第113話 ジャイアントデビルスパイダー

「お! あったあった。ジャイアントデビルスパイダーの巣」

「長かったわね」

「ジャイアントデビルスパイダーって数が少ないもんね」


 ウィンドバードをしとめてからさらに二時間ほど探索を続けていると、木々の根元に大きな蜘蛛の巣が作られているのを見つけた。

 直径四~五メートルくらいの巣だ。


「肝心のジャイアントデビルスパイダーはどこかに行ってるみたいだな」

「帰ってくるまで待ちますか」

「そうだね」


 レイラさんの話によると、ジャイアントデビルスパイダーは【粘糸化】という糸を体外に放出すると粘着質な感じに変えてしまうスキルを持っているから、倒して腹の中から糸袋という生成された糸が貯蔵されている器官を取り出すそうだ。

 そうすることで粘着質ではない上等な糸が取れるらしい。


「遅いね~」

「今のところジャイアントデビルスパイダー以外の気配もなしだな」

「もう少し待ちますか」

「ピュイ」


 それから待つこと一時間ちょっと。


「ん! 大きい気配来たよ」

「了解!」

「ジャイアントデビルスパイダーならいいんだがな」


 リアが警戒しているほうを見ていると、ガサガサという音とともに草木をかき分け巨大な蜘蛛が出てきた。

 足の長さ約二メートル、胴体は縦三メートル、横二メートルくらいの大きさで、全身がふさふさの真っ黒い毛で覆われている。

 そして爛々と不敵に光る八つの真紅の目玉。

 見るからにジャイアントデビルスパイダーだな。


------------------------


種族:ジャイアントデビルスパイダー Lv52

名前:なし

状態異常:なし


体力 :713/713

魔力 :212/212

攻撃力:411

防御力:367

魔法力:231

素早さ:586

ランク:C


固有スキル

【粘糸化】【糸生成】【蜘蛛の巣】【糸捕縛Lv6】【耐火糸】


スキル

【毒牙Lv6】【毒爪Lv5】【麻痺牙Lv4】【水面歩行Lv4】


耐性スキル

【毒耐性Lv8】【麻痺耐性Lv1】【闇属性耐性Lv3】


称号

【黒い悪魔】【忍者】【糸職人】


------------------------


 ジャイアントデビルスパイダーはこちらのほうを警戒しているようだが、自分よりも小さい俺たちに負けるとは思ってもいなさそうだ。


「手筈通りいくぞ」

「了解。バンバン魔法をぶつけるわよ!」

「気を引くのよろしくね。私は【隠密】で背後の木の上にでも回り込むから」

「ピュイ」


 リアがジャイアントデビルスパイダーの側面のほうに走り出す。

 ジャイアントデビルスパイダー……長すぎるから悪魔蜘蛛でいいか。

 悪魔蜘蛛はリアのほうを向こうとするが――


「させないわよ。【エアカッター】!」

「ピュイ!」


 アリスの放った風の刃と俺が放った炎の矢によって、悪魔蜘蛛の足の一本が中から切り落とされる。


「ギイィィィィ!」


 悪魔蜘蛛は不気味な声を出しながらすぐにこちらのほうへ向き直ってきた。

 そこへすかさずゼストが距離を詰めていき、大剣を悪魔蜘蛛の頭上からまっすぐに振り落とす。

 さすがに危ないと思ったのか、悪魔蜘蛛は後ろに下がることでゼストの大剣を躱した。

 八本の足を高速でわしゃわしゃと動かすことで、あの巨体からは想像できないくらいのスピードで動いている。

 俺たちは全員あいつよりも早く動けるので問題ないが、一般人であればこいつが高速で突っ込んでくるのは恐怖でしかないだろうな。


「【斬撃波】!」


 ゼストが斬撃を飛ばして悪魔蜘蛛の足を一本斬り飛ばすと同時にアリスのもとまで下がる。

 次の瞬間には悪魔蜘蛛が不気味な声を上げながら後ろを向いて、尻の部分からすごい量の糸を飛ばしてきた。

 【糸捕縛】のスキルなのだろうが、避けるのが困難なくらいの広範囲に大量の糸が飛んできている。

 さすがCランクの魔獣だけあって厄介なスキルだが、その程度ではアリスたちには届かない。


「【グランドウォール】!」

「ナイスだ。アリス」

「ピュイ」


 アリスが生み出した土の壁によって悪魔蜘蛛の糸は防がれる。

 そこへ【サンダーウォール】を発動させると、電気が大量の糸を伝って悪魔蜘蛛に襲い掛かった。

 悪魔蜘蛛本体に攻撃しようとすればよけられる可能性が高かったが、この方法であればよけることは不可能だろう。

 すぐに糸を放出するのをやめれば電撃は喰らわなかっただろうが、悪魔蜘蛛は後ろを向いて糸を放出していたので気づくことはできなかっただろう。

 そして俺たちの攻撃はまだ終わらない。


「【弓術】スキル、【三連撃ち】!」


 リアの声がしたかと思えば三本の矢が飛んできて、悪魔蜘蛛の真紅の目玉にきれいに突き刺さった。

 やはり見事な腕前だ。


「フッ。私の弓に貫けぬものなどない」

「鎧は貫けないって前言ってなかったっけ?」

「ソンナコトイッテナイヨー」


 リアの声がしたほうを見ると、木の枝の上でかっこよくポーズを決めていた。

 【隠密】は気配を消すだけで透明になったりすることはできないが、視界から外れたときとかに使われると見つけるのが大変なんだよな。

 ちょっとでも探すのに時間を使えばそれだけ隙をさらすことになるので、実戦だとかなり強力なスキルだな。


「よくやったリア。あとは俺と朱雀に任せろ」

「りょーかい。頑張ってね」

「ピュイ」


 目に矢が突き刺さったことで悶え苦しんでいる悪魔蜘蛛にゼストが近づき、その脳天に向かって大剣を一気に振り下ろす。

 その攻撃がクリーンヒットすると同時に、俺は悪魔蜘蛛の真上から胴体と腹部の境目の部分に【火炎飛爪斬】を放った。

 糸を生成する器官は腹部にあるそうなので、この場所であれば強力な炎系の攻撃を当てても問題ないだろう。


 頭をたたき斬られて体を真っ二つに切断された悪魔蜘蛛は、断末魔を上げてから崩れ落ちた。


「討伐完了。みんなお疲れ」

「お疲れ様。二人とも最後かっこよっかったわよ」

「ありがとな」

「ピュイ」

「お疲れ~」


 相手はCランクのそこそこ強い魔獣だったが、俺たち四人の敵ではなかったな。

 やはり人数がいれば相手を倒すのが楽だ。

 あれくらいなら俺一人でも問題なく勝てるだろうけど、もう少し苦戦したはずだからな。


「それにしても朱雀が最後に放った魔法はすごかったな。あんな攻撃今まで見たことないぞ」

「炎の斬撃が飛んでいくスキル……。【エアカッター】や【ウィンドスラッシュ】の炎版ってとこかしら」

「カッコよかったよ、すーちゃん」

「ピュイ」


 それじゃあ悪魔蜘蛛の死体を解体しないとな。

 ほかの魔獣に襲われる可能性もあるから手短にやったほうがいいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る