第5話 ラピスラズリの魔洞窟


 一方、魔界の王宮パンデモニウム近郊の砂漠では。

 ユリウス、リア、ロミオの3人の勇者たちが急ぎ早に歩いていた。


「見えた…っ!」


 リアの喜びの声に、ロミオとユリウスはほっと息をつく。

 

 3人の勇者たちの前で、砂で象った巨大なライオン像が、あんぐりと口を開いている。

 これが、魔界と人間界を繋ぐ唯一の通路である〈ラピスラズリの魔洞窟〉の入り口だ。


 この魔洞窟の入り口は、常に開いているわけではない。


 人間界の月と同様に、満ち欠けを繰り返す魔界の月。

 それが満月である約1日間の間だけ、魔洞窟の入り口は姿を現す。


 そして満月が十六夜月になるまで欠けると、魔洞窟の入り口である砂のライオン像はただの砂に戻る。

 魔洞窟の入り口は閉ざされるのだ。


「……!急げ!!」


 ユリウスが声をかけ、3人の勇者たちは魔洞窟の中へと飛び込む。


 このまま、ラピスラズリの宝石で彩られた洞窟の内部を進めば、やがてその出口――人間界のオズワルド王国にある「精霊の丘」の井戸へとたどり着く。


 しかし、時間に猶予はない。

 もうすぐにでも、入り口が閉ざされてしまいそうなほど満月はかけている。


 勇者たちは急ぎ早に魔洞窟を抜けながら、もうこの通路を通ることが叶わないであろうパブロのことを思っていた。


「……パブロ」


 思わず、リアの頬に涙が伝う。

 リアは、パンデモニウムに残してきたパブロが奇跡的に追いついてこないかと期待を残していたのだが、それは叶わなかった。


 ラピスラズリの魔洞窟が一度閉まれば、次に開くのは、再び満月になる1か月後だ。

 傷を負ったパブロがそれまで生きているはずもなかった。

 

 勇者パブロは魔界に閉じ込められたまま、その一生を終えると思われていたのだ。

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