第131話 vs二足歩行変態高級豚肉マン

 オークが雄たけびを上げながら迫ってきた。

 その手に握られたナイフが振り上げられる。


 俺を倒してから、アリスに襲いかかるみたいだ。


『ここは俺に任せとけ』

「じゃあお願いね。私は観戦しとくわ」


 アリスはそう言って後ろへ下がった。


『では……』


 オークのほうへ向き直り、足の爪で振り下ろされたナイフを受け止めた。


 爪とナイフがぶつかり合う。


 やはり錆びたナイフくらいなら、余裕で爪で受け止められる。

 が、意外と弾き飛ばせないもんなんだな。


 ステータスの攻撃は俺のほうが上回ってはいるが、オークのほうは体がでかいぶん膂力があるからだろう。

 それと不安定な体勢で受け止めているのもあるか。


「ブ……ヒッィィィイ!」


 オークが腕に込める力を強める。


『ちょい【熱風】!』


 オークのナイフを受け止めた状態のまま、片方の翼を二度ほどはためかせた。


「ブヒィ!?」


 せいぜい火傷する程度の【熱風】だったが、急な熱い風にオークは驚いてナイフを握る力を弱めてしまった。


 その瞬間にナイフを思いっきり蹴り飛ばす。

 ナイフはあっけなくオークの手を離れた。


 オークはナイフのほうに意識がいっている。

 胴体は無防備にさらされている。


 決めるなら今だな。


『エンジン全開!』


 【クリムゾンブースター】の出力を最大にして、全速力でオークの横を飛びぬけた。

 そして急停車。


「ブ……ヒ……」


 オークの首から血が吹きあがる。

 通り過ぎざまに切り裂いたからだ。


「お疲れさま」

『血抜き終わったら【次元収納】に仕舞ってくれるか?』

「いいわよ」


 オークの頭を落として、頭は処分しておいた。

 そして待つこと十数分。


「そろそろいいわね。というわけで収納」


 血抜きが大体終わったオークを仕舞ってから、俺の新拠点探しを再開した。

 そして北へ向かって歩くこと二十分ほど。


『風の中に潮の香りが混ざってきだしたな』

「ホントね。もうすぐ海に出るんじゃないかしら」

『別の方向に進むか? 海のほうへ出ても拠点によさげな場所はなさそうだぞ』

「ちょっとだけ海を見させてくれないかしら? 最後に海を見たのは数年前だからさ」

『そういうことなら海まで行ってみるか。俺も転生前も合わせて一年ほど海には行ってないからな』


 そういうわけでさらに北へ進むと、とうとう海に出た。


「きれいな海ね」

『そうだな。このくらい透き通ってる海は、俺の故郷の国でもそうそうないだろうなぁ』


 砂浜の先に広がっていたのは、太陽の光を反射してキラキラと輝く美しい青い海だった。

 美しや。

 ああ美しや。


「それにしても風が冷たいわね」

『そんなに寒いならもう戻るか』

「そうね。そうしましょ」


 俺は全然寒さを感じないが、アリスはコートを押さえて少しだけ震えている。

 冬が迫った秋の海は寒くて当然か。

 そりゃそうだよな。


『ほーんのちょい【熱風】。これで大丈夫か?』

「ありがとね、すーちゃん。おかげで寒さが吹き飛んだわ」


 ヒーターくらいの温かさの風を生み出すほーんのちょい【熱風】が役に立ったみたいだな。


 魔法は威力を上げるのは簡単だが(暴発しない程度に適当に魔力をつぎ込めるだけでいいから)、威力を弱めるのには繊細なコントロールが必要だ。

 魔法のコントロールの練習がてら、温かい程度の【熱風】をだしといてよかったな。

 こんなところで役に立つとは。


 【寒い季節には便利ですね。】


 一家に一台クリムゾンファルコン。

 あなたの身体と心を暖めます。

 って、誰がファンヒーターじゃい!


 森の中へ戻り、紅葉を楽しみながら南西の方向へ進む。

 南東へ行ったら街へ出るからな。


 森の中にいるリスやキツツキなんかをアリスと一緒に「かわいいかわいい」と言いながら進んでいたら、奥行き五メートルほどの小さな洞窟を見つけた。

 この洞窟の少し先は、インパクト盗賊団を捕まえた岩場地帯になっている。


『そして、なぜか都合よく鳥の巣みたいなのがある。大きさもかなりでかいと来た』

「親鳥はいないみたいね」


 巣の中は空っぽで、ほかの生物がつい最近までいた様子はない。


『なかなかの好物件なのでは?』

「ここにする?」

『雨風も凌げるだろうから、ここにするか』


 そういうわけで住む場所が決まったので、鳥の巣を洞窟の外に引っ張り出してから洞窟内の地面を掃除した。

 と言っても、アリスの風魔法と俺が翼を羽ばたかせて起こした風で、地面に散らばっていたゴミや埃を洞窟外に出しただけなんだけどな。


「【クリエイトサンド】」


 アリスが洞窟内の地面に手をかざすと、フカフカの土が洞窟内の地面を覆った。


『今のは土魔法か』

「土を作り出すだけの魔法だけど、畑づくりやこういうときには役立つわよ」

『サンキュー』

「お礼はさっきのオーク肉を少しでいいわよ。帰る前に少しだけ食べたいから焼いてちょうだい」

『そういうことなら喜んで』


 最後に巣についたゴミなどを風魔法で弾き飛ばしてから、きれいになった巣を洞窟内に設置することでニュー我が家のリフォームは完了した。


「アップルンなんかは巣の中に置いとけばいい?」

『端っこのほうにまとめて置いといてくれ』


 引っ越し前に超速収穫してアリスに預けていた果物や|カオリダケ(松茸クラスのキノコ)を巣の中に出してもらう。

 さて、俺はオークの解体だ。

 と言っても、腹の部分からおいしいお肉を取り出すだけなんだけどな。


 腕や太ももの肉も食べられるらしいが(特にもも肉はオーク肉の部位で二番目にうまいと言われている)、今回はめんどくさいので腹の肉を取り出すだけだ。

 残りはアリスにあげる。

 肉は解体して食料に、|金色(こんじき)ボールはギルドで売り払うそうだ。

 そこそこ高く売れるらしいから。


『ここをこうして……次はこうで……』


 アリスに解体の手順を教えてもらいながら、なんとかオークを捌くことができた。

 これからここで暮らしていればオークとはたくさん出会うことになるだろうから、あとは何回も捌いて練習するのみだな。


『では焼いていきますか』

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