21、月【案内】

お父様みたいな強い男という雰囲気が出る。


「じゃあまずは美月のクラスから調べるか。入って良いかな?」

「遠慮せずに」

「OK。失礼しまーす」


律儀に声を出すタケルの変な行儀の良さに頬が緩くなりそうになる。

いけない集中集中。

タケルを案内するようにわたくしも教室に入る。


「み、み、み、み、ミツキが男連れだぁぁぁ!?」

「ちょ、やめろ詠美!?」


いの1番に詠美から驚きの声が上がる。

目敏い彼女に早速発見されてしまった……。


「か、彼氏的なアレですか……?」

「か、彼氏!?ち、違うに決まってるだろ!?き、昨日会ったばかりだぞ!?」

「赤くなってー、ムキになってー、あやしー」


「にししし」と詠美がオモチャを見付けたとばかりに笑う。

「違う」と否定しても、目が信じていない。

まさか永遠と同じ男に対してわたくしが『ムキになってる』と指摘されるとは思わなんだ。


「おっすー!ミツキの彼氏ぃ!」

「ちょ、詠美!?」

「か、彼氏!?お、俺が!?」

「お、彼氏も赤くなって照れてる。これ脈あるぞ」

「やめろ詠美!」


好き放題してくる詠美を止めるが、自由気ままに動く彼女はわたくしの制止など意に返さない。


「彼氏ぃ!名前なんてーの?」

「た、タケル……」

「おぉ、タケルか。よろー、ワタシ詠美ねー」

「あぁ、よろしく……」


詠美の攻撃力に圧倒されながら会釈するタケル。

もう既にタケルと詠美の上下関係が決まってしまった瞬間であった。


「ん……?」


タケルが詠美の顔を見た瞬間、動きが止まる。


「どうしたタケル?」

「……いや、別になんでもない」

「?」

「ちょっと詠美の顔見て驚いただけだから」


詠美も特に心当たりがないみたいで頭に?が浮かんでいる。

タケルが『なんでもない』と言うならなんでもないんだろうけど……。


「なになに、タケルぅ?ワタシに一目惚れぇ?」

「あぁ、それはないんで大丈夫っす」

「むかつくなこいつ……。先輩として締めるかミツキ」

「やらないからな。しかも同学年だし……」


詠美はノリで生きてるところがあるからブレーキ役の遥香がいないとずっとこんな感じだ。


「タケルは何組?」

「俺は5組だが……」

「……あぁ。ひぃ君と同じクラスなんだ」

「ひぃ君?」

「こっちの話」


詠美が気にしないでという顔で笑う。

タケルのクラスにひぃ君たる生徒がいるのだろうか?


──明智秀頼?


…………まさかな。

あれはない。

詠美とあの男の接点が見えないし別人だろうな。


「それで?ミツキがタケルを連れ込んでるけど何してるの?」

「人探しみたいなもんさ。ちょっと呪いを解けるギフト能力者を探していてな。詠美は心当たりないか?どんな些細なことでも構わない」

「呪いを解くギフト能力者?知るわけないじゃん、そんなの……。てか、ふわふわし過ぎじゃない……?」

「だ、だよな……」

「ターザンは呪いとか呪術とか効かなそうじゃね?うん、効かないよあいつ」

「お前のイメージだろそれは……」


ただただワイルドな見た目をしているだけだ。


「真面目な話ターザンは荒事に特化したギフトだから違うけどね」

「というかお前はどこからそんな他人のギフトの情報が得られるんだ?こないだも中山や村西などのギフトを知っていたが……」

「ターザンとは同中なだけだし……。他の中山らはベラベラ自慢してるのを聞いただけ。ミツキが疎すぎるだけだよ」

「わたくしのせいなのか……」

「まぁ、自慢の彼氏がいるなら他人なんかどうでもいっか」

「だからタケルはそんな相手ではないと……」

「はいはい。ごちそうさまです」


詠美にのらりくらりとかわされていると、タケルから肩を触られ首を振られる。

完全に詠美に諦めているみたいだ。

詠美にお礼だけ言って、わたくしとタケルは廊下へと戻って行くのであった。


「ターザンは良いのか?」

「そんなにターザンに興味ある!?」

「荒事特化のギフトが見たかった……」

「ミーハーか!というかターザンはしばらく休んでるから学校いないぞ」


タケルもギフトに興味があるお年頃らしい。

確かにギフトが特別憧れる気持ちはよくわかる。

わたくしもギフト陰性時代はギフト持ちを羨ましく感じたものだ。


「にしても悪かった……。詠美があんなに弄ってくるとは……」

「気にしてねーよ。…………それにウチのクラスもああいう奴いるから慣れてる……」

「?」


この時はタケルの言った気持ちが伝わらなかった。

しかし、タケルのクラスである5組に伺った際にはその意味が理解できてしまうのであった……。















原作のゲーム描写では、詠美自体がまだメタフィクション世界ではキャラクターとして存在していなかったので(詠美はセカンドシーズンからの登場であるため)、

女子生徒A役の立ち絵なしのモブを詠美が演じていました。

やたら美月をからかう生徒役でした。


ひぃ君関連はモヤモヤするかもしれませんが、モヤモヤしていてくださいませ。

ひぃ君は、この時系列では遥香に構っているおかげ(?)で、『月と鈴』編では出番かなり抑えめです。




ターザンの荒事特化のギフト……。

明かされると良いですね(フラグ)。





次回、美月がタケルのクラスへ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る