6、ヨル・ヒルは気付く

怒涛の授業も終えて、放課後。

具体的な策もなく、女状態から戻らなくなってしまった。

そんな中、『明智秀頼を男子に戻す会』リーダーの絵美はいの一番にやって来て、燃えていた。


「わたしは絶対に絶対にぜーったいに秀頼君を男に戻します」

「頼もしいわね」

「あと女性口調はやめてくださいよ」

「う……。わ、わかった……」


なんだろう……?

女口調は意識的にしているわけではなく、可愛く振る舞わなければならないという義務感が生まれてしまっている。

多分これもギフトの影響だろう。

発言に気を付ければなんとか口調はいつもみたいに直せそうだ。


「あ……。でも、この姿で秀頼と呼ばれるのは抵抗がありま……。抵抗あるな。ガッツリ男の名前だからね。なんか嫌だ」


絵美にそう説明していると、理沙や永遠ちゃんなどいつものメンバーが集まってきていた。


「頼子って呼んで欲しい」

「名前も見た目も星子の姉って感じですね!」


永遠ちゃんが女姿の私を見て、そんな感想を漏らした。


「てか何やったら明智が頼子になるんだよ」

「いや、明智は捨ててないよ!?」


ヨルが不信感のある目で見てくる。

そうだ!

タケルにタオル返さないと!


「タケルさ……、タケル」

「……え?え?」


今日は上の空のタケルは反応が鈍い。

ぼーっとしているし、遠くへいるしで距離感が遠い……。

男が女になるなんて……、とドン引きしているのかもしれない。


「実はタケルに借りたタオルなんだけどこれもギフトの影響で女モノになっちゃった……」

「あ、可愛い!」


妹の理沙がピンクのタオルを見て嬉しそうな声を上げる。


「あ……。べ、別に気にしてねーけど……」

「新しいタオル買って弁償しようか……?」

「い、いや……。そ、それで良いよ。俺が水掛けたの悪いんだし……。こっちで洗濯もするしそのまま返却して良いよ」

「洗濯するの、どうせ私だけどね」


理沙の軽口を受けながら、ギフトの影響を受けたタオルをタケルが受け取る。

ここからが、私の確認したかったところだ。

さて、ギフトの影響を受けたタオルは『アンチギフト』持ちのタケルに触られて元に戻るのかの実践だ。

自分に振りかかるギフト能力は消せるはずだが、果たして……。


「なっ……!?」

「あっ!?」


俺とヨルが同時に息を飲む。


「ん?何を驚いているんだ?」

「べ、別に……」


ヨルが誤魔化すような声を出す。


「可愛いタオル貰っちゃったね、兄さん」

「う、うるせぇよ」


結局、『アンチギフト』でタオルが元には戻らなかった。

つまり、頼子が秀頼に戻るのはタケルでは不可能になるらしい。


弱ったな……。

タケルの奴、全然ギフトを使いこなしていないじゃねーか……。

使いこなす場がないとはいえ、もうそろそろギフトを使いこなせないと最悪積みかねないぞ……。

ギフト狩りにエニアと戦う希望の星なんだが、ちょっと焦りが出てくる。


『命令支配』と『アンチギフト』は結構根本的に違う点がある。

『アンチギフト』は成長するギフトに対し、『命令支配』はほとんど成長しない停滞のギフト。


ギフトを手にした瞬間からほとんど修行なしでギフトの力を使いこなせるのが『命令支配』だ。

欠点として、ほとんどの伸び代がない点がポイントだ。

RPGに例えるなら、ギフトを入手した時点でレベル50くらいの高性能キャラクターだとしても、レベル55程度でカンストしてしまうのでほとんど成長しないのだ。

星子のギフト『キャラメイク』もそのタイプになると思われる。



しかし、タケルの持つ『アンチギフト』は成長形のギフトだ。

同じくRPGに例えるなら最初はレベル5くらいから始まるが、レベル100までガッツリ伸びていきどんどん覚醒する。

原作においては美月が『月だけの世界』のギフトを全然使いこなせなかったが、使いこなすことにより月が出ていること、5分の制限時間などのキツすぎる縛りを緩くしたり、完全に無くせることも示唆されていた。

主人公やヒロインに相応しいギフトだと思う。



一長一短な2つのギフトの特性の型だが、タケルはおそらくまだ『触ったもののギフトが解ける』レベルにすら到達していないことになる。


理沙ルート終盤、絵美から物理的に抑えられたタケルが『理沙への想い』を爆発させたことで、絵美に掛かった『アンチギフト』を無効化させるシーンがある。

原作の時系列にほぼ追い付いている現状。


タケルが希望の星どころか、普通の少年で終わるバッドエンドに向かっているのではないかという不安が過った。


「すげぇ、フリルまで付いてるよ」

「高そうなタオルに見えますね」

「ウチはもうちょっと地味なの希望」


タオルで盛り上がるタケルに頭が痛くなってきた……。












偽りのアイドル編の大人タケルは、ほぼ自由自在に『アンチギフト』を使いこなせていました。

常に触ったもののギフトをかき消す『アンチギフト』を発動させていましたが、任意でギフトを消さないことも出来ていました。

あの世界観なら、常に『アンチギフト』に守られていた方が安全でした。



『命令支配』は語られている通り、伸び代はありません(進化しないとは言ってない)。

読めばわかります。

第8章 病弱の代償

第200部分 番外編、宮村永遠(バッドエンド)の後日談





次回、達裄とか直す方法知ってそうじゃん!

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