15、谷川咲夜はじゃれあう
今日は朝の通学を全員で済ませ、朝のホームルームになるまでタケルと2人で廊下にて談笑をしていた。
「それでよ、理沙が100均でこれ買ってきたんだけど便利じゃね?」
「へー。確かに便利だね」
「クイズ番組みたいだろ」
「確かにー」
タケルのスマホを見ながら100均の面白・便利グッズのプレゼンをしていた。
これは俺も買ってみようと思ったり、これは必要ないなと思ったりしていた。
そんな時であった。
「あ、明智さん!」
「お、三島じゃん。どうした?」
声をした方向を振り向くと三島が俺とタケルの側に来ていた。
部活も同じタケルと三島でも会釈する。
「あ、あの……。美月さんが明智さんに話があるので」
「美月?」
「あぁ。おはよう秀頼」
「おぅ、おはよう」
三島の後ろにいた美月から挨拶される。
相変わらずの美人で、朝から目の保養である。
「そちらは?」
「あ……。こっちは十文字タケル。俺の親友」
「うっす。おはようございます」
タケルが美月に挨拶を交わす。
お?
主人公と攻略ヒロインの邂逅シーンである。
いつもこの瞬間がタケルがヒロインに惚れるんじゃないか?とハラハラする瞬間だ。
美鈴の好感度アップイベントもちゃっかりこなした(扱いにカウントしている)ので、美月と接点持つイベントが来たところで驚きはない。
「もしかして理沙のお兄さんですか?」
「そうっすね。俺が理沙の兄貴のタケルです。理沙の知り合いでしたか。よろしく」
「うむ。タケルもよろしくな」
「えと、……じゃあ美月で良いか?」
「ああ。大丈夫だ」
スゲー……。
理沙と乙葉の身内ヒロインとメインヒロインであるヨル以外の永遠ちゃんと三島を名字で呼ぶタケルが美月を名前呼びしている。
これ、ワンチャン美月ルートあるな。
もっともタケルが美月を深森呼びする展開はゲームでも数回しかなかった気がするが……。
「そういう美月って、俺らのクラスの深森の姉妹だったりする?」
「美鈴の双子の姉だ。間違いないぞ」
「結構性格違うみたいだね」
「まぁ、それは仕方ないな……」
複雑そうな顔を見せる美月。
簡単な自己紹介を終えると美月は俺に向き合う。
「なぁ、秀頼。遥香からギフトに詳しいと話を聞いているがそれは確かなのか?」
「ま、まぁな」
「はい!」
三島がちょっと誇らしそうにしている。
「その……。美鈴に憑いている『ギフト享受の呪縛』は知っているか?」
「『ギフト享受の呪縛』?深森というと顔の呪いの紋章みてーなやつ?」
「ああ。タケルのいうそれだな」
「ボク、美月さんの妹さん見たことないからイメージ付かないんですよね……」
三島が苦笑いをしていた。
「俺は大体わかってる。『ギフト享受の呪縛』が身体に刻まれる条件も大体知ってる」
「そ、そうか!それでなんだが……」
「解除方法は知らない」
「…………知らない」
美月が三島を使って俺に用事がある理由は大体察した。
『ギフト享受の呪縛』の解除方法が知りたいし、それを調査していたんだ。
当然、『月と鈴』編におけるメインシナリオの核になるし、ヨル・ヒルも同じ魔術の被害者なのは知っている。
だけど、ギフト因子が完全に存在しない者の『ギフト享受の呪縛』の解除方法は原作には存在しない。
「多分、いくら探しても美月が欲しい答えは見付からない……」
「…………そ、そうか」
「ごめん……」
「い、いや!秀頼は全然悪くない……。気にしないでくれ」
最初こそ、美月は美鈴の呪いを解くことがメインのシナリオになる。
しかし、残念ながらその方法は見付からなかった。
タケルの『アンチギフト』でさえ、呪いは解けない……。
「だ、大丈夫ですよ!美月さん!もしかしたら『呪いを解ける』ギフトを持ってる人とか見付かるかもしれません!ボクも手伝うので気を落とさないでください!」
「ありがとう遥香。ごめんな秀頼、時間を取らせた」
「あ、あぁ……。別に気にしてねーよ」
どうにかならんもんかね……。
理知歩愛紗の件といい、未来を知っているのに対策ができないことが歯がゆい。
「美月!」
「……秀頼?」
「俺もどうにか探してみる。だから、頑張ろうぜ」
「あぁ、わたくしも元よりそのつもりだ」
美月が俺に笑って言葉を返す。
すると横にいた男も声を出す。
「理沙と秀頼の友達ってんなら俺も何かあったら手伝うよ」
「タケル……。2人共、ありがとう」
美月が俺とタケルに頭を下げて感謝の言葉を出して、本当に別れた。
それにしても、これマジで『月と鈴』ルート行ってないか?
タケルと美月で『ギフト享受の呪縛』解除するという流れに入ったなこれ……。
タケルが意識不明や死亡ルートになるわけだが、どうしてこうよりにもよってこのシナリオルートに入るんだよぉ……。
やっぱり美鈴をどうにかするしかないよな……。
俺が悪役を被るしかないか……。
「秀頼、お前ギフト詳しいの?」
「ん?まあな」
「本当かよ、聞いたことねーぞ」
タケルにはギフトの話題をあまり出したことが肯定しておいた。
乙葉にもギフトが詳しいことなど知られているからな。
みんなに対する俺の印象は揃えておく。
このまま教室に戻ろうとした時であった。
「コラぁ!咲夜!スマホ返して!」
「残念。秀頼ガードだ」
廊下を走ってきた咲夜が俺を盾にして、円と対面させる。
突然の展開に俺もタケルも目を丸くし、言葉を失っていた。
「いや、通じるか!スマホ返して!」
円の言葉で我に帰る。
すぐに状況を飲み込み、俺を盾にしている咲夜に声を掛ける。
「咲夜、返してやりな……」
「ん。冗談だ」
「まったく……」
いつもの咲夜と円のじゃれあいだ。
仲が良くて何よりだよ。
『呪いを解く』ギフト……。
咲夜……。
………………無理だよな……?
†
毎日閲覧ありがとうございます!
小説のフォロワーが1万人突破致しました!
次回、原作時系列による月編開幕!
いつもよりキツイシーンは少ない原作編です!
ギャルゲーチックなシナリオになります。
※当社比。
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