第142話 だからホラゲーは無理って言って(ry

 次の階層からは、ゾンビは出現しなくなった。

 おかげで精神衛生的にも問題なく進み、次の日には十階層のフロアボスのところまでたどり着いた。


 ここに来るまでに遭遇した魔獣は、ほとんどがD+でたまにC-。

 これまでの流れを考えると、フロアボスはCランクあたりの魔獣だろう。


「よし、開けるぞ」


 ゼストが扉を押す。

 扉が開くときの音が、アニメのコ〇ンがCMに入るときのアレにそっくりだ。


 そんなしょうもないことを考えていると、フロアボスの姿が視界に映った。

 あと、五階層のときよりも部屋の中は広かった。

 俺が飛び回れるくらいには。


「うきぃぃぃ!」

「ウッキー!」

「ウキャキャキャキャキャ!」


 十階層のフロアボスは、お猿さんの群れだった。

 部屋の中心に生えている大きな木の枝の上にボスっぽいのが陣取っていて、そいつらを囲うように十匹ちょっとのお猿さんが地面の上で警護に励んでいる。

 俺たちが部屋の中に入ったことで、こちらに気づいたお猿さんたちは警戒態勢に入った。


「ボスのゴリラ猿はCランクで、手下はDランクの魔物だ」


 猿たちはこちらを警戒しているだけで全然攻撃してこないので、その間に話し合いをさせてもらった。

 その結果、ボスの相手は俺がすることになった。


 ここまであまり俺の出番なかったからな。

 久しぶりにそこそこ強い相手と戦うんだし、張り切っていっちゃいますか。


「ウッホオオオオオオオオ!」


 ボスのゴリラ猿が咆哮をあげた。

 「これ以上縄張りに踏み込むな」ということだろう。

 だが、お前らを倒さないと次の階層に進めないんでな。

 容赦なく踏み込ませてもらうぜ。


「ウッキャアアア!」


 配下の猿たちが、奇声を上げて走り出してきた。

 上空にいる俺は無視して、そのまま三人を狙いに行く。

 ボスから「鳥の相手は俺に任せろ」的な命令でも出されたのだろう。


「ウホウ……!」


 ゴリラ猿が地面に飛び降りてから、ドラミングをした。

 そして――


「ウッホオオオオ!」


 地面に転がっていたデカい石を俺のほうに次々と投擲してきた。


『左、右、下、もっかい右!』


 飛んでくる石の間をすいすいと潜り抜け、あっという間にゴリラ猿のもとに到着する。


『【爪炎撃】!』


 燃える爪を真上から振り下ろす。


「ウホ!」


 ゴリラ猿は太い左腕を上にあげて、俺の攻撃を正面から受け止めた。


「ウッホゥ!」


 ゴリラ猿が右手で殴りかかってくる。


 横にずれて躱す。

 それと同時に、ゴリラの左腕を掴んだ。


「ウホオ!?」

『知ってるか? 猛禽類も握力が強いんだよ!』


 ゴリラの腕に爪を深く食い込ませ、その状態で真上に飛び上がる。


「ウホオオオオオ!?」


 驚くゴリラ猿を無視して、部屋の天井付近まで飛び上がり――


『ゴリラなのかサルなのかはっきりしろ!』


 そのまま地面に向かって急降下して、地面まであと少しというところでゴリラの腕を離した。


 すぐさま姿勢を変えて、【クリムゾンブースター】を再出力。

 その推進力も利用して地面に激突するのを避けたころには、後ろのほうからゴリラが地面に叩きつけられた音が聞こえてきた。

 そのままの勢いで、部屋の上にもう一度向かう。


『【フェザーボム】!』


 舞い散る砂埃の中で立ち上がろうとしていたゴリラ猿に、【フェザーボム】をぶつける。

 大したダメージにはならないが、気を引くのには充分だ。


『これで最後だ』


 部屋の上のほうから滑空する。

 腕を顔の前に持ってきて【フェザーボム】を防いだゴリラ猿のガラ空きの胴体に、そのままの勢いで蹴りを叩き込んだ。


「ウゴホォ……」


 ゴリラが光の粒子になって消えていく。


「終わったみたいだな」

『ドロップ品は毛皮だぞ』

「お疲れ様。仕舞っとくわね」

「お疲れ」


 休憩をはさんだら攻略再開。

 十一階層からは通路が広くなり、さらに小部屋が所々に合った。


「ストップ! 右のほうの床から嫌な感じがする」


 たまにトラップが仕掛けられていることもあったが、リアの【罠察知】スキルのおかげで問題なく進めている。

 出てくる魔獣のほうは、C-ランクのやつがかなり多くなった。


「シュー」


 天井に張り付いていたヤモリみたいなのが声を上げる。


「あれは毒持ちだ。噛まれないように気をつけろよ」

「了解」

「弓の準備おっけー」

『じゃあまずは俺から』


 前方に【熱風】を放つ。

 こういう狭いところだと、【熱風】は大活躍だな。

 威力が低いのが難点だけど。


「シャアッ!」


 【熱風】の中を走破してきたヤモリが、大口を開いて俺のほうに跳びかかってきた。


「任せて!」

「【エアショット】!」


 俺が後ろに下がると同時に、すぐ横を矢と【エアショット】が通り過ぎていった。

 二人の攻撃はヤモリの口の中に直撃する。

 そして――


「とどめは俺っと」


 悲鳴を上げて怯んでいたヤモリを、ゼストが大剣で切り伏せた。


「ドロップ品はなしか……」

「今回はハズレね」

『……次行こうぜ』

「ほかの魔物を探そうよ」


 たまにドロップ品が落ちないときもあるんだよな。

 こればっかりは運だからしょうがない。


『殺ス』


 え!?


「ん?」

「怖い単語が聞こえた気が……」

「すーちゃん?」

『やだなー。俺なにも言ってな』

『殺ス』

「キャアアアアアア!?」


 アリスが悲鳴を上げた。

 当たり前だ。

 壁の中から俺たちの天敵、“オバケ”がいきなり出てきたのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る