv5】【土属性耐性Lv4】【毒耐性Lv8】【物理耐性Lv1】【魔法耐性Lv4】【麻痺耐性Lv1】【呪い耐性Lv5】


称号

【魔法のエキスパート】【白魔導士】【親バカ】【娘愛】【最終進化者】【もふもふ】【半精霊】


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 B+ランク高レベル……!

 戦ったらまず勝ち目のない相手だ。


『上等な香りね。これはどこで?』

『この山を北に下っていったところに自生している。が、マツタケが生えてくるのは秋だけなんだ。だから、今年はもう探しても見つからないだろうな』


 ちょっとしょんぼりとする彼女。

 マツタケがうまいことを確信したのだろう。


『いいことを教えてやろう』


 彼女にも“焼く”ということを教える気か。


『このマツタケとかいう植物もだが、食べ物は焼いて食うとうまいぞ!』

『……ごめんね。もう知ってるわ』

『そうか……』


 またまた落ち込む狼王。


『あと、なんでもかんでも焼けばいいってわけじゃないわよ。火加減とか焼く時間も大切だからね』


 魔獣なのに、調理法などに詳しいんだな。

 もしかして、俺と同じように人間の知り合いがいたりするのだろうか?

 【念話】を使えるくらい知能が高いんだし、可能性はありそうだ。


『とりあえずいったん飯にしないか? マツタケは鮮度が一番だからな。早く食べたほうが絶対にうまいぞ』

『む、確かにそうだな』

『お前はただ食いたいだけだろ』

『あなたは炎の魔法が使えるのよね?』

『炎の扱いならお任せあれ』

『上手に焼くのを期待するわ』


 一応、完全に敵意がないことは信用してもらえたらしい。

 

 というわけでマツタケを焼き上げていく。

 あたりに芳醇な香りが漂ってきて――


『おいしそうな匂いね』

『だろ?』

『娘にも食べさせてあげたいから呼んでくるわね』

『俺が聞くのもなんだが、連れてきていいのか?』

『私は相手の感情や殺気などを読み取るのが得意なのよ』


 確かに敵意や危険を察知するスキルを持っていたが……。


『俺たちを信用してくれた……ってことでいいのか?』

『まだ完全ではないけどね。もし変な動きをしたら、そのときは攻撃するから気をつけてね』

『あの狼にもしっかりと言いつけておくよ』


 娘さんを呼びに彼女は洞窟のほうに戻っていった。

 マツタケの周りをそわそわしながら歩き回っていた狼王に、変な動きだけはしないように釘を刺しておく。


 そうこうしていると、娘さんを呼びに行った彼女が戻ってきた。

 彼女の後ろから、彼女とそっくりの白色の毛をした子ぎつねが顔をのぞかせていた。


『この子が私の娘よ! かわいいでしょ?』


 ドヤ顔で自分の娘を自慢する彼女。

 どう見ても親バカのそれだ。


『愛くるしいな』


 お世辞とかではなく、本心で褒める狼王。

 今、コイツからも親バカの匂いがした気が……。


『超かわいらしい』


 これは俺の感想。

 お世辞とかではない。

 冬だからだろうが、もふもふの真っ白い毛がとてもきれいだ。


『でしょう? うちの娘は――』


 彼女の娘自慢が始まったとき、子ぎつねとバッチリ目が合った。


 その瞬間、俺の直感がささやきかけてきた。

 今年一番の直感が、【鑑定】をするようにと――


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種族:エレメンタルテイル Lv41

名前:なし

状態異常:なし


体力 :568/568

魔力 :530/530

攻撃力:276

防御力:270

魔法力:377

素早さ:339

ランク:C-


固有スキル

【鑑定】【言語翻訳】【獲得経験値倍化】【方向把握】


スキル

【噛みつきLv2】【爪撃Lv2】【テイルアタックLv2】【風魔法Lv6】【気配察知Lv5】【魔力制御Lv3】


耐性スキル

【風属性耐性Lv3】【闇属性耐性Lv1】【魔法耐性Lv1】【毒耐性Lv2】


称号

【転生者】【愛され狐】【もふもふ】【半精霊】


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