第53話 友達

 俺、アリス、リアの三人でゼストのところに駆けつけたら、ちょうど決着がつくところだった。

 ゼストの大剣がロイヤルリーダーの脳天に振り落とされ、ロイヤルリーダーはそのまま地面にたたきつけられた。

 ロイヤルリーダーは斬られはしてないものの、兜は思いっきりへこんで変形してしまっている。

 兜以外に鎧の腕部分なども変形しているので、中に入っているゴブリンも無事ではないだろう。

 【鑑定】してみたら体力は0ではなかったが、残り13と虫の息になっていた。

 ゼストがもう一度大剣を叩きつけると、ロイヤルリーダーの体力は0になった。


「ゼストお疲れ」

「お疲れ様」

「ピュイ」

「アリスとリアのほうも終わったのか?」

「問題なかったわよ」

「すーちゃんと一緒に合体奥義を使って倒したよ」

「お、おう……。とりあえずお疲れ。朱雀もリアのこと助けてくれてありがとな」

「ピュイ」


 そのあとはロイヤルナイトたちとワームを燃やしたり、集落の最奥部を燃やしたりとあと始末をした。

 アリスが【次元収納】から取り出した火の魔石(仮)を使って手伝ってくれたので、あと始末は案外すぐに終わったよ。

 ただ、ロイヤルナイトたちは【フレア】じゃないと燃やせなかったので、それだけでも結構な魔力を使ってしまった。


「改めてありがとな、朱雀」


 ゼストが急に礼を言ってきた。

 何でまた礼を言うのか不思議になったが、すぐに理由は分かった。


 ゼストの話によると、ロイヤルナイトが誕生すると一週間もしないうちにゴブリンキングが誕生するらしい。

 ゴブリンキングが誕生すればゴブリンの数が爆発的に増え、C、Dランク台の上位種の数も一気に増えてしまうそうだ。

 増えすぎて集落にゴブリンが入りきらなくなったら、ゴブリンたちは住処や食料を求めて人間の街を襲うらしい。

 人間の街はゴブリンにとっても住みやすく、住んでいた人間を殺せば食料にもなるので、ゴブリンキングが誕生すれば確実に標的にされてしまうそうだ。


 もし俺がゴブリン集落をつぶして案内していなかったら、ゼストたちはゴブリンキングが誕生するまで気づくことすらできなかったかもしれない。

 そうなれば、ここから一番近いところにあるゼストたちのいる町が、確実にゴブリンたちに標的にされていたそうだ。


 今回俺が集落まで案内したことや、事前にゴブリンを倒していたことなどに対しての礼だそうだ。

 ゴブリン集落は俺が思ってたよりもやばい状態だったみたいだな。

 昨日見つけることができて本当に良かったよ。






◇◇◇◇



 ゴブリン集落のあと始末が終わったあとは、川辺で休憩したりしながら夕方には巣まで帰ってこれた。

 あと一時間もしないうちに日が暮れるので、ゼストたちはここで野営するみたいだ。


 巣の目の前にシートを敷き、その上にテントが組み立てられている。

 そして、すぐそばの地面の上には机と調理器具、食材が置かれている。

 今からゼストが夕食を作るみたいだ。

 ちなみにアリスとリアは毛布にくるまって昼寝をしている。

 夜の見張りのために今のうちに仮眠するそうだ。


 ゼストが切っている野菜の中には、ニンジンやジャガイモ、玉ねぎがあった。

 【鑑定】してみると、地球のものと名前も同じで町へ行けば結構安い値段で買えるようだ。

 食材の中には、豚肉に似ているが少し違うような肉もあった。

 【鑑定】によるとこちらはオークの肉で、程よい脂身と旨みが合わさっていておいしいと書かれていた。


 ゼストが野菜や肉を切るのを見たが、すごく手際がいい。

 剣を使ってたら包丁の扱いがうまくなったりするのだろうか?


「朱雀、この薪に火をつけてくれるか?」

「ピュイ」


 アリスが【次元収納】から取り出して置いていた薪に向かって、【ファイアーボール】を放って火をつける。

 薪は勢い良く燃えた。


「ありがとな」


 ゼストが鍋で野菜を炒めていく。

 火が通りだしたら、オーク肉を入れて炒める。

 いい感じに火が通ったところで、水の魔石(仮)から水を出し鍋の中に入れていく。

 ちょうどいい量の水が入った鍋を煮込んでいき、途中で粉末状の草を入れる。

 【鑑定】すると、この草は香草でスープなどに入れて煮込んだり肉と一緒に焼いたりなど、幅広く使えるうえに安く手に入るとのことだ。

 最後に塩を入れて味を調える。

 この塩は岩塩で、町の近くで取れる特産品のため割と安価だそうだ。


 こういうファンタジー世界だと塩・胡椒・香辛料は高価だったりするのだが、塩だけは安価で手に入るみたいだな。

 まあ近くで岩塩がとれるからこそなんだけどさ。

 胡椒や香辛料に関しては、ゼストたちは持っていないようだ。


 日が暮れるころには、ゼスト特製の野菜スープが完成した。

 いい匂いがあたりに漂っている。

 とてもおいしそうだな。


「飯できたぞー。そろそろ起きろよ」

「うぅ、ご飯~。お腹すいたぁ」

「ぅー、押し入れの中に肉が咲いてる……」


 アリスは問題なく起きたが、リアのほうは全然目を覚まさない。

 どんな夢を見ているのかすごく気になるような寝言まで言っている。

 「押し入れの中に肉が咲いてる」って、どんな状況だよ。


 結局、ゼストに肩を揺さぶられたことでリアは目を覚ました。

 ゼストを見ての第一声が、「おじいちゃん誰?」だった。

 |白髪(はくはつ)を|白髪(しらが)と見間違えて、目の前にいるのが知らないおじいちゃんだと思ったようだ。

 寝ぼけた状態のリアが面白すぎて、俺とアリスは大笑いしてしまった。

 笑いすぎて腹が痛い。


 アリスが【次元収納】からパンと器を取り出し、ゼストがスープを器に盛りつけていく。

 飯を盛り付けた器がみんなのところに行ったら、さっそく挨拶して食べ始める。

 今更だが、この世界にも「いただきます」「ごちそうさまでした」と言う習慣はあるようだ。

 もっとも、こっちのほうでは神に感謝しているみたいだが。


「んー、おいしー」

「ゼストの作るご飯はいつもおいしいね」

「まだあるからたっぷり食えよ」


 俺も注いでもらったのを食べる。

 野菜や肉の旨みがしっかり出ていて、香草や塩の味付けがちょうどいい。

 この口の中に広がってくる旨みがたまらないな。

 パンと一緒に食べてもうまいなぁ。


 ゼストの作ったスープはかなりうまかったので、あっという間になくなってしまった。

 俺はこれだけで満足だが、ゼストたちはおかわりをしている。

 あまり食べなさそうに見えるリアもおかわりをしていた。


 食べたあとはゼストは片づけをし、アリスとリアは一緒に風呂に入っている。

 そう、風呂だ。

 アリスの【次元収納】の中から風呂が出てきたときはさすがに驚いたぞ。

 四次元ポ〇ットかな? って思わずツッコみそうになってしまったよ。


 ちなみに、風呂は豪華なものではなく大理石に似た素材で作られた簡易風呂だ。

 その中に水の魔石(仮)で水を入れ、俺の【ファイアーボール】でいい感じに温めた。

 これで風呂の完成だ。


 アリスとリアが風呂に入っているので、今はゼストとふたりきりだ。


「なあ、朱雀」

「ピュ?」

「最初に会った時はお前のことを完全には信用できなかった。だけど、今日1日を通してお前が悪いやつじゃないってことは分かった。俺たちは明日帰るが、朱雀さえよければ俺らと友達になってくれるか? 特にアリスはお前ともっと仲良くなりたいみたいだしな」

「ピュイ!」


 友達になるというのはこちらとしてもうれしいことだ。

 それに、信用しても大丈夫ということが分かったのは俺も同じだしな。

 ゼストたちなら信用できる。


「そうか、ありがとな。あと、無理やり町に連れて行ったりはしないから安心してくれ。また俺たちがここに遊びに来るから、その時に仲良くしてくれればいいからな」

「ピュ?」


 てっきり「一緒に街に来るか?」とか言われると思ったんだが、言わないのはどうしてなんだろうか?


「俺らの町なんだが、最近領主が変わったんだよ。んで、そいつが強欲なやつでな。朱雀なんか連れていったら、そいつによこせといわれるのが目に見えているんだよ。それに、金を出すから朱雀をよこせって言いだす貴族はほかにもいっぱいいるだろうからな。図鑑にもそう書いてあったし。だから町には来ないほうがいいぞ。俺らじゃ守り切れないかもしれないからな」

「ピュイ!」


 そういえば、俺の種族は貴族に狙われているんだったな。

 確かに強欲な領主だったら絶対欲しがるだろう。

 それにしても、ゼストは本当に相手のことをよく考えてるよな。

 本当に思いやりのあるいいやつだ。


 アリスとリアが風呂から上がったあと、俺も入らせてもらった。

 久しぶりに風呂に浸かったわけだが、本当に気持ちよかったよ。

 やっぱりお湯につかるのはいいよな。


 風呂のあとはみんなで適当に雑談し、十時くらいにはリア以外全員寝てしまった。

 夜の見張りは基本最初がリアで、深夜一時くらいからはアリス、四時くらいからゼストと決まっているようだ。

 何もせずに寝るのも悪いので、俺もリアと一緒に見張りをした。


 俺の巣があるところは魔獣がほとんどいないので、特に何の問題もなく見張りは終わった。

 アリスを起こして交代したあとは、俺もリアもすぐに眠りについた。

 夜の見張りって結構大変なんだな。

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