15、五月雨茜

「達裄さん、本日はありがとうございました。こちら、ほんの軽いお気持ちです」

「おー、スタヴァじゃん」


部屋に招かれ、俺は氷が溶ける前にキャラメルフラペチーノとケーキを差し出す。

動画のデータが入ったUSBを手渡され、テンションが上がる。


「うわああああ!すげぇ!USBじゃん!」

「なんでそんなにテンション上がってんの?」

「なんか、USB買う時ってテンション上がんないっすか!?」

「そ、そうか?」


キャラメルフラペチーノに、紙ストローを加えながら、どうでも良さそうに流される。

達裄さんの興味はUSBより、キャラメルフラペチーノらしい。


「甘い……」と口にしながら苦い顔をして、上のクリームへストローを上げて、クリームを吸い込んでいた。

やるやる、そういうの。


「ていうか、入学式直前呼ばれてたみたいだけど秀頼って悠久と仲良いの?」

「仲良くはないかと……。悪い意味で目を付けられてまして……」

「あいつも、ちょっと面倒な奴だからな。弄ってて面白い子なんだけどね」

「生徒なんかが学園長を弄れないですよ」


俺が達裄さんの立場なら、弄りまくってたと思うけど。


「旨いんだけど……。甘すぎて3分の1飲めば満足するなこれ……」

「達裄さんって甘いの苦手そうな人ですもんね」

「じゃあなんで甘いの買ってきた?」

「スタヴァの姉ちゃんいるとつい財布の紐が緩くなって……」

「誰?」


達裄さんにスタヴァの姉ちゃんは通じなかった。

通じる方が嫌だけど。


「絵鈴にあげよう。おーい、絵鈴!」

「誰?」


妹は恋、葉子、音、瑠璃、めぐりの5人じゃなかったっけ?

姉は巫女だし、マジで知らない女の名前が出てきた。


「何よ、スノー?」

「え?家にいるの?マジで誰?」

「居候」


達裄さんの簡単過ぎる説明が終わる。

ずっと6人で暮らしていると思っていたのに、居候まで居たとか知るわけない。


黒い髪にヘアピンを付けて、オデコを出している20代ぐらいの女性が現れる。

達裄さんの周りに、色々な女がいるからたちが悪い。


「というか、あんたこそ誰よ?ギフトアカデミーのブレザー着てムカつくわね」

「なんで俺、ブレザーだけで怒られてるの?」

「あたしが、悠久を嫌いだからよ。あんたがギフトアカデミーの生徒ということは、悠久の生徒。相手にするまでもない」


いきなり現れてプリプリと怒っている。

悠久……、あんた嫌われ者か……。


「可愛いだろ?お姉ちゃんが嫌い系女子って奴」

「え?」


悠久の妹なの?

本当に突然現れるから達裄さん周りの人間関係が本当にわからない。


「じゃあ、ほら。キャラメルフラペチーノとケーキあげるから。後は大人しく引っ込んでいなさい」

「なんで飲みかけ渡すの!?汚いじゃん!バカなのあんた!?」

「大丈夫。秀頼じゃなくて俺の飲みかけだから。ストロー変えれば飲めるっしょ?」

「なんだ、スノーの飲みかけなら良いや。貰っとく」


躊躇いなくキャラメルフラペチーノに口を付ける。

「旨い!」って言いながら、目を輝かせていた。


「か、感謝する」

「素直にありがとうって言えよ」


絵鈴さんが赤くなりながら、顔を背ける。

悠久と絵鈴さんを見て察する。

あぁ、こいつもこの男の女なのね。


「あと、これくれたの秀頼だから。秀頼にもお礼言っときなよ」

「か、感謝する」

「だから素直にありがとうって言えよ」

「こ、個性的な居候ですね……」


達裄さんに、遠慮なくびしばし突っ込まれる。

そのまま、1度もお礼を口にすることなく飲み物とケーキを持ち去っていくのであった。


「とりあえず、動画の内容確認だけしとくか」

「き、緊張してる星子きゃわわ!」

「和ちゃんにもスポット当てたから」

「平常心な和きゃわわ!」


大変な満足した出来上がりの動画であった。


「た、達裄さん……。か、感謝する」

「素直にありがとうって言えよ。なんでお前まで絵鈴化してんだよ」

「ありがとうございます!」





こうして、俺の高校2年生の生活が始まりを告げたのであった。

原作は俺が知らない間に、じわじわと近付いてくるのである。

それをどうやって退けるのか。

まだ、俺にはわからない……。







─────






「先生、連れて来ました。彼女が、五月雨茜です」

「五月雨……、茜……。よろしくお願いいたします」



関は放課後、後輩であるギフト狩り候補の両の眼の色が違う娘を連れ出し、進路相談室へ足を運ぶ。

そこには、機嫌の良さそうな顔で2人を待っていた教師が待ち伏せていた。


「茜君ね。なるほど、よろしくね。僕が、ギフト狩りの『ギフトリベンジャー』だよ。住みやすい世界を僕たちと作っていこうではないか」

「…………はい」


五月雨茜は、ギフト狩りである。








第9章 連休の爆弾魔

8、『ギフトリベンジャー』


五月雨茜の名前はここが初出。

小説書いてきて13年、オッドアイ属性のヒロイン登場は桜祭の中で初だったりします。






絵美と美鈴の名前は絵鈴から取ってます。

カクヨムで達裄の話してないので違和感ありますが、クズゲスキャラより達裄周りの登場人物の方が出来上がりも設定の多さも段違いに早いし多いです。


絵鈴と悠久は腹違いの姉妹。

絵鈴は悠久が本気で苦手。

壮大とか何言ってんのこいつ?的な目で見ている。

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