第13話 藤原良房

 小野歌子は、驚いていた。

 今までも、惟喬さまのことで道康さまとは何度かお話させてもらっていた。

 しかし、政治の話は聞かされたことはなかったし、遠い世界の事だと考えいた。道康さまから、仁徳天皇のように庶民の暮らしがよくなるような政治を行いたいとの提案に歌子は素晴らしいお心ですと返事をしてしまった。

 だが、具体的にどのようにしてどうすればよいのかと逆に訊ねられると、とたんに言葉に詰まってしまった。とりあえず、賛同してくれる同志を集めることが必要だと献策申しあげたのみだった。 

 歌子にはそ、の後特別に局をいただけることになった。彼女は、お上の妃でない。それでも局をもらえるのは異例であった。

 歌子は、そこでいろいろな人と会うことになる。優秀だが自分の出身の氏が低いため下級役人しかなれない文屋康秀、同じく親が傍系の天皇の為出世できない在原業平、出身が良くお上の考えに賛同し、出世を確実にしたい良岑宗貞、皇太子の志しを助けようと心に誓った静子の兄紀選之、その他多くの人々が歌子の局に訪ねてくるようになった。

 いつしか歌子は、小野小町と呼ぶようになっていた。彼らは道康の志しを実行するためいろいろな意見を言い合う仲間になった。

 そして、お互いの提案をまとめあげ献策を仲介する場所として小町の局が使われた。

 彼らは、殿上人でないため道康に会う資格がないからだ。小野歌子は、道康に彼らの提案を申しあげる係となった。そして、最後には殿上人の貴族の協力が必要だということになった。 

 道康は、左大臣の源常、大納言源信にそれとなく話してみた。彼らは、一応賛成したものの消極的であった。

 源氏は天皇を守る役割を与えられており、新しいことをして失敗し、天皇家の屋台骨が崩れるのを恐れていた。源氏の大臣二人が動かないので、道康は右大臣藤原良房に頼むしかなかった。良房はここで一案を思いついた。

 この案こそ良房最強の一手となった。

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