10、佐々木絵美は天使

「あー、疲れたぁぁぁぁぁぁ」


今日は碧、ミドリ、詠美とセカンドのメインキャラクターたちと手探りな会話をしまくって疲労が溜まる。


ファーストキャラクターである理沙、永遠ちゃん、三島、美月、ヨルとこれらは数年かけた攻略に対し、セカンド以降は短期間に攻略しないといけないからな。

タケルの影でサポートするのも楽じゃない。


あと、詠美の思わせ振りな態度もドキドキしてしまう。

距離感が1番掴めないのは詠美説あるで。


鞄を下ろし、ブレザーを投げ捨て、ワイシャツで部屋の床に倒れる。

癒しが……、癒しが欲しい……。



「…………」


中の人がごちゃごちゃとなんか言っているが、頭に入らない。

多分、まだ時間は18時になったばかりなんだろうけどすでに眠りに落ちたい。

初の12時間睡眠に挑戦しようかってくらいに疲労がピークだ。


あれ?

三島とエナジードレインのコントロールを習得する際はそれ以上に眠ったんだっけ?

いや、そんなことどうでも……。


「…………」


ベッドに入る力もなく、冷たくひんやりした床に張り付けにされたように動けない。

夕飯の時になったらおばさんが呼びに……。




『こんにちは、秀頼く……秀頼君!?ちょ、大丈夫!?大丈夫!?』


遠いような、近いような。

距離がわからないのに、天使が俺を呼んでいた声が響いた……。









「ん……」

「起きた、秀頼君?」

「…………天使?」

「もう、秀頼君ったら!本当のこと言ったら照れちゃうよ!」


嬉しそうに弱っちい力で肩をバシバシと叩かれる。

意識が覚醒していくと、それが佐々木絵美の姿ということに気付く。




そりゃあ、天使と見間違うよな……。




「もう!秀頼君、無理し過ぎなんじゃないの!?ちょっと熱あるみたいだよ!?」

「ま、マジで!?どれくらい寝てた?」

「10分くらい。まったく、わたしが秀頼君をベッドに運んだんだからね!」

「…………」


素の力なのか、ギフトの力なのか、火事場のバカ力なのか……。

いや、あえて触れまい。

ただ、絵美は床に倒れた俺をベッドに寝かせるパワーは持っているらしい。


「む、無理なんかしてない……。季節の変わり目が弱いだけだ」

「だとしても、君病人。明日、学校はお休みする。わかった?」

「俺が風邪ごときで寝込むとは……。不覚っ……」

「ほらぁ!頭おかし過ぎてゆりかみたいなこと言ってる!」

「え!?」


一瞬、ゆりかと同じ扱いをされて脳が覚醒する。

な、なんか複雑……。


「わたしたちに言えないところで何かあったんじゃないの……?」

「絵美……」

「秀頼君が……、みんなに黙って何かをやり遂げようとしてるのわかるよ?……でも、君が倒れたらわたしは心配するんだよ。秀頼君が想像している100倍は気にかけているんだから……」

「ごめん……」


確かに最近、気を張りすぎていたかもしれない。

タケルが関に襲われるのを防いだり、タケル尾行に気配を消して体力を消耗したりと色々身体に無理をし過ぎたのかもしれない。

絵美に心配をさせてしまったことに申し訳がなくなる。

どのくらい熱があったのかを尋ねると、『37度5分』程度とのこと。




「ねぇ、秀頼君が何かをずっと頑張っている理由は……教えられない?」

「…………ごめん」

「そっか……」


絵美には、本当に巻き込んで欲しくない。

いや、看病してもらい、現在進行形で巻き込んでいてなんなんだという話ではあるのだが……。

それでも、まだ打ち明ける勇気がない。


「だから……、すべてが終わったらみんなに……、……絵美に打ち明けるよ」

「すべてが終わったら……?」

「うん。俺の秘密、全部教える」


ギフトのこと。

前世のこと。

エニアのこと。

円のこと。

ヨルの過去のこと。

原作のこと。


すべての禁句を、絵美に告げる。

みんなに、告白する。




「それはいつになる……?」

「それだけはわからない。…………ただ、絶対に絵美を幸せにさせることには変わらないから信じて欲しい」

「…………うん。わかった。絶対だよ?」

「あぁ、絶対。だから、もうちょっとだけ待って欲しい」

「絶対、わたしを……、幸せにしてね?」

「当たり前だよ」


原作の必ず殺される君の呪縛を、──壊す。

そんな、可能性を俺が打ち破る。

幸せな大人になった絵美と、出会いたいから……。


「じゃあ!絶対秀頼君に幸せにしてもらう!」

「あぁ。楽しみにしておけよ」


俺の命を捨てても、絶対に絵美だけは守り抜く。

魂に刻む。


エニアだろうが、ギフト狩りだろうが、秀頼だろうが……。

君という聖域には触らせない。



「ちょっと……、今から寝るわ」

「うん。おやすみ」


絵美から握られた手をぎゅっと握りかえす。

少しでも、絵美を近くに感じたい。


「…………」

「寝た?」

「…………ん」


ヤバい……。

気持ちいい……。

なんか……、前世の母さんを思いだしちゃうな……。

ごめんな、先に死んじまって……。





『秀頼君の秘密って何かなぁ!?絶対に聞き出してやる!』


絵美の声で、そんな問いが聞こえた気がする。


お手柔らかにな……。

というか、1番は何を聞きたいのさ?


俺のギフト?

俺がやり遂げようとしてること?

なんなんだろうか?


「本命は誰なの!?秀頼君の好みのタイプってどんな子なの!?」

「しゅぴぃ……、しゅぴぃ……」

「本当に寝ちゃった……。このまま秀頼君の童貞欲しいんだけどやっちゃて良いかな……?んー……、でも求められたい。やめるか……。とほほ……」


絵美に手を握られて、安心したまま、深い眠りに落ちていく。

離したくないなぁ。

この天使の手……。


でも、次に目を冷めたらこの温もりは消えてるんだろうな……。

嫌だなぁ……、ずっと絵美に側にいて欲しい……。










「そうだ!明日、中学の時の秀頼君の夢!叶えてあげよっと!楽しみにしててね、秀頼君……」














>>三島とエナジードレインのコントロールを習得する際はそれ以上に眠ったんだっけ?


第8章 病弱の代償

39、津軽円は機嫌が良い

こちらを参照。




>>タケルが関に襲われるのを防いだり、

Q.これいつ?

A.こちらを参照。

第16章 セカンドプロローグ

4、上松ゆりかのジト目






絵美は秀頼がおかしいというのはとっくに気付いています。


第13章 因縁

15、潰れた花から咲く悪魔


この辺りの決闘の話は、ヒロインたちが踏み込みたいけど踏み込めなくてモヤモヤしています。

いつか、秀頼の口から告白出来ると良いですね!




そろそろ、あのフラグを回収するよ!

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