57、津軽和は宣伝をする
555万PVに到達しました!
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「ウチは谷川咲夜だ。何を隠そう、喫茶店『サンクチュアリ』のマスターの娘である」
「どこそこ?」
「ぐっ……。秀頼とはコーヒー仲間であり、将来あいつが店を継ぐぞ」
美鈴から伝わらないと切り捨てられる。
咲夜の最後の呟きはメンバー全員から総スルーされたのである。
「駅から少し離れたところにあるスタヴァのコーヒーより美味しいと評判の店だ。日々、常連客で埋まっている店だぞ。マスターは遠目で見ればそこそこイケメンながら、その娘であるウチの容姿は(マスターからは)可愛いと評判のお店だ!おい、深森姉なら伝わるだろ!?」
「いや、残念ながら……」
美月も少し考えてみるが、自分の記憶に引っ掛かりすらしなかった。
「その店のバイトリーダーが天使みたいだと有名な店だぜ」
「いや、ウチはそんな話知らん」
「おい、お前の店のフォローだろ!?」
「ただ、バイトリーダーはテンション高くて鬱陶しいとウチは思っている」
「お前がテンション低すぎるんだよ!」
喫茶店のバイトリーダーとは名ばかりの唯一のバイトであるヨルと咲夜が軽いジャブの口喧嘩が勃発した。
「えー?本当にスタヴァより美味しいの?」
「私はスタヴァより好きで足運びますよ」
「ほう。永遠が言うならちょっと興味を持つな」
深森姉妹が永遠の言葉でマスターのコーヒーに興味を持ちはじめた。
「どんな雰囲気の店なの?」と美鈴に聞かれて「落ち着ける雰囲気なんですよ」と永遠が語っていく。
「引っ越したばかりの時に見付けて以来、3年通ってます」と永遠が自慢気に教えると、美月も「店の地図のURLを教えてくれ」と交流が始まる。
「…………なんでウチの紹介より永遠の自慢話の方が食い付きが良いんだ……?」
「人望の差だな」
「ゆりか、人望とはどうやって稼ぐ」
「誠心誠意に人と接するかだろう」
「じゃあウチには無理だな」
「答えが出たじゃないか」
咲夜が少し遠い目をしていた。
「たまに秀頼さんも通っていますよ」
「美鈴も行きたい!」
咲夜の耳に美鈴のはしゃいだ声も聞こえてきた。
「もはや秀頼が招き猫みたいになっているじゃないか」
「あれですよ、あれ。あのつまんねーやつ。『てじなーにゃ』とかいうやつ!」
和が秀頼の真似をしながら猫っぽい仕草で場をまとめた。
「…………」
円が前世の豊臣光秀の『てじなーにゃ』を思い出し、ほんの少し頬が赤くなる。
「そもそもマスターさんの店『サンクチュアリ』って言うんですね」
隣の絵美から円へ話掛けられたことで、正気に戻り思い付いた相づちを打つ。
「多分、明智君も知らないと思いますよ」
「秀頼君、マスターさんが好きなわりに本名や店の名前とか興味ないですからね」
絵美と円がコソコソと秀頼の軽口を言い合っていた。
(私もマスターの本名知らないし、常連なのに店の名前もはじめて知ったんだけど……)、星子はこの場で口には出来ないと気まずい汗をかきながら早く喫茶店の話が流れないかと待っていた。
明智兄妹は、その大ざっぱなところが似ているのであった……。
「うっす!次は私っすね!津軽和っす!そこにいる津軽円の妹っす!秀頼先輩はぶっちゃけ顔が好みっす!よろしくっす!」
「うむ、よろしくっす!」
「いや、咲夜先輩とは何回も絡んでいるじゃないですか……」
「っす!なんて普段そんなに使わないだろ」
咲夜が乗っかったのだが、ばっさりと和に裏切られた。
「私は別に姉者の双子とか、理沙パイみたいに同学年とかそういうのはなくて普通に中学生なんでガチ後輩になりますね」
「そ、そうなのか……。因みに咲夜は先輩なのに、わたくしや理沙にはパイ呼びなのか?何か違いがあるのか?」
「え?普通にノリ?」
「意味はないのか……」
「ないっすよー、咲夜先輩もたまに谷パイとか呼ぶし。普通にツキパイも美月先輩って呼ぶかもなんでしくよろ」
誰相手にも舐められないように舐めた態度なのは小学生の時から変わらずである。
「…………」
そんな妹の礼儀のなさに頭を痛める姉であった。
秀頼の前だけでなく、西軍グループであっても舐めた礼儀知らずなのはぶれない和であった。
「因みに秀頼先輩と同じ扱いして欲しい人いるっすかー?」
「秀頼様と同じ扱い?」
「はい!秀頼先輩と同じあだ名で呼んであげるサービスがあります。いかがですか、すずパイ?」
「え?えー?秀頼様と同じ扱いなんて!何?」
美鈴がちょっと頬を赤く染めて聞いた。
円含め、数人が察して目を反らす。
「はい!ゴミクズ先輩呼びになります!」
「嫌よ!お断りだわ!」
「えー?つまんなーい!ぶーっ!」
「あなたの性格と態度が1番ゴミクズよ!」
全員が美鈴の突っ込みに同意した。
親友の星子も含めて、である。
「私をゴミクズと呼んで良いのかな、美鈴先輩」
「な、何がよ……?」
「私、こう見えて中学生部門の『頼んだらやらせてくれそうな女子ランキング』1位に選ばれました!たくさんの和ファン男子に八つ裂きにされます」
「世も末ね……」
美鈴は呆れたように口にした。
「そういえば円さんもベスト5らへんにいたような……」
「知らない」
理沙がボソッと真実を語ったものを、円がその事実を抹消させた。
何故か津軽姉妹はそういう目で見られやすかった……。
「あと、私はネットで秀頼先輩をモデルにした小説書いているんで応援よろっす!夢はラノベ作家目指してます!」
「秀頼様がモデルなら興味あるわね」
「わたくしも秀頼がどんな物語の主人公になるか想像ができない。少しだけ教えてもらっても良いだろうか?」
「はい!これも宣伝活動ですから!秀頼先輩をモデルにした主人公がゲームの悪役に転生するんす。なんやかんやあって悪役なのに主人公より目立っていくという成り上がりストーリーですね!」
因みに深森姉妹以外の西軍メンバーはみんな毎日の更新を楽しみにしているのである。
円は、『たまに本物の秀頼と似ている状況に陥っていることとリンクして、リアリティある!』と姉が1番更新を待ち望んでいた。
「書籍化はしないのか?」
「したいっすよ!私はずっとコンテストに応募したりとしてますが落選ばかり。中々人気を維持するだけでも難しいですから。私は書籍化の連絡を今か今かと待ち望んでいます。昨日ようやく300ページ突破したんで応援よろしくっす!」
「300ページは結構ボリュームあるな」
「ただ、スロースタートなんで序盤がキッツいっす。2章辺りは批判ばかりなんで最低6章くらいは読んでくださいね」
「6章が1番きつい内容なんだけど……」
星子が青ざめた顔で割り込んできた。
それを絵美や理沙が苦笑して同情していた。
「我は7章の敵対していたヒロインが1番素敵だと思うぞ」
「ボクは8章のヒロインが好きですね!美月さんと美鈴さんは10章ヒロインが気に入ると思います」
ゆりかと遥香もちゃっかり宣伝をしていた。
永遠が深森姉妹に和が書いている小説のURLを送り、ようやく次の星子へとまわってきた。
†
和がラノベ作家を目指しているのはこちらで語られています。
第10章 月と鈴
第272部分 29、細川星子は時間がない
和が作家の小説は実在しませんので、検索しても見付かりません。
何か思い当たる人がいたらエスパーですね!
次回、星子のターン!
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