8、明智秀頼の本音
『じゃあ次の質問!みんなに素っ気なくされたってタケルちゃんに聞いたけど、どんな1日の気分だった?』
白々しく、秀頼の素っ気ない1日の黒幕が自分自身なのに千姫が問う。
因みに、冒頭に『あ……』を付けて会話するような指令を出したのも彼女である。
『えっと……。それは……』と何か思い止まった姿を見せる。
「では、問題!ヨリ君はこの後──」
「止めないで!」
「はぇ?」
誰が言ったのか千姫が停止ボタンを押しかけたのを言葉で遮る。
本気で全員が映像に集中していた。
残念な笑いを上げていた美月も含めて。
その映像の中の秀頼は儚く、自嘲気味に笑ってボソッと呟く。
『…………寂しかった。決闘を受けてから、俺の居場所がどこにも無くなったみたいで。苦しかった……』
『ヨヨヨヨヨ、ヨリ君!?』
素っ気ない指示を出した張本人の良心にダイレクトアタックした言葉と表情である。
(どうしよう……)と千姫がカメラマンのタケルに目を向けるも、(知るかボケ)と突き放すような表情をしていたのであった。
『……でも、もしかしたらこれが本当の俺だったのかもしれない。ずっとずっと嫌われていて、切り捨てられたんだ……。そういう結末しかなかったんだよ……』
「明智君……」と、色々思うところがたくさんある円が苦しい表情で画面から目を離せなかった……。
『いや!違うと思うよ!?うん、うん!みんなヨリ君好きだと思うよ!?』
『ありがとう……。そんなこと言ってくれるなんて千姫は優しいなぁ……。本当に可愛いなぁ』
『ちょ、ちょっと!?なんであたしの好感度上がってんの!?違うよ!?そういうんじゃないよ!?』
『わかってるよ、フォローじゃないって言いたいんだろ。優しいなぁ千姫。俺、ずっとお前のこと誤解してたよ……』
『見事なまでにわかってない!』
この動画を見ている千姫は嫌な汗をかきながら、そーっと美月のマンションから出ようと足を立ち上がらせた時だった。
「待て、千姫。ずいぶんお前ばっかり良いポジションにいるじゃないか」
「あ、あははー。へ、編集するの忘れてた……」
「あたしらが悪者で、お前が救世主みてぇじゃないか……」
「あ、あははー。か、可愛いくテヘッ☆許して☆」
ゆりかとヨルコンビから捕まり、逃げ場を失った千姫はスタチャスマイルで許しを請う。
それを見た星子が「不快です」と切り捨てる。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?待って!?」
「結局、千姫も秀頼さんを狙っていた同類だったんですね!?」
「ち、違うんだってばぁ!」
西軍メンバーから総スカンで責められ涙目になる千姫。
みんなが怒り過ぎて逆に冷静になっていた絵美と円は「ヨリ君王終わったね」「そうだねー」と黙って動画を見続けた。
「ん?」
そして、最後の質問らしき問いが再生を続けた。
『じゃあ、最後!最後の質問いくよヨリ君!』
『はぁ……』
『もし、この動画がヨリ君のことを大好きで大好きで大好きで堪らない子が見ていたとしたら何を伝えたいですか?』
『え?この動画誰かに見せるの?』
『いえいえ。ヨリ君がジャパン、もしくは世界で大物になった時にテレビ局に送るか、動画配信サイトにアップロードします』
『そんな動画、残される俺はたまったもんじゃないよ!』
秀頼がいつもみたいに突っ込むと『エヘヘ』と笑う千姫。
『ったく』と言いながらも、秀頼はみんなに可愛がられる千姫の魅力がなんとなくわかったなと考えていた。
『でも、とりあえず……。こんな俺を好きになってくれてありがとう。俺なんか本当に弱っちくて欠点ばかりの人間だけど、そんな俺の悪い部分も受け入れてくれたら嬉しいな』
そうやって、秀頼は心の底からの感謝を口にする。
『うわー……。最後の最後にベター』
『うるせぇよ!』
『ははははは』
千姫にからかわれ、カメラマンの笑い声がレンズの視界に入らないところから聞こえてくる。
絵美と円だけに限らず、みんないつの間にかその動画に釘付けになっていたのであった……。
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